長尾景虎 上杉奇兵隊記「草莽崛起」<彼を知り己を知れば百戦して殆うからず>

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大河ドラマ「直虎」は“時代考証”泣かせ…担当の小和田哲男氏に裏話を聞いてみた!

2017年01月21日 02時07分30秒 | 日記





























大河ドラマ「直虎」は“時代考証”泣かせ…担当の小和田哲男氏に裏話を聞いてみた!





 1月8日にスタートしたNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」は、時代考証の担当者泣かせであるらしい。理由は、女優の柴咲コウ演じる井伊直虎に関する史料が少ないから。直虎は戦国時代に遠江国(静岡県西部)井伊谷(いいのや)の領主だったが、本人に関する史料は8点しか残っていない。同時代を扱った大河ドラマの時代考証で知られ、「直虎」も担当する静岡大名誉教授の小和田哲男氏に苦心のほどを聞いてみた。

 大河ドラマの時代考証とは、どんなタイミングで、何をチェックするのか? 当然、脚本家は担当者の著書などを含め、さまざまな文献を読み込んでシナリオを書く。小和田氏によると、上がってきたシナリオを読み、セリフやト書きに誤りがないかや、描かれている状況に史実との矛盾がないかなどを検証するのが主な役割だという。

 例えば「直虎」の初回では当初、井伊家重臣・井伊直満のセリフで武田氏に関するくだりがあった。小和田氏が「この時期に武田軍はまだ、井伊家の領地がある遠江国には侵攻していない」と指摘したところ、「武田氏」は「北条氏」に改められた。

 史料が少なく、小和田氏が判断に苦しむケースも少なくないため、「直虎」では戦国史研究者の大石泰史氏との二人体制で時代考証に当たっている。

「今回は(担当者が)1人では心配だった。大石先生は今川氏の研究業績がある同じ分野の後輩。別々にシナリオを読んで疑問を出し合う。一つのシーンでいろんな考え方ができることも少なくない」と小和田氏。すっと読める回もあれば、疑問点が次々と現れ、2人で論議を重ねる回もある。小和田氏は、大河ドラマを制作するうえで史料が少ない点について「マイナス要因ばかりではない」と強調する。史料だけでなく、原作もない「直虎」は脚本家の腕の見せどころが随所にあり、登場人物や事象に対する脚本家の解釈に感心させられることが多いそうだ。

 直虎の生涯でポイントとなるのは婚約者だった亀之丞(井伊直親)が行方不明になった際になぜ出家したか、さらには亀之丞が戻ってきたタイミングで還俗し、結婚できる可能性もあったのに、なぜしなかったかという点である。ドラマでも二つの決断を巡る描写がストーリーのヤマ場となろう。小和田氏はこれらが描かれた回をすでに読み終えている。

「大きな決断を下した直虎の心境について書かれた史料はないが、脚本家の森下佳子氏は主人公の心の葛藤を視聴者が納得できるように書いている」(小和田氏)


井伊直虎を演じる柴咲コウ(c)朝日新聞社© dot. 井伊直虎を演じる柴咲コウ(c)朝日新聞社
 地方の「おんな城主」を主人公に選んだ時点で、史料が少ないことは覚悟せざるを得なかった。著名な武将でなく、男性でもない視点を大河ドラマに求めたということであり、新しい目線で戦国時代を見る点で「直虎」を主人公に据えたことは価値がある。

 ところで、史料がたくさんあれば時代考証担当者は楽なのか? そうとも言えないらしい。小和田氏が過去に手掛けた作品について振り返っていただいた。

「確かに、史料が多い登場人物は楽だ。しかし、原作があると、誤りを指摘してもストーリーに影響がある場合は大きく変えにくい。『天地人』(2009年)では原作者の火坂雅志氏と意見交換しながらシナリオの修正を進めた」(小和田氏)

 史料が多い人物は何度も大河ドラマに登場し、さまざまな人物像が表現されている。徳川家康などがそう。史料が多ければ、イメージする人物像に合わせて、いいエピソード、悪いエピソードを集め、ドラマに生かすことができる。石田三成なども過去の作品では義理堅い人物にも、悪人としても描かれている。

「最も大変なのは、原作者がすでに死去している場合。『功名が辻』(06年)は原作者の司馬遼太郎氏が亡くなっていたため、変更はなかなか認められなかった。史料が豊富で、原作がない場合は最もやりやすい。『軍師官兵衛』(14年)は理想的だった」(小和田氏)

 かつて大河ドラマの多くは時代小説を原作としていたが、「龍馬伝」(10年)以降は原作者のいないオリジナル作品が続いている。小和田氏の話を聞き、「原作者、脚本家、時代考証担当者の意見がかみ合わず、混乱することを避け、原作のない題材を選んでいるのではないか?」と推測するが、どうだろう。ちなみに18年の大河ドラマは久々に原作がある「西郷(せご)どん」に決定している。原作者の林真理子氏と脚本家の中園ミホ氏とは共著もあり、旧知の仲なので心配はなさそうだ。

 ドラマを面白くしようとアイデアを絞り出す脚本家に敬意を表しながらも、史実に沿っているかどうかを見定めてきた小和田氏。時代考証という役割に使命感を持っているため、その目はおのずと厳しくなる。「大河ドラマを見て日本史が好きになったという方は少なくない。テレビの影響力は大きく、小中学生も多く見ている。明らかな嘘を放送してもらっては困る」との思いがある。

 長年にわたって大河ドラマに携わってきた小和田氏に、「今後、最も大河で描いてほしいと思う人物は?」と聞いてみた。「北条五代(早雲、氏綱、氏康、氏政、氏直)」とのこと。下剋上で戦国時代の幕開けを告げた北条早雲に始まる5人の生きざまに興味が尽きないらしい。「ちょっと地味かな?」と思わなくもないが、小和田氏のイチオシならば、見てみたい気がする。(ライター・若林朋子)
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