キム・ギドク監督の『The NET〜網に囚われた男』は深く心に刻まれた。
北の漁師がボートで漁に出るが、エンジンの故障で、南との境界を越えてしまう。
南では、息が絶える直前までスパイの嫌疑で責められる。ただ家族を愛しているだけの素朴な漁師は、家族に会いたい一念だけで帰還する。
英雄として出迎えられたのは、北の海岸でだけ。その後は保安部に連行され、南と同様の責め苦を受ける、そして...
この監督の作品は、人間と社会の内面に深く斬り込んでいく。個人が持つ疑心暗鬼という感情が、社会と国家を支配している様がはっきりと描かれている。それは同じ人間がつくる社会という意味で、北も南も同じであり。
ひとりの監督の作品を、くまなく観たいと思うのは、日本人では北野 武と沖田 修一。アジア人ではキム・ギドクである。