彼がこのピンチにブルノ駅を選んだのは鉄道の重要拠点だと知っていたからである。ブルノに着いたのは夜の10時半だった。
ここから乗れるはずの『ショパン号』は、寝台列車主力の国際列車で、少数の一般席も座席指定・予約制であり、彼は駅の窓口で、すでに満席だと告げられた。彼はあきらめずに、途中からのぶんでもいいから探してくれと頼み込み、ブルノより先のチェコ・オーストリア国境のヴジェツラフからウイーンまでの予約を手に入れた。ただし、ここ、ブルノからヴジェツラフまでが無資格乗車になる。通常なら乗車できない。しかし、彼は過去の東ヨーロッパでの経験から、指定券なしで全席指定列車に乗り込んでくる人を幾度も見ていて、キセル状況でも降ろされることはあるまい、と強行突破の方針を固めた。

ブルノの教会↑。彼はこの夜景を見た。
ところが、状況はゆっくりとはさせてくれない。夜が更けて駅は閉鎖され、待合室を出なければならなくなった。彼は夜の11時ごろから夜のブルノの町にさまよい出た。そして、ライトアップされた荘厳な教会を見て気分を立て直した。

ここでショパンの曲をどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=VF0YdwIUWTE


途中にケバブ屋(羊肉の串焼屋)があった。このケバブ屋はアラブ人ではなくベトナム人がやっていた。ベトナムなら過去に訪れているので気楽だ。亭主がハロン湾沿いの町の出身だった。その町にも行ったことがあった。話は弾み、アメリカの侵略に勝ったベトナムと持ち上げたこともあって、亭主は、酒が飲めない彼にビールを、さあ飲んでくれと差し出して歓待してくれた。
夜の2時半過ぎに『ショパン号』に乗り込んだ。そして、車掌がブルノからヴジェツラフまでの乗車券・指定券を発行してくれた。バンザイ!「いい夢を」と言った車掌の声を背にバタンキューと眠りに落ちた。・・そしてウイーンに着いた。
彼はその最後の切符も載せてくれている。発行は夜中の2時56分であった。

<近日中の運勢>
流れに従うのがよい。

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