高齢者の「見守り」と「見張り」は違う!? | 廣田信子のブログ

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マンションコミュニティ研究会、MSC㈱代表廣田信子より
日々のマンション生活やお仕事に、また人生にちょっとプラスになるストーリーをお届けしています。
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こんにちは! 廣田信子です。

 

昨日、マンションコミュニティ研究会のフォーラムが

無事終了しました。

 

「マンションの高齢者の見守りは誰の仕事か」

という深いテーマに対し、

たいへん前向きの議論ができました。

 

講演・パネリストの

鎌野邦樹先生、丹直利氏、宮崎栄治氏に

深く感謝いたします。

 

広報開始時から関心が高く、参加申し込みの出足が早く、

途中で広報を控えたほどでしたが、

 

ほぼ定員まで受け付けたので、

手違いや申し込みなしでこられる方のことを思うと、

イスが足りるかなと…私たちはハラハラドキドキでしたが、

 

100人定員の会場は満席、

本当にすべてのイスがきれいに埋まった状態でした。

 

あいにくの雨で、

申し込んでも来られない方がけっこういたので、

ちょうどピッタリだったという

天のあまりの裁量に驚きました。

 

フォーラムを通して学んだこと、気付いたことは

順次お伝えしていきますね。

 

 

2025年、団塊の世代が75歳以上になり、

認知症患者は700万人を超えるとされ、

 

「2025年問題」として、

その予防対策と、地域で支えるしくみづくりが

急がれています。

 

マンションの場合、

同世代が同じ時期に入居し、

永住する人が多いため、

高齢化が一気に進むという特徴があります。

 

老々介護、独居の孤独死、認知症といった

高齢化に伴う課題への取り組みが不可欠になります。

 

 

高齢者対応の基本は「見守り」です。

 

まさに、その「見守り」が

今回のフォーラムのテーマだったのです。

 

でも、実は、

その「見守り」とは何かということが、

分かってないのです。

 

マンション管理業協会で

高齢化、認知症の対策という課題に

取り組んでこられた宮崎氏が、

そのへんをきちんと整理してくれました。

 

今、いろいろ考えられている

機会的なシステムで高齢者の異常を感知したり、

定期的に誰かが安否を確認するしくみは

実は「見守り」ではなく、「見張り」だと…。

 

活動がなくなったり、

連絡が取れなくなった高齢者を把握するというのは、

 

時には命を救うこともありますが、

その多くは亡くなった方を、

できるだけ早く発見するという役割です。

 

「見守り」とは、サポートが必要な状況を

早期発見し早期対応するため、

文字通り「見守る」ということが基本で、

 

そのポイントは、「期間」の長さと、

「接点の多さ」だといます。

 

自宅訪問、声掛けをしなくても、

その人の普段の行動との違いが把握できればよいのであって、

見守る人が多いほど効果的なのです。

 

コミュニティが築かれている地域だと、

継続的にその人の生活や様子に

周囲の人間が触れる機会が多いので、

 

「何か、このごろ様子がおかしい」ということに、

日常の中で周囲が気づくことができるのですが、

 

マンションでは、その機会が少ないので、

仕組みを調えないと見守りができない

という課題があるのです。

 

そして、

管理組合としての高齢者対応は、

「親族の把握」がポイントだといいます。

 

独居の高齢者が部屋で倒れる、

認知症を発症した高齢者が迷惑行為に及んだなど、

マンションで起こると、

待ったなしの対応が求められます。

 

一刻を争う場合もありますから、

親族が誰でどこに連絡をすればよいかを

普段から把握しておくことはとても重要です。

 

その緊急連絡先が、つねに機能する形で

更新されている管理組合は、

残念ながら少ないのです。

 

孤独死は、不審死扱いになり、

孤独死で事故物件となった住戸は相続放棄される確率が高く、

管理費等の滞納にも直結しますから、

個人の問題と放置できないのです。

 

管理組合、自治会で見守り組織の立上げ、

親族等の緊急連絡先の把握をすることが重要なのです。

 

 

では、

管理会社は、「高齢者支援に対する役割」を

どう認識しているか…です。

 

宮崎氏は、

独自の高齢者サービスを展開しようという

管理会社はまだ少ないといいます。

 

高齢者向けサービスは

「専有部サービス」の一環と考えられ

様々なメニューで展開を始めていますが、

 

あくまでも管理委託契約とは切り離した

「個別のサービス」という位置づけになっています。

 

「見守り」は「見守りサービス」を契約して費用を支払う

個人にのみ提供されるサービスということです。

 

それは、今回改正された標準管理委託契約書のコメントに

書かれている趣旨の通りです。

 

「マンション管理業者によって

専有部分を対象とする業務が想定されるが、

費用負担をめぐってトラブルにならないよう、

基本的に便益を受ける者が費用を負担することに留意した

契約方法とする必要がある。」

(標準管理委託契約書第3条関係③)

 

 

しかし、こういった個別契約による見守りではなく、

実際に現場では、管理員さんが、

やむにやまれず対応している現状があります。

 

で、管理会社によっては、

管理員に介護の有資格者、元看護士を採用する、

管理員には全員に認知症サポーターの講習を受けさせる等の

対応をしているところもあります。

 

で、管理員さんの中には、

専門職に匹敵するポテンシャルを持ち、

適切な対応ができる方もいます。

 

実際に介護の専門家も驚くぐらいの

スキルと使命感を持って高齢者に対応している管理員さんもいます。

 

しかし、

これらの対応は報酬の対象になりません。

もしも対応が適切でなかった場合のリスクもあります。

 

多くの管理会社は、

独居高齢者、認知症高齢者対応は管理会社の本来の業務ではないが

やむにやまれず、

あくまでも「契約外業務」として実施しているのが現状です。

 

ですから、管理員さんの個人的スキルに依存し、

会社としては禁止されていても現場の判断で実施していて、

現場は、会社の支援がなく疲弊しているのが実態です。

 

管理会社には、

常に住民をさりげなく継続的に見守っていて

個人的な事情も把握している管理員さんという存在があるのに、

今は、それをうまく活かす仕組みがないのです。

 

では、管理会社が「見守り」に一定の役割を

担うことができるようになるには

どんなハードルがあるかです。

 

宮崎さんは言います。

 

すぐにでも実施すべきことなのに、

課題があることは…

 

・管理委託契約との関係をどう整理するか?

・「見守り」の報酬は誰からいただくのか?

・「見守り」を業務とすることのリスクは?

 

そして、実は「見守る」だけではダメで、

親族や専門機関にどうつなぐかが重要なのですが、

それには、さらに課題があります。

 

・親族には誰がどうやってつなぐか?

・専門職には誰がどうやってつなぐか?

・全体のマネジメントはだれがするのか?

・この業務で報酬は得られるのか?

 

等々、クリアーすべき課題は大きいのですが、

それをどう乗り切るか…は、

高齢化が深刻な状況を迎える管理組合にとっても、

マンション管理業の未来にも重要なことなのです。

 

それはパネルディカッションのテーマの一つでした。

これについてはまた改めて書きます。

 

 

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