最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

トンデモ判決 無灯火でも見張りが不十分なのが悪いんだもん

2024-04-25 22:11:16 | 日記
令和5(行ヒ)2  裁決取消請求事件
令和6年1月30日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所


甲船と乙船が衝突した事故について、小型船舶操縦士である甲船の船長が、海上衝突予防法所定の灯火を表示し、乙船の動静を監視していれば上記の衝突を回避することができたことを認定説示することなく、上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、上記事故に係る海難につき甲船の船長に職務上の過失があるとした原審の判断には、職務上の過失に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

これの続きの裁判のようです。
トンデモ判決、夜間無灯火の船と慣例に反して大回りした船の衝突:何故か両成敗

前記事実関係等によれば、原審は、乙船の速力、航跡及び甲船との衝突地点について本件裁決と異なる事実を認定しているのであるから、両船の各針路の状態、その見合関係、操船状況等衝突に至る経過についても本件裁決の認定と異なる事実を前提としているものというべきところ、これらの事実を具体的に認定説示していない。そのため、上告人が乙船を初めて視認した時点における両船の位置関係や速力が明らかでなく、仮にその時点で乙船の右転を予見し得たとしても、上告人がその動静を監視していれば右転を認識して衝突を回避することができたといえるものではないし、乙船から無灯火の甲船を視認することができた距離や乙船の船長による見張りの状況、乙船の速力等が明らかでなく、甲船が海上衝突予防法所定の灯火を表示していれば衝突を回避することができたといえるものでもない。そうすると、原審は上告人が、上記灯火を表示し、乙船の動静を監視していれば上記衝突を回避することができたことを認定説示していないものといわざるを得ず、上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、本件事故に係る海難につき上告人に職務上の過失があるものということはできない

どういう明るさだったのか、視認距離はどのくらいなのか、せめてそのくらいは議論してくださいよ。緊急事態で灯が切れたというわけでもなく、単につけていなかったのですから無灯火が悪いに決まっているでしょ。全くとんでもない裁判官ですね。

裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 渡 惠理子
裁判官 今崎幸彦

何のための法律なんだか。リーガルマインドがない裁判官です。

国民審査を蔑ろにしてきた結果です

2024-04-21 06:38:55 | 日記
東京15区補選 ある乱入者のせいで大荒れ 「ヤジは表現の自由」と言っていた左派の皆さん、ブーメランとなっていることを反省してください!

街頭演説の選挙妨害があまりにも酷いですが、警察が躊躇して取り締まれないようです。

北海道の高裁で「あべやめろー」を連呼した人を逮捕したところ表現の自由の侵害だとして無罪になりました。こういう左傾化したというか、実態を見ていないというか、裁判官が机上だけで現場を如何に見る気がないことがよく分かります。

工事なしで、性自認だけで性別変更可能というトンデモな判決を出した後に、大量に変質者の逮捕者がでました。ちゃんと×をつけないと、これからもっととんでもないことになりますよ。

トンデモ判決 自動取引FXのDVDの返金要求

2024-04-19 22:07:37 | 日記
令和4(受)1041  共通義務確認請求事件
令和6年3月12日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
 消費者裁判手続特例法2条4号所定の共通義務確認の訴えについて同法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断に違法があるとされた事例

おそらくこの団体でしょうか、簡単に事件の概要の紹介があります。

株式会社ONE MESSAGEおよび泉忠司氏
「仮想通貨バイブルDVD」および「パルテノンコース」の購入代金の返還請求
東京地方裁判所に提訴 平成31年(ワ)第11049号

