河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2560- フィデリオ、カタリーナ・ワーグナー、ダニエル・ウェーバー、リカルダ・メルベート、ステファン・グールド、ミヒャエル・クプファー=ラデッキー、ニュー・プロダクション、2018.5.20

2018-05-20 22:46:09 | オペラ

2018年5月20日(日) 2:00-5:00pm オペラ・パレス、新国立劇場、初台

新国立劇場 プレゼンツ
ベートーヴェン 作曲
カタリーナ・ワーグナー プロダクション
ダニエル・ウェーバー ドラマトゥルク

フィデリオ プレミエ、ニュー・プロダクション 70-63

characters in order of appearance at overture Fidelio
1.ドン・ピツァロ、ミヒャエル・クプファー=ラデッキー(黙役)
2.ジャッキーノ、鈴木准(黙役)
3.ロッコ、妻屋秀和(黙役)
4.マルツェリーネ、石橋栄美(黙役)
5.フロレスタン、ステファン・グールド(黙役)
6.レオノーレ、リカルダ・メルベート(黙役)

Character in order of appearance at act
1.フロレスタン、ステファン・グールド(T)
1.ジャッキーノ、鈴木准(T)
1.マルツェリーネ、石橋栄美(S)
2.ロッコ、妻屋秀和(Bs)
3.レオノーレ、リカルダ・メルベート(S)
4.ドン・ピツァロ、ミヒャエル・クプファー=ラデッキー(Br)
5.囚人1、片寄純也(T)
5.囚人2、、大沼徹(Br)

6.ドン・フェルナンド、黒田博(Br) ActⅡ
7.偽レオノーレ、(黙役) ActⅡ

新国立劇場合唱団
飯守泰次郎 指揮 東京交響楽団


Duration
フィデリオ序曲  5
ActⅠ 46-19
Int
ActⅡScene1  34
レオノーレ序曲第3番  14
ActⅡScene2  15


つい先達て、凄いフィデリオを聴いたばかり。
2551- フィデリオ、ウール、ザイフェルト、チョン・ミョンフン、東フィル、東京オペラシンガーズ 2018.5.8

2553- フィデリオ、ウール、ザイフェルト、チョン・ミョンフン、東フィル、東京オペラシンガーズ 2018.5.10

上記は演奏会形式の公演、完成度が非常に高くまた受けた感銘も大変なものでした。
今日は新国立劇場がカタリーナ・ワーグナーに演出依頼をしたフィデリオのプレミエ公演。こちらは舞台がありますので、また別の味わい、オペラの醍醐味満喫となるか。

チョンの公演では冒頭レオノーレ3番から始まるものでしたが、初台公演はフィデリオ序曲から始まり、第2幕1場のあとレオノーレ序曲第3番が奏されるいわゆる通常の上演。

唯一のオペラ小屋は初台、とは言っても昔とは随分と状況がちがってきていて、あちらこちらで上質のオペラ公演を観ることが出来るようになった昨今。オペラでの音楽シーンは日本でも根づいていると思う。多彩な音楽活動とオペラ演目、そういったことが途切れることなく上演され続ける。シーンですね。色々と問題もあろうが、ピュアにエンジョイできるようになった大仕掛けエンタメ。思い切り楽しめる時代、まことに幸せといわなければならない。
ワーグナーの名がプロダクションの名に出ていてそれだけでエキサイティングなところもありますが、オペラゴアーズはびくともしない(笑)。今日はベートーヴェンのオペラ。
そういった思いが自然に醸し出される中、フィデリオの騒々しい打撃音から始まった。

昔メトで観たのはオットー・シェンクのプロダクション、指揮者はクラウス・テンシュテット、クリストフ・ペリック、リチャード・ウォイタック等々で。
シェンクのプロダクションでは今日の演奏と同じくレオノーレ3番が鳴るが、それは第1場の幕が下り、真っ暗な中、ピットで動く指揮姿が時折ちらつくだけの暗闇15分。これはこれで物思いにふけるにはいいのかもしれない。それから何十年。舞台は変遷を重ね、今では頭の序曲のところから前出しで色々とやるのが普通。
カタリーナ演出では序曲の第一音が鳴り、幕が開きいきなりピツァロとそのシルエットがいる。彼にスポットライトがあたる。結局、この序曲だけで6人衆が出てくる。
舞台は2段で上が中庭、右からスポットライトピツァロ、真ん中マルチェリーネとジャッキーノ部屋、左がレオノーレ部屋。下段はフロレスタンの牢獄。
動きは上の真ん中マルツェリーネとジャッキーノの部屋から始まる。床にはピンクのマット、お花を挿して歌う、明るい感じ。
左隣のレオノーレ部屋では男装に着替える。変装部屋で変装するところを見せることになる。下段の牢獄ではフロレスタンがチョークで壁に妻の絵を描きながら闇の生活を送っている。
通常2幕からの出番となるフロレスタンはこのように最初からほぼ出ずっぱり。他のキャラクター連も序曲から第1幕へそのまま出ていて動きを作っていく。
1幕後半では新国立の大掛かり舞台仕掛けが動く。全体が徐々に上にあがり、それまで2段だった舞台が持ち上げられ3段になる。一番下に現れたのは多数の囚人たちがいる牢獄。つまり1段目が囚人用牢獄、2段目がフロレスタンの牢獄。3段目が中庭部屋。舞台移動は初台機能を垣間見られるものと。

