河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2561- メンデルスゾーン、スコティッシュ、コリリアーノ、ボブ・ディラン、ミスター・タンブリンマン、日本初演、下野、都響、2018.5.22

2018-05-22 23:14:52 | コンサート

2018年5月22日(火) 7:00pm サントリー

メンデルスゾーン 交響曲第3番イ短調Op.56スコティッシュ 15-4-10-10

Int

コリリアーノ ミスター・タンブリンマン
 - ボブ・ディランの7つの詩(2003) 日本初演 5+8+4+3+6+8+5
 ソプラノ、ヒラ・プリットマン (歌はアンプリファイドされる)

下野竜也 指揮 東京都交響楽団


後半に日本初演ものが控えているとはいえ、このスコティッシュは実に素晴らしく研ぎ澄まされた美演。
テンポをそれほど速めることなく、鋭いカミソリシュートの切れ味をスパスパ出していく、パースペクティヴが深くて弾力に富んだ演奏でスピーディーさを感じさせてくれる。遠心力のようなものが働いているかのような演奏。グワングワンきますね。スタイリッシュな飛ばしのように聴こえてくる不思議。スコティッシュにフレッシュなものが帰ってきた。作品再認識の棒は大きいですね。
圧倒的なメタリックカラーの弦の厚み。ウィンドセクションのアンサンブルの歌。ブラスは要らない。そんな感じ。
泣き節のドツボにはまらず、かといって軽く切り上げていくわけでもない。ひとつずつじっくり進んで行く充実サウンドの妙。いい演奏でした。

コリリアーノのスペシャリスト下野が振るミスター・タンブリンマンの日本初演。歌はオーソリティのソプラノ、ヒラ・プリットマン。万全な布陣。
プログラム冊子に対訳が載っているとはいえ、ディランの長い詩に字幕が無いのは、画竜点睛を欠くとまではいかないが、万難を排して、やるときは完膚なきまで盛り上げる的な、まぁ、古い考え方かもしれんが、そういったこともあってもいいかなと思いました。欲を言いだすときりが有りませんが。

前奏曲、ミスター・タンブリンマン
物干し
風に吹かれて
戦争の親玉
見張塔からずっと
自由の鐘
後奏曲、いつまでも若く

シルヴィア・マクネアーがコリリアーノに連作歌曲の依頼をした時の唯一の希望は、アメリカのテクストを使ってほしいという事。ディランの詩に共感、インスパイア。それを使うことにしたが、先入観のようなものが入り込まないようにするためか、ディランの曲のフシ、メロディーは封印。というか、それまで彼の曲を聴いたことがなかったコリリアーノは、自作が出来上がるまで、それまで通り聴かずのままで、作曲を行った。
従って、作品はいわゆるクラシカルなカテゴリーにはいるもので、コリリアーノがこれまで進めてきたものと変わるところは無い。
ピアノ付きソプラノのものを完成後、オーケストレーション。オペラティックな唱法回避のため、アンプリファイドでの歌唱を指定。(声がオケで消えないようスピーカーを配置。右・左・奥)

今日登場のプリットマンは2003年のオーケストラ版世界初演のソプラノ。切れ目なしの約40分の歌。譜面無用の絶唱。切れ目は無いがピース毎に、歌う位置を変えたりあちら向きになったりする。詩は大変に長くて対訳がついているとはいえこのヴォリュームだと演奏中に詩を目で追うのは困難。字幕が必須でしたね。これだけが残念。声は増幅されているので明瞭に聴こえてくるけれども、意味とか繋がりとかそういったものはなかなか理解しやすいというわけではなくて、事前勉強していても難しい。
ポストリュードのforever youngは執拗に頭韻を踏む。オーケストラの音はほぼ無くなり、語りのような歌になる。場を静謐にするプリットマン。オケがやむとき、なぜか、圧倒的に切迫感のある歌が響き渡る。なんと静かでメロディアスなんだろう。若さが静かに高みへ。
この切迫感、ディランのいつまでも若く、なにやら逆説的なアトモスフィアも漂うけれども、こういったあたりがコリリアーノの進めてきた作曲と、ディランとの未知との遭遇的な出会いの妙ということだろう。

プリットマン登場前からスペシャルな雰囲気が有りましたけれども、登場と同時に小どよめき。第一声で聴衆を魅了。自在の歌に唖然茫然、譜面不要の説得力もありますね、長い詩。
ディランの内面へのくい込みがディープ、スリリングな進行。
コリリアーノのチリチリする弱音持続、ダイナミックで色彩豊かなパレット。様々な表現が次々と現れる。アンプリファイドされたソプラノはオーケストラの咆哮と折り合いをつける。言葉が聴こえる。深刻で厳しい音楽が展開されていく。説得力あります。都響の演奏も白熱さを増す。
コリリアーノ・スペシャリスト下野にしても今日の初演はエポックメイキングなものであったに違いない。隅々まで冴えわたる棒、プリットマンとの絶妙なキュー。内面に光をあてていく。音楽が生きている。日本初演にふさわしいものでした。

コリリアーノを満喫しました。ありがとうございました。
おわり

コリリアーノ











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