井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

完成品に手を加える

2015-10-04 09:36:48 | アート・文化
その昔、能の「井筒」にヴァイオリン演奏を加える、という試みをしたことがある。1999年の秋だった。

最初は、いわゆる現代音楽風に、無調の即興的な音をぶつけて、能の舞と拮抗させるようにしていた。

気迫の部分で、一応バランスが取れているから、その時はそれでOKだった。が、これ、面白いだろうか?

珍しさで何人かは面白がってくれたが、肝心の自分がさっぱり面白くない。

悩んだあげく、井筒の主人公の少女をイメージするわらべ歌風の旋律を入れてみた。

これは能楽師にはインパクトを与えたようで、他の舞台で「井筒」を演じても、そのヴァイオリンの旋律が頭で鳴ってしまう、と聞かされた。

自分たちの公演は結局それで行い、観客の反応もまずまずだった。

が、私としては全く納得がいかなかった。
ヴァイオリンが演奏される箇所は能楽師側から指定されたのだが、ほとんどが交互に演奏しているだけで、一緒に演奏しているのはほんの少しだけ。

その少しの部分が、全く水と油だった。

それはそうだ。もともと能として完成しているのだから、ヴァイオリンは余計なものにしか感じなくて当然である。

能と一緒にやるのであれば、オリジナルで一から作らないとダメだ、というのが、その時の教訓だった。

それから16年経って、また似たようなことをしているのをテレビで観てしまった。

新司会者による題名のない音楽会、俗称「題名」または「題なし」。

バッハのシャコンヌに尺八と三味線と能舞を加えていた。

シャコンヌと言えば、その「井筒」の前に能舞台で私も演奏した曲。皮肉な巡り合わせを感じた。

テレビ番組としては、実験成功とせざるを得ないし、それはやむを得ない。

しかし、やはり完成品に手を加えて良い結果は出ないな、というのが正直なところだ。

その昔、美空ひばりや八代亜紀にオペラを歌わせたり、円鏡の落語を聞いてオケが演奏できるか、などという破天荒な実験をやった歴史を持つ名番組。

よりオリジナリティの強い大胆な試みを期待するものである。

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