第1幕の動きはこういったところで、音楽はフィデリオ序曲がまるでフィガロの結婚のように軽やかなものにきこえる。そのまま1幕へ。セリフはほぼ割愛されている。
ジャッキーノの声が出ていない。かたやマルチェリーナはやや硬さが有るもののそれを自身の動きでもみほぐしながら、前に出る声で思いっきり体当たり演技。石橋さんは最後まで歌と演技が明快で舞台に明るさをくれた。
ピツァロのキャラクターがよく決まっていて、いかにもわるだくみしそうな気配。
レオノーレのメルベートはエンジンをかけ始めたところか。

囚人たちの地下牢が舞台地下から上に持ち上げられて出てくるところは迫力ある。とはいえ、序曲の前出し風味満載の緊張感に比してその後の第1幕本編は全体にあまりぱっとしない。

第2幕はフロレスタンの一声から始まる。絵を描いたり、墓穴を掘ったりとなにかと動きの多いフロレスタンキャラ。グールドはシーンの流れに沿うもので、レオノーレともども忙しい動きが多い中、相応なこなしであったと思う。メルベートは進むにつれて勢いが出てきましたね。
第1場でピツァロに刺されるレオノーレ。このあたりからストーリーの雲行きが怪しくなってきた。レオノーレ序曲第3番の前半、もうひと芝居ある。ピツァロが牢獄に降りてきて今度はフロレスタンを刺す。そして上に抜ける階段のところにブロックを積んでいき出口をふさぐ。
序曲後半は動きが無い。ドン・フェルナンドが来るトランペットが遠く響き渡るところから勝利、歓喜までのところの音楽では舞台は空虚で動きのない世界となる。序曲中のこの対比は鮮やかにしてお見事。この演出にふさわしいものだ。
そして、間際のフロレスタンとレオノーレ、二人で掘る墓穴。
フェルナンドが囚人たちを牢獄から出す。その大人数に紛れ込むピツァロ。
深手を負ったフロレスタンとレオノーレはいつの間にか上段左のレオノーレ部屋で瀕死の重傷で勝利を歌い続ける。
ピツァロはフロレスタンに変装し、偽レオノーレとともに牢獄から出された囚人たちの中から出てくる。奥から勝利の光が放射される中、フェルナンドはこの偽夫婦たちを見破れないまま、わるだくみ夫婦は囚人たちを牢獄に入れ直し、自分たちだけが外に、そこでフェルナンドと対峙する偽フロレスタンの顎を突き出したピツァロ。オレの策略が勝つのだ。といいたげな短いストップモーションとともに幕。

思えば、劈頭でのあちら向き静止ピツァロから始まったこのオペラは最後、勝ち誇ったピツァロで幕。メインロール二人を刺し、レオノーレの変装の上をいく変装をし、策略を凝らしたピツァロの勝ち。徹底的にピツァロにスポットライトを当てた演出であったと言えよう。
勝利と歓喜の歌はピツァロのためのものであった。ピツァロとフェルナンドの最後のシーンは力関係の逆転予告、ピツァロの勝利を予告するものであり、フェルナンドから次のピツァロへの権力橋渡しが、このオペラが終わったあとでそのようなことになるのかもしれない、権力は腐敗し、次に受け継がれていくものだ。そういうことを、この舞台が演じられている中までに前出し、さき出ししたもの。将来起こりそうなことをこの舞台で表現しえた見事な演出であったと言えよう。力強い合唱の歌は権力が新しい権力者に移るときのお祝いの喜びの歌だったのかもしれない。今の時代、ありそうなことだ。
そして、これはリングのように繰り返される、と。

舞台が1,2,3階、それに、トップ階は部屋が分かれており、独唱は聴きごたえあるものの、2,3,4,5重唱はお互い離れた位置での歌唱でなかなか重唱の妙が出て来ない。遠い席から観ているほうがいいのかもしれない。

演奏はいまひとつ。特に第2幕。レオノーレ序曲第3番に代表されるノリのあまり良くない演奏。それに、フロレスタンが歌う前の前奏は普段オペラの歌い節をやっていないオケだろうなあとモロに出るすべりの悪い演奏。



マルツェリーネの二つのシルエット
一度に二つ出てくるマルツェリーナのシルエット、あれどうゆう仕掛けなんでしょうかね。

演出については、1000円プログラムにあるドラマトゥルク担当のダニエル・ウェーバーのプロダクションノートを事前読みすれば概ねわかります。

終演し、演出関係者一同、カタリーナ含め全員揃い踏み。

とりあえず、1回目
おわり






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