デゴイチ

 久しぶりに近所の模型屋に行った。デゴイチを買うために。

 実は、七月はじめの水害で、模型屋さんは大変な損害を受けた(ひざ上くらいまで水に浸かったという)。店舗、住居、両方である。

 先月、模型屋さんが一家総出で店の片付けをしているところに遭遇し、思わず少しだけ手伝いしたけれどかえって気を使わせただけだった。そのとき、表面では元気そうに振舞っているけれど、実は大変にショックを受けているのが(当然のことながら)感じられた。

 そろそろ心も落ち着いてきたかな、と思い、聞いてみたかった質問を投げかけてみた。
 「例の(七月の九州北部豪雨で)小野のほうで亡くなった消防団員の人、ミニ四駆やってたというけれど、もしかして知ってる人?」
 すると模型屋さん、大きくうなづいて「もちろん知ってるよ、そこに写真あるよ。本当にいい奴だったんですよね・・・」「そうですか、やっぱりそうか・・・なぜかいい奴が早く死んでしまうんだよね、どうしてだか」「・・・・・」

 写真は、去年の熊本地震のあと、阿蘇の子供たちを元気づけようとミニ四駆を持っていって遊ばせたときのものだった。最期まで人のために捧げた命。

 ああーいかん、あんまりこの話してると模型屋さんが泣いちゃうといけないので(やたらと涙もろい)、話をかえる。「上の棚のD51を取ってください」「ええーっ、きららさん、これ作るの!? へぇ~ほぉ~きららさんがねぇデゴイチねぇ、そうですかそうですか、ぜひ作って見せてください」
 私が蒸気機関車作るってそんなに不思議か!? ・・・・・うーん、不思議かもしれんね。でもずっと以前から作ってみたかったんだよ。

ワイン1 今夜は飲まないつもりだったけど、小さなグラスに二杯だけ飲むことにした。一杯目は、人のため死んでいった消防団員に。そして二杯目は豆田の模型屋のために。