(1) 被害回復の対象となる消費者
①被告株式会社ONE MESSAGEとの間で平成28年10月1日以降に「仮想通貨バイブルDVD5巻セット(VIPクラスへの参加を含む)」に係る売買契約を締結し、同契約に基づき購入代金を支払った消費者
②被告株式会社ONE MESSAGEとの間で平成28年10月1日以降に「パルテノンコース」(ハイスピード自動AIシステム及びこれに付帯するサービス)に係る売買契約を締結し、同契約に基づき購入代金を支払った消費者
(2) 被害回復の対象となる損害
①仮想通貨バイブルDVD5巻セット(VIPクラスへの参加を含む)」の購入代金
②「パルテノンコース」(ハイスピード自動AIシステム及びこれに付帯するサービス)の購入代金
③上記①②の購入代金の各支払い日から各支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
④対象消費者が特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用


事実認定を見ていきます。
(1)平成28年10月頃、仮想通貨の内容等を解説する第1審判決別紙商品等目録記載 の商品(仮想通貨バイブルと称するDVD5巻セット。以下「本件商品 」という。)及び同目録記載 の商品(本件商品 にVIPクラスと称する複数の特典を付加したもの。以下「本件商品 」という。)の購入を勧誘するためのウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)を設け、これらの商品の販売を開始した。
(2)史上最高の指導者による塾生に3ヶ月で16億円稼がせたノウハウを完全解説した『仮想通貨バイブル』を公開します…この教材は『暗号通貨で稼ぐ』ことに特化した世界初の教材です。」、「より『確実』に、より『早く』億万長者になりたいという方を対象としたVIPクラスをご用意しました。」等が掲載されていた。
(3)本件商品 は、その購入者にハイスピード自動AIシステムと称するサービス等を提供するものであり、上記購入者が上記システムにログインして投資額等を設定することにより、特定のトレーダーが行う金融取引と同様の取引を行うことができるというものであった。なお、本件商品 の価格は、49万8000円であった。
(4)被上告人Y1は、「AIがあなたの代わりに24時間365日、あなたのお金を増やし続けてくれるのです。」等と説明した。
(5)本件商品 が約4000人、本件商品 が約1500人、本件商品 が約1200人であった。


これは要約ですが、本文では結構しょうもない売り文句が書かれています。これって自己責任でしょ。ところが最高裁は違うようです。

消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害を集団的に回復するため、共通義務確認訴訟において、事業者がこれらの消費者に対して共通の原因に基づき金銭の支払義務を負うべきことが確認された場合に、当該訴訟の結果を前提として、簡易確定手続において、対象債権の存否及び内容に関し、個々の消費者の個別の事情について審理判断をすることを予定している(2条4号、7号参照)。

これって消費者契約法の適用ですが、これって投資の準備じゃないですか?投資行為の一環だと思いますけどね。

仮想通貨に関し誰でも確実に稼ぐことができる簡単な方法があるなどとして、本件各商品につき虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をしてこれらを販売するなどしたというものであるところ、前記事実関係によれば、被上告人らの説明は本件ウェブサイトに掲載された文言や本件動画によって行われたものであるから、本件対象消費者が上記説明を受けて本件各商品を購入したという主要な経緯は共通しているということができる上、その説明から生じ得る誤信の内容も共通しているということができる。

相変わらず頭の悪い文章ですね。文を切りなさい。見るからに胡散臭いという趣旨で言ってます。これって保護する必要はありますか?

過失相殺及び因果関係に関する審理判断を理由として、本件について、法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法がある。

いやいや最初から適用する法令に誤りがありますね。高裁の方がまともな判断をしています。

裁判官林道晴と裁判官宇賀克也の補足意見
法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」(以下「本要件」という。)とは、法廷意見が指摘するとおり、消費者ごとに相当程度の審理を要する場合をいうものと解されるが、同項は、直接的には、簡易確定手続における審理判断の困難性に着目した規定ぶりとなっていることに照らせば、本要件に該当するか否かを判断するに当たっては、簡易確定手続の審理を担当する裁判所が講じ得る審理運営上の工夫を十分考慮に入れる必要がある。

到底受け入れがたいですね。よくボケした人が、怪しげなDVDを買って、中身が大したことがないから金返せですよね。この理屈が通るなら、本を買ったらつまらないので金返せ、映画がつまらないから金返せと何が違うんですか?言うのは勝手ですが、この屁理屈通します?

裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 今崎幸彦

過保護すぎやしませんか?

選挙管理委員会に届け出ていない文書配布制限は表現の自由に反しない

2024-04-14 18:06:46 | 日記
令和5(あ)1305  公職選挙法違反被告事件
令和6年3月8日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  広島高等裁判所  松江支部

また1枚判決で何がどういう事件なのか全く分かりません。

NHKの報道です
3年前の衆院選の公選法違反 元鳥取県議の有罪確定へ 最高裁
3年前の衆議院選挙で候補者の選挙対策本部長を務め、選挙管理委員会に届け出ていない文書を配ったとして公職選挙法違反の罪に問われた元鳥取県議会議員の裁判で、最高裁判所は、無罪を主張する元県議側の上告を退ける判決を言い渡し、有罪が確定することになりました。
鳥取県の県議会議員だった福間裕隆被告(82)は、3年前の衆議院選挙で鳥取2区から立候補し比例代表で復活当選した湯原俊二氏の陣営の選挙対策本部長を務め、選挙管理委員会に届け出ていない文書を配ったとして公職選挙法違反の罪に問われました。


3年前の衆院選の公選法違反 元鳥取県議 有罪確定見通し 最高裁
元議員側は「選挙運動の文書を制限している公職選挙法は表現の自由を保障した憲法に違反する」などと無罪を主張しましたが、2審の広島高等裁判所松江支部は2023年10月、「公職選挙法は表現の内容そのものを禁止するものではなく、選挙運動の手段を規制するものだ」として憲法に違反しないと判断し、1審に続いて罰金30万円の有罪判決を言い渡し、元議員側が上告していました。

要するに選挙に絡む資料を配布るのに、選挙管理委員会に届けていない資料を配布する選挙違反があった。その規定自体は、表現の自由に抵触するので法律そのものが無効であるという訴えのようです。

弁護人安田寿朗の上告趣意のうち、公職選挙法142条1項、243条1項3号の各規定について憲法21条違反をいう点は、公職選挙法の上記各規定が憲法21条に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和43年(あ)第2265号同44年4月23日大法廷判決・刑集23巻4号235頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和55年(あ)第1577号同57年3月23日第三小法廷判決・刑集36巻3号339頁参照)から、理由がなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。

以上終了です。

裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美
裁判官 尾島 明

今回は内容が分かりやすかったのですが、一応事実認定ぐらいは書いてもらいたいものです。

トンデモ判決、夜間無灯火の船と慣例に反して大回りした船の衝突:何故か両成敗

2024-04-13 20:26:30 | 日記
令和5(行ヒ)2  裁決取消請求事件
令和6年1月30日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
甲船と乙船が衝突した事故について、小型船舶操縦士である甲船の船長が、海上衝突予防法所定の灯火を表示し、乙船の動静を監視していれば上記の衝突を回避することができたことを認定説示することなく、上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、上記事故に係る海難につき甲船の船長に職務上の過失があるとした原審の判断には、職務上の過失に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

海難審判はあまりマスコミで取り上げないようですね。事実認定から見ていきます。
(1) 小型船舶操縦士である上告人が船長として操船する長さ7.16mの動力船である甲船が、鹿児島県南さつま市A町のB漁港C地区の船だまりを出発し、無灯火の状態で航行していたところ、沖合からC船だまりに入るために航行していた長さ5.69mの動力船である漁船乙船と衝突する事故が発生した。

車で言ったら夜間に無灯火で駐車場から出ようとして、駐車場に入れようとした車と衝突したというところでしょうか。

(2)門司地方海難審判所は、本件事故に係る海難について、上告人及び乙船の船長を受審人として審判を行い、平成31年2月20日、上告人の小型船舶操縦士の業務を1か月停止し、乙船の船長を懲戒しない旨の裁決をした。
イ 本件事故は、甲船が、海上衝突予防法所定の灯火を表示することなく無灯火の状態で航行したばかりか、動静監視不十分で乙船の前路に進出したことによって発生したものであるところ、上告人には、夜間、C地区において、左舷方から接近する乙船の右舷側を認める状況下で左転を開始する場合、乙船の動静監視を十分に行うべき注意義務があったといえるから、これを怠った職務上の過失がある。


