■炎のクリエイター日記

脂の乗った「鰯（いわし）」が、ちらほらと魚売り場に並んでいた。日本人家庭の食卓を潤し、漁獲高が半端ないため「魚粉」として畑の肥料や家畜の餌にもなり、各方面で利用された「鰯」は、かつて日本の総漁獲高の30％強を占めていたそうだ。ここ近年では水揚げ量が最盛期の３％まで落ち込んだ年もあったそうで、鰯を餌とする魚まで寄り付かなくなったのが全体的な不漁の原因だ。鰯を食いまくる張本人「鯨（くじら）」の保護で増え続けているのが元凶だろう。



美味しく揚がった「イワシのフライ」は、サクサクに揚げるコツとなれば、いつもご紹介しているように、パン粉をつける前の卵と粉を混ぜ合わせ、日本酒か酢を少々混ぜ込むとサックリサクサクに仕上がる。中身は脂ののったホクホク鰯の美味しさ。この日本人の楽しみも奪われようとしてる。



ご近所石山寺に祀られている源氏物語の作者「紫式部」の逸話をご紹介する。貴族である彼女は下賤な食べ物「鰯」を堂々と食べることが出来ないのだが、鰯を食べた時の美味しさが忘れられない。ある日、夫の留守中に隠れて食べたところ、残り香に気付いた夫が彼女を叱りつけたところ、すぐさま切り返しの和歌が紫式部から切り返された。

日の本に　はやらせ給う　いわしみず
　　　　　　 　　　　まいらぬ人は　あらじとぞ思ふ （紫式部）

※日本で流行っている石清水八幡宮に参らない人がいないように、鰯を食べない人などいないと思う。と、言う意味から宮中の隠語では、鰯のことを「むらさき」と呼ぶようになったという。岩清水（いわしみず）と鰯（いわし）をかけた短歌で、紫式部の博学なところが伺える。