河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2433- イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノ・リサイタル、2017.10.20

2017-10-20 23:31:44 | リサイタル

2017年10月20日(金) 7:00-9:35pm サントリー

クレメンティ ソナチネ ヘ長調op.36-4  4-2-2
ハイドン ピアノ・ソナタ ニ長調Hob.XVI:37  7-3-4
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調op.57 熱情  11-7-9
Int
ショパン バラード第3番変イ長調op.47  10
リスト 超絶技巧練習曲集から
           第10番ヘ短調  6
           第8番ハ短調 狩り  4
           第5番変ロ長調 鬼火  5
ラヴェル ラ・ヴァルス  20
(encore)
ラフマニノフ 楽興の時より第5番  6
ショパン ノクターン ホ長調 op.62-2  8

ハッピーバースデー 聴衆コーラス

ピアノ、イーヴォ・ポゴレリッチ



ポゴレリッチを聴いたのは記憶が定かでなくて以前1回あったかどうか。たぶん今日が2回目だと思う。ベトソナがプログラムにあったので、それで聴きに行こうと思い随分前にチケットを確保した。ベトソナ一覧はこちら

プログラム前半は明るくて軽め。済んだスコアはピアノの左横にバサッと置き、そこから次のスコアを取り出しザックリと弾き出すといったモーション。フメクラーさんはポゴレリッチにかなり近くに座ってますね。
前半サラっと聴くとエモーショナルなものは求めていない弾きだなあといった感じなんだが、最初のクレメンティからじっと見て聴いていると、強い弾きと弱い弾き(フォルテとピアノ)の両腕の上下運動が同じように見える。同じような押しで強弱が出ているように見えて不思議だなあと。案の定、あのような弾きだと熱情は激烈さとは別方向なんだろうと思う間もなく別方向。アタックが強くなくてこれまで聴いてきた同作品とはかなり印象が違った。強弱は出るのだが角が取れている。ゆっくりとした演奏で味わい深かった。
タッチの強弱を見せず、主旋律の殊更の強調が無いし、音の流れの切り替えも強調しない。陰影が有り、音色色あいは変化していく。これら諸々、聴いていると自然でシンプルな世界ですね。
ハイドンの延長のような響きから始まりベートーヴェンの静謐な世界を垣間見れた。そのハイドンは2楽章が3拍子の短調と思うが、なぜか葬送行進曲のような趣きがあった。
ポゴレリッチはステージの明かりを少々落として弾いているようでその色合いとプログラム前半の明るさの差が印象的でもありました。
改修後のこのホールで9月1日から演奏会やピアノを色々聴いてます。以前あったピアノのふやけたような音、それとガラスが壊れるような響き、これらが混ざったような音響だったのが、改修後は芯が出来て締まったように感じる。以前よりは随分と聴きやすくなった。
まぁ、ここまで3曲で割と納得してしまった。それに、高僧みたいな雰囲気ですな。
3曲、拍手させずのほぼ連続演奏。

後半の1曲目、ショパンの曲はバラードテンポより平面の広がりを感じさせてくれる。ポツポツとした響きが印象的。それとここらあたりから、押しの一定化に加え、指の塊がなんだかピアノのハンマーに見えてきた。内在する劇的な音が頭に少しずつ響いてくるような妄想か。ゆっくりと長い。
リストの3曲では、ハンマーで弦を直接叩いているのではないかという妄想の深化。
ここまで例の譜面バサッと置き拾いで前半同様、拍手させずほぼ連続演奏。

最後の3曲目ラ・ヴァルス、名状し難い演奏。激烈さと不思議に伸ばされた音価。普段、オーケストラ編成で聴く機会が多くて馴染みのある曲ながら、同じような具合にフシを追っていくのが困難なところが多く有った。
同じピアノ版の演奏を6月にヒンターフーバーの破壊的な演奏で聴いた。その時は11分。今日のポゴレリッチは20分ジャストの演奏。ほぼ倍。人により違いは出るものだとは言うけれどもこれだけ違うと、全く別の曲、知らない曲を聴いているようなところが何か所かあっても不思議ではない。自分がどこを向いているのかわからなくなるところが何度かあって、びっくり。平衡感覚か崩れた。
これが何かといえば、ポゴレリッチの感性なのだろうか。今日、強弱、アタック、流れ、ハンマー、色々なものが頭に浮かんできたがそれらを凝らして見ると、ラ・ヴァルスの弾きに作為は全くなくて彼の感性の集大成のスーパー・パフォーマンスと。それはしかし、彼が通ってきたもののようでもある。二面性は無いと思う。
これで思い出すのはムラヴィンスキーの演奏です。逆説的な強弱、引き伸ばし、怒髪天を衝くプレイ、全てゼロから自らの感性で作り上げてあげてきた演奏はユニークなものだが、作為は無くものすごい説得力となる。ムラヴィンスキーの恐るべき演奏はこれで垣間見ることが出来る。
1251- シベリウス交響曲第7番 演奏は曲を超えた。異形の絶演!ムラヴィンスキー&レニングラード・フィル


ラ・ヴァルスのあと、味わいが深い聴きごたえ十分のアンコール2曲をたっぷりと。申し分ない秋の夜長だ。いい演奏。

そして、ポゴレリッチの誕生日。ケーキとお花、それに聴衆によるハッピーバースデーコーラスのプレゼント。笑顔で崩れたポゴレリッチの顔が印象的。
今日は色々と考えることが多かったです。
素晴らしいリサイタル、ありがとうございました。
おわり




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