周辺不注意、車で言うとよそ見運転だろ!という事のようです。

(3)本件裁決の認定と異なり、乙船は、右小回りという入港の慣行に反し、左側に膨らんだコースを本件事故の瞬間まで15ノットを超える高速で航行したものであり、衝突地点も、より北側であった蓋然性が高い。

いますね、男女ともに左折するのに車線目一杯どころか反対車線にまで出て曲がるおバカさん。後は間違って指示器を出しているのか分からないのでパニックになりますよ。田舎ほどこういうおバカな運転をする人が多いので要注意です。

原審は
入港の慣行に反するコースを高速で航行した乙船の船長が懲戒を受けなかったとしても、上告人に対する懲戒は、やむを得ない範囲のものと認められる。

それはないですわ。慣行云々ではなく、法令をまず守りましょうよ。

最高裁は
上告人がその動静を監視していれば右転を認識して衝突を回避することができたといえるものではないし、乙船から無灯火の甲船を視認することができた距離や乙船の船長による見張りの状況、乙船の速力等が明らかでなく、甲船が海上衝突予防法所定の灯火を表示していれば衝突を回避することができたといえるものでもない。そうすると、原審は、上告人が、上記灯火を表示し、乙船の動静を監視していれば上記衝突を回避することができたことを認定説示していないものといわざるを得ず、上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、本件事故に係る海難につき上告人に職務上の過失があるものということはできない。

ん?事故両成敗ですか?おかしいでしょう。夜間なのに無灯火の方が悪いに決まっているでしょう。

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 渡 惠理子
裁判官 今崎幸彦

全員ゴミ判決です。交通事故同様、高速道路のど真ん中を歩いている人がはねられたとしても、車を運転している方が悪いという理屈と全く同じです。これでは法律がある意味がありません。

名張毒ぶどう酒事件は再審不可

2024-04-10 19:28:28 | 日記
令和4(し)206  再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件
令和6年1月29日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  名古屋高等裁判所

再審請求を棄却した原々決定を是認した原決定に対する特別抗告が棄却された事例

日本弁護士会の声明です「名張毒ぶどう酒事件」第10次再審請求特別抗告棄却決定に対する会長声明
日本弁護士会の声明といっても、弁護士のそういでもなければ同意もありません。会長が勝手に言っているだけです。

名張毒ぶどう酒事件

事件の概要はこんな感じです。
  申立人の兄である被告人は、妻と愛人との三角関係の処置に窮し、両名を殺害してその関係を清算しようと考え、昭和36年3月28日、事件本人及び両名らが所属する生活改善クラブの年次総会と懇親会が開催される三重県名張市内の公民館に女子会員用のぶどう酒を運び入れた上、公民館に誰もいなくなった隙に、女子会員らが死亡するかもしれないことを十分認識しながら、本件ぶどう酒を開栓して、竹筒に入れて忍ばせて持参していた有機燐テップ製剤である農薬ニッカリンTを4ないし5cc 注入し、替栓 を元どおりかぶせるなどし、同日午後8時頃、懇親会に出席した女子会員20名に提供させ、これを飲んだ17名につき、有機燐中毒により、妻と愛人を含む5名を死亡させて殺害し、12名に傷害を負わせ、3名については飲ませるに至らなかった(殺人、殺人未遂)。   

