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土山先生の新作を4連チャンで読ませて頂いた。最後は、荒野のグルメの3巻について、東森課長の年齢は、「野武士のグルメ」の年齢に到達するひと回り前の設定。(1巻を読み返すと48歳と書いてあった。)自らの送別会を想像するコマも有り、サラリーマン生活も〆に差し掛かってきたことを意識し始める。このシリーズから学べるのはダンディズムである。部下との接し方、組織での処世術、息の抜き方等、企業戦士としての模範的振る舞いが描かれている。

 
さて、当巻では、「流れ流れて流しの歌」のラストが衝撃的だった。部下とのカラオケに付き合い、予想外にノッてしまった東森は、休息を求めてオアシスへ向かう。店では、ベテラン流しの徳さんが引退の挨拶回りをしていると話題になっていた。終盤、よし野にも訪れた徳さんは、オリジナルの曲を披露してくれるが、女将が子供の入学式を思い出して泣く場面には、ついつられてしまった。ブシメシではないが、こういうシーンをドラマ化できれば、感動を呼べるのではないか。

 
流しとは少しテイストが違うのかもしれないが、ギター1本で自己を表現するアーティストは、時代時代で登場する。フォークソングの世代、ストリートミュージシャンの世代、彼らが追求するものは新しさ。(今やストリートドラマーまで現れた…)いくら懐かしいとは言っても売れるためには、現代性との融合は必須である。同じことがインディーズの世界にも言える。昨年末、ハイスタがCDを出した。ニュースを見た途端、「Close to me」や「Stop the time」「New life」その他にも数ある名曲が脳内で止まらなくなり、ショップへ急いだ。

 
ハイスタと聞くだけで心躍る奇跡の言葉。そこまで到達できればもはや歴史的である。市場を見ていると、インディーズのイズムは確実に継承され、土壌となっている。速くて、メロディックで、テクを使っていて、ドラマチックなモノづくりを目指す彼らは、何かに夢中になることの意味を教えてくれる。「俺はこのために生きているんだ!」という【輝き】が一瞬だとしても、そこで頑張らない理由はない。今までずっと、マンガの世界における“ハイスタ”を探していたのかもしれない。

<発行日>
 201721

<著者>
 久住昌之/土山しげる (敬称略)

<発行所>
 
日本文芸社