加賀乙彦『トルストイと私』 | 赤の広場でつかまえて

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ロシア留学から帰国。楽しくてちょっぴり切ない?ロシアと私の物語。

3月11日 @昭和女子大学

 

『宣告』(日本文学大賞)、

『湿原』(大仏次郎賞)などで知られる

作家・加賀乙彦センセイが語るトルストイ論です。

 

中学生で終戦を迎えた加賀センセイ。

翌年(昭和21年)末に授業が再開されるまで

自宅にこもって父の蔵書を読むうち

『トルストイ全集』を読破したそうです。

 

短編『コザック』『少年時代』『幼年時代』から

『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』の長編へ。

『コザック』は戦闘シーンなどが

「すごいおもしろかった」そうです。

 

『戦争と平和』。

加賀センセイいわく、

「ロストフ家のナターシャを追っていくと

この小説全体がわかる」そうです。

「(トルストイが)一番描きたかったのは、

ナターシャという不思議な女性の一生だったんでしょうね。

この小説に一貫して出てくるのはナターシャだけです」と。

この小説、センセイは35歳の時

10回目を読み終えたそうです。

 

続いて『アンナ・カレーニナ』。

トルストイは小説家の鑑。無駄な登場人物は一人もいない。

だらだらと書いているような人物、出来事の描写が

読み進むうちに実がなり大木になり、重要な意味をもってくる。

長い小説ほどそういう仕掛けがないと読めないんですよ

トルストイの素晴らしさは、

物語の構成だけでなく登場人物ごとに文体がある。

子どもの文体、母親の文体、年寄りと。

私も小説を書くときにまねしてます

 

そして、センセイは

世界各地に行きましたが、一番印象に残るのはロシア。

地平線まで森が広がる、あの風景ですね。

森があるからトルストイの小説が成り立つといってもいい

と言い、トルストイの自宅や墓地のある、

ヤースナヤ・ポリャーナ を訪れるべきだと言います。

 

いやいや。

モスクワからヤースナヤ・ポリャーナ行きって

けっこう大変なんですけど。

 

とはいえ、かく言う私も

センセイの小説も『戦争と平和』も

読んだことはありません。

(『戦争と平和』は海外ドラマで見ただけ)

 

原稿用紙約6000枚。

フツウの人で1か月、

大江健三郎氏は

「私なら2週間で読める」と

豪語したという大作。

一度読んでみましょうね。