感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

直接クームスで抗IgG陰性の温式自己免疫性溶血性貧血

2017-01-26 | 免疫

前回の続きです。寒冷凝集素の検査結果は4倍(正常256倍未満)と増加なく寒冷凝集素症はなさそうで、Donath-Landsteinerテストも院内で行いましたが結果は陰性で発作性寒冷血色素尿症も考えにくいようです。症例は直接クームステスト(DAT)では抗C3およびポリ特異的試薬で陽性、抗IgGで陰性でしたが、温式AIHAといえるのでしょうか。

自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(H26年度改訂版)では、温式AIHAは、直接 Coombs 試験で IgG のみ,または IgG と補体成分が検出されるのが原則であるが,抗補体または広スペクトル抗血清でのみ陽性のこともある.診断は 2)寒冷凝集素症,3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症の除外によってもよい.とされているので、この例も温式AIHAとして良いようです。抗IgGで陰性となる温式AIHAについてまとめてみました。

※自治医科大学 地域医療学センターでは、Coombs陰性AIHAの診断のための赤血球結合IgG定量を行っておられます。今回こちらにも検査をお願いしようと思っています。

 

まとめ 

・2002年にGehrsらによって定義されているように、温式自己抗体は低温でよりも37℃でより強く反応し、一般にポリクローナルである。

・温式AIHA(wAIHA)は赤血球への結合において37℃で最適に反応するIgG抗体によって引き起こされ、 主に脾臓に存在するFcおよびC3b受容体を発現する細網内皮細胞による食作用をもたらす

・wAIHA で直接抗グロブリン試験(DAT)陽性例の中では、20~66%まででIgGのみが赤血球表面上で検出され 、24~63%は表面上のIgGとC3の両方を持っており、7~14%は表面上C3だけのを持っている。 [Semin Hematol. 1992 Jan;29(1):3-12.]

・IgG自己抗体の大部分は、IgG1サブクラスである: IgG3が、次の最も一般的

・DAT陽性がAIHAの特徴と考えられるが、 AIHA患者において陰性DATの発生率は、それぞれ2%~4%の間であると報告されている。 

・Issittらの陰性DATへの説明は、in vivoでの破壊促進に必要なIgG分子/赤血球の数が、陽性DATを得るのに必要な数よりも時々低いこと。  (RBC当たりの自己抗体固定が150未満)

・また陰性DATを有するがAIHAに典型的な臨床的および血液学的特徴を有する患者の一部では、IgA自己抗体または単量体IgMが関与し得る。   抗IgG及び抗-C3免疫グロブリンのみを用いてのDATでは陰性となる。 酵素結合抗グロブリン試験(ELAT)は赤血球上のこれらの非常に少量を検出することができる。

・最近では、フローサイトメトリー はRBCに結合したIgの検出のための感受性の増加を示している

・場合によっては、より低親和性の抗体がAIHAの原因に関与している場合があり、これらの抗体は繰り返し洗浄でRBC表面から容易に解離する可能性がある。 これに対するに、氷冷生理食塩水で好ましくは冷蔵遠心分離機中での赤血球洗浄が役立つかもしれない。

 

・温式AIHAは病態生理学的に関連する根底病態の有無によりサブクラス化される。

・原発性または特発性温式AIHAという用語は、認識可能な基礎または関連する状態が存在しない場合に適用される。

・平均して、 wAIHAsの50%は二次的であり そのため最小限のワークアップは、基礎疾患または状態を検索するために、すべての患者においてHA診断の時点で実行されなければならない

・二次性wAIHAは感染性単核球症、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性肝炎、ヒト免疫不全ウイルス、および他のリンパ球増殖性または自己免疫疾患を含む種々の病態に関連している。

・SLE以外でも例えば、抗リン脂質抗体症候群、シェーグレン症候群、および関節リウマチ(RA)などの他の自己免疫疾患もwAIHA引き起こしている

・慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫およびWaldenstormマクログロブリン血症などのリンパ球増殖性障害は、二次性症例の主な原因である。

・実際には、CLL患者の約11%が二次性wAIHAを開発し、非ホジキンおよびホジキンリンパ腫を有する患者において2〜3%の年間発生率が観察されている。

 

・温式AIHAの治療は、一般に溶血の重症度に依存するが、葉酸補充は全員に推奨される。

・貧血まで至っていない例では経過観察できるが、貧血を発症している場合はグルココルチコイドが第一選択薬となる。

 

 

 


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