五輪で禁止薬物の衝撃=教育や啓発に限界も〔五輪〕

2/13(火) 13:17配信 時事通信社

 

メダルラッシュに沸いた日本選手団が、一夜明けて衝撃に包まれた。五輪というスポーツ最高峰の大会で、ショートトラック選手の薬物陽性反応が明るみに出た。暫定的な資格停止を受け入れた斎藤慧は選手村を離脱。世界の中でいち早く、ドーピングで平昌を去る選手となった。
 本人は書面で「偶発的に起きた出来事により、禁止薬物が無自覚のまま口に入ってしまったとしか考えられない」と意図的な摂取を否定した。しかし日本選手団の斎藤泰雄団長は「反証する証拠が入手できない状況」と述べ、苦しい弁明であることを認める。
 日本選手の薬物違反は昨年だけで競泳、自転車、レスリングなどで頻発した。年が明けると、カヌー選手がライバル選手の飲料に禁止薬物を混入した前代未聞の不祥事も発覚。2年後の東京五輪を控え、スポーツ庁が競技団体に注意喚起したばかりだった。「東京」を見据えた強化の過程で、禁止薬物に手を染めるといった悪い印象が拭えない。「日本のスポーツ選手はクリーン」というイメージは、もはや過去の物となった感がある。
 ショートトラックの川崎努監督は斎藤を「若くして頭角を現し、ドーピングに関しても意識は高かった」とかばった。日本の反ドーピング活動は教育や啓発を重視してきたが、検査以外などで違反者の情報を入手する「インテリジェンス」の分野では欧米に比べ遅れているとの指摘がある。五輪開催を控えて国が反ドーピング法の整備を進め、スポーツ界の外を巻き込んだ改革は加速する流れになりつつある。
 組織的なドーピング問題があったロシアは、平昌五輪に選手団の派遣を禁じられ、個人資格での出場のみ認められた。日本にとっては対岸の火事ではなくなっている。