相変わらず無駄に長い文章です。理解させようという気はさらさらないようですね。

  本件は、事件本人(平成27年10月4日死亡)の妹を申立人とする第10次再審請求事件である。
遺族が名誉回復のために起こした裁判です。10回もやってるんですね。

 1 確定判決の有罪認定について
  ①本件ぶどう酒に有機燐テップ製剤の農薬が混入されたのは、懇親会の開会と比較的近接した時刻に、公民館の囲炉裏の間においてであり、上記囲炉裏の間において本件ぶどう酒に人目につかず農薬を混入することができたのは、約10分間公民館内にただ一人でいた事件本人以外にはないことを裏付ける犯行の場所と機会に関する情況証拠、
②公民館内から押収された本件ぶどう酒の内蓋である四つ足替栓の表面の傷痕に関して、事件本人の歯牙により生じたもの又は事件本人の歯牙によるものと類似すると判定した3つの鑑定
③事件本人の捜査段階の自白調書  

実行したのは間違いないと最高裁は再び認定しました。

  本件替栓上の 傷痕は、人の歯痕であるか、あるいは人の歯痕である可能性が高く、また、それが事件本人の歯牙によって印象されたとしても矛盾は生じないとした。その上で、同決定は、本件替栓の表面の傷痕に関する3鑑定は、同再審請求後に提出された証拠によって、その証明力が大幅に減殺されたとはいえ、新旧全証拠を総合して検討すると、犯行の機会に関する情況証拠から、事件本人が本件犯行を犯したと認めることができ、これに信用性の高いと認められる事件本人の自白を総合すれば、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないとした。 
本当に苛立たせますねこの文章は。こんなに長い必要はありますか?歯の跡があるから間違いないと言ってるだけです。  

  2 本件再審請求における新証拠①犯行の機会と場所に関する証拠群(本件ぶどう酒の瓶口に巻かれていた封緘紙の破片の裏面に2種類の糊が付着していることが明らかになったことにより、犯行場所が公民館であり事件本人しか犯行の機会がないという確定判決の事実認定に合理的疑いが生じたと同時に、事件本人による自白に決定的な矛盾が生じたというもの。 ②毒物の特定に関する証拠群(模造ぶどう酒にニッカリンTを加えてペーパークロマトグラフ試験を実施したところ、当時の三重県衛生研究所が行ったペーパークロマトグラフ試験とは異なる結果が出たことから、犯行に使用された毒物がニッカリンTではないことが明らかになり、事件本人による自白の根幹部分について前提事実との間に食い違いが生じたとするもの。③本件ぶどう酒の瓶に装着された内蓋である本件替栓上の傷痕に関する証拠群④事件本人による自白の任意性及び信用性に関する証拠群・・・
3①について  ATR法による鑑定により本件封緘紙に付着した物質を特定し、本件封緘紙が本件ぶどう酒への毒物混入後再度糊付けされた可能性を示そうとすること自体、相当に困難であるといわざるを得ない。  ・・・

キ したがって、新証拠1は、本件ぶどう酒が公民館の囲炉裏の間に持ち込まれる前に、何者かが本件封緘紙を破って本件ぶどう酒に毒物を混入し、その後再度本件封緘紙を糊付けしたという可能性を示すような証拠価値を有するものではなく、犯行現場は公民館の囲炉裏の間であり、同所において本件ぶどう酒に人目につかず農薬を混入することができたのは、約10分間公民館内にただ一人でいた事件本人以外にはないとした確定判決の認定に合理的な疑いを差し挟む証拠とはいえない。


これだけでも十分の証拠能力がありますね。

新証拠2について
当時の三重県衛生研究所の試験において、エーテル抽出の際、検体に塩化ナトリウムを飽和するまで加える方法である塩析が行われたことをうかがわせる証
跡が何もないとした原々決定に誤りはないとした原決定も相当である。

新証拠3について
第5次再審請求に関する特別抗告審決定(前記最高裁平成5年(し)第40号同9年1月28日第三小法廷決定)において既に前提とされ、その上で、同決定は、これを踏まえてもなお確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないとしたのであるから、新証拠3が刑訴法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に当たらないことは明らかである。


同じ証拠を持ち出したのですか。そりゃ却下されますね。

新証拠4について
しかしながら、事件本人は、身柄が拘束される前に、捜査機関が既に入手していた資料から創作できるとは考えられないような具体的な自白をしており、その内容も、客観的状況と矛盾なく符合していると認められ(前記最高裁平成5年(し)第40号同9年1月28日第三小法廷決定参照)、新証拠4を踏まえても、自白の信用性に疑いは生じない。


物証と証言が一致したならばもうどうしようもありません。

結論
新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではないという原々決定を是認した原決定は、正当である。

裁判官全員一致の意見でした。

裁判官宇賀克也の反対意見
・・・・この事実も上記可能性を裏付けるものであるといえる。)から、上記の事実だけからは必ずしも犯行場所が公民館の囲炉裏の間であるとは断定できなくなる。そして、このような観点から旧証拠を検討するならば、事件本人にのみ犯行の機会があったとは断定できなくなり、事件本人の犯人性に合理的な疑いが生じると考えられるのである。

最高裁は事実認定をするところではないはずでは?

記憶は時間が経過するにつれて曖昧になるという経験則に照らしても、事件後間もない時期における関係者の一致した供述が、相当期間経過後に一斉に変遷するのは疑問であり、本件ぶどう酒のB方への到着時刻が午後5時過ぎ頃であったとする確定判決の認定は、元々脆弱な証拠に支えられていたものにすぎないとみるべきである。そうすると、上記のとおり、本件封緘紙等の発見状況から犯行場所は公民館の囲炉裏の間であったとする推論自体が揺らいだことも併せ考えれば、本件ぶどう酒のB方への到着時刻が午後4時前であり、同所において犯人が本件ぶどう酒に農薬を混入した可能性も否定できなくなったというべきであり、

それを言い出したら、どうしようもないでしょう。全ての刑事事件の裁判が成り立たなくなります。

再審を開始すべきである。

甘いなぁ。宇賀裁判官はどうも大甘な見方のようにしか思えません。

裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也 トンデモ
裁判官 林 道晴
裁判官 渡 惠理子
裁判官 今崎幸彦

内容以前に、この判決文の日本語の下手糞具合に腹が立ちます。分かるように書けよ!と。判決文は裁判官の満足のために書くのではなく、次の参考にするために役立たなければなりません。これは裁判長が悪いのかな。

岡口基一裁判官罷免される

2024-04-03 17:30:07 | 日記
産経新聞の報道です
SNS不適切投稿の岡口基一判事について弾劾裁判所、判決主文後回しに
訴追状によると、岡口氏は平成29年~令和元年、女子高生殺害事件の遺族やペットの返還をめぐる民事訴訟の当事者に対し、侮辱したり、社会的評価を不当におとしめたりする投稿をSNSなどにしたなどとされる。
裁判官訴追委員会側は、岡口氏が一般読者からの注目を集めることを期待し、投稿に及んだと指摘。「司法に対する国民の信頼を損なわせた程度は非常に大きい」として、罷免にすべきだと主張していた。
岡口氏は弾劾裁判で、投稿は判例紹介などが目的だったとし、遺族を傷つけたことを謝罪。今月12日の任期満了で裁判官を退官する意向を示していたが、弁護側は「罷免事由にはあたらない」と主張していた。

日経新聞の報道です
SNS投稿で罷免は妥当か 3日判決、岡口判事の弾劾裁判
東京都江戸川区の女子高校生殺害事件に関し、2017年に「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」などと投稿。判決文を閲覧できるリンクも記載した。19年には抗議した遺族に「俺を非難するよう東京高裁に洗脳されている」と書き込むなどした。
岡口判事側は弾劾裁判で、一部は不適切だったと認め謝罪。判例を広く紹介する目的で複数の投稿をし、遺族らを傷つける意図はなかったと説明した。発達障害があり、SNSのコミュニケーション能力に支障があったのが一因だとも主張した。
一方で訴追委員会側は、事件に関する投稿は「性的好奇心に訴えかけ、興味本位で判決を閲覧するのを誘引する意図があり、遺族感情を傷つけたのは明らