感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

成人スティル病について まとめ – その2

2015-10-01 | 免疫

前回に続きまして、成人スティル病に関しましてです。

臨床検査は非特異的で、高い免疫学的活性を反映して白血球および好中球増加、高フェリチン血症などを起こす。診断は臨床的であり診断基準を参考にし、感染性、腫瘍性、および他の自己免疫疾患の除外が必要。いくつかの診断基準が発表されていますが、山口らの基準が感度が良いようです。あと血清フェリチン値は参考になるが特異性に乏しい、グリコシル化フェリチンは有望だが検査は一般にはできない。

 

まとめ

 

検査データ

 

・白血球および好中球増加はcommonで(98%)、慢性疾患に伴う貧血が見られ(69%)、疾患が治まった後にそれは可逆的

・好中球増加(>80%多形核細胞)は症例の約80%に見られFUO発熱からAOSDを鑑別するのを助ける[Clin Exp Rheumatol. 2014 Jan-Feb;32(1):28-33. ]

・汎血球減少症は、血球貪食症候群を警戒すべきであり迅速な免疫抑制療法を必要とする

・肝酵素は患者の約62%にて上昇、胆汁うっ滞性肝酵素は患者の約40%にて上昇

・フェリチンレベルはAOSDの99%に上昇することが見出されている

・患者の51%で1000-1500 ng/mlでの血清フェリチンレベルを有する、及び患者の32%で1500 ng/mlを超える血清フェリチンレベルを有する [Clin Rheumatol. 2010 Sep;29(9):1015-9.]

・何人かの著者は、AOSD、RHL、劇症抗リン脂質症候群および敗血症性ショックのような病態はフェリチンの炎症誘発性の役割を強調するために「高フェリチン血症hyperferritinemic症候群」と呼ぶ。非常に高い血清フェリチンレベルはサイトカインストームの発展に寄与し得ることを示唆。

・血清フェリチンレベルは疾患活動性と相関し、しばしば疾患の寛解にともなって正常化する[J Rheumatol 1996; 23: pp. 201-202]

・いくつかの研究では慢性への進行予測としてフェリチンを示唆 [J Rheumatol. 2009 Jan;36(1):156-62.]

・抗核抗体(ANA)およびリウマチ因子(RF)はほとんどが陰性 (それぞれ100%、95%で陰性)

・AOSDに関わる組織の生検の所見は特異的ではない。病理組織検査は他の鑑別疾患除外のために行われる。

・実行される最も一般的な皮膚生検では、リンパ球と組織球と真皮表面の血管周囲の炎症を示す

・原因不明発熱診断の場合、18 FDG-PET-CTは、感染、固形腫瘍、または大血管血管炎を拒否することによってAOSDの診断をサポートすることができる

 

診断

 

・AOSDの診断は臨床的で、決定的な診断テストが存在せず、多くの場合、潜在的な類似疾患mimickersの困難な鑑別除外を要し、それは、感染症、悪性新生物、自己免疫性、および他の自己炎症性疾患である。

鑑別疾患

ウイルス感染:HIV、ヘルペスウイルス科、麻疹、風疹、ウイルス性肝炎、パルボウイルスB19

細菌感染:感染性心内膜炎、ボレリア症、ブルセラ症、エルシニア、マイコプラズマ肺炎、梅毒、トキソプラズマ症

新生物:悪性リンパ腫、マルチセントリックキャッスルマン病、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫

薬物反応:好酸球増加と全身症状を伴う薬物反応

自己免疫疾患:全身性ループスエリテマトーデス、特発性炎症性筋炎、関節リウマチ、全身性血管炎

自己炎症疾患:家族性地中海熱、メバロン酸キナーゼ欠損症、TNF受容体関連周期熱症候群、反応性関節炎

その他:サルコイドーシス、好中球性皮膚症、菊池藤本病

 

・いくつかの診断基準は、AOSDの診断のために提案されている。

・本質的にこれらはすべてが遡及的データに基づいており、どれもが「ゴールドスタンダード」対照群と比較検証していない、これは報告の感度と特異性に関する問題を提起する

山口らの基準はメジャーとマイナーの基準で構成。2つ以上の主要な基準を含む5つ以上の基準を必要とし、96.2%の感度および92.1%の特異性をもたらした [J Rheumatol. 1992 Mar;19(3):424-30.]

主要基準: •発熱>39℃、断続的に、1週間以上  •関節痛≥2週間 •特徴的な発疹 •WBC>万/μL(>80%の顆粒)
副基準:  •喉の痛み •リンパ節腫脹および/または脾腫 •異常なLFT •ANA/ RF陰性
除外基準: •感染 •悪性腫瘍 •リウマチ性疾患

・Massonらの研究で 1996年からAOSDにおける基準の6種類を比較した。山口基準が最もsensitiveであり(93.5%)、Cush's (80.6%) とCalabro's (80.6%)が続いた [J Rheumatol. 1996 Mar;23(3):495-7.]

・中国人にて診断基準の4セットを比較した最近の研究では山口セットが最も高い感度(78.57%)と87.14%より高い精度accuracy を持っていた [J Rheumatol. 2011 Apr;38(4):741-6.]

・しかし山口基準の感度は、 除外すべきである臨床状態の多さによって妨げられている。

 

・診断ツールとして高フェリチン血症の有効性は山口らの研究で82%の感度および46%の特異性 [J Rheumatol. 1992 Mar;19(3):424-30.]

・しかし高フェリチン血症の同様のレベルが、 感染症(敗血症、HIV)、腫瘍性疾患(白血病、リンパ腫)、または肝疾患(ヘモクロマトーシス、ゴーシェ病)、他疾患からの血球貪食症候群、などで見出すことができるため、AOSDのための特異性は乏しいままである(41〜46%)

グリコシル化フェリチン(GF)は、フェリチンよりも特異的な診断マーカー

・49人の患者による1つのretrospective研究では、血清フェリチンで5倍増加(すなわち1000μg/ L)が、 AOSD診断において 80%の感度および41%の特異性であった。 AOSDではフェリチンのグリコシル化はJ Rheumatol. 2001 Feb;28(2):322-9.]

・GFレベルJ Rheumatol. 2001 Feb;28(2):322-9.]

・しかし低GFレベルはまた、AOSD以外の原因のRHLに遭遇する可能性がある [Arthritis Rheum. 2008 May;58(5):1521-7. ]

・GF ≤20%を含むFautrelの診断基準では、80.6%の感度及び98.5%の特異度であった。 [Medicine (Baltimore). 2002 May;81(3):194-200.]

 主要基準:スパイク熱≧39℃、関節痛、一過性紅斑Transient erythema、咽頭炎、多核球≧80%、GF ≤20%

 副基準:斑丘疹Maculopapular rash、白血球増加≧10000

 主要基準を4つ以上、 または主要基準3つ+ 副基準2つ

・しかしグリコシル化フェリチンの測定を必要とするFautrelのセットは、多くの医療施設では利用できない。

 

 

次回に続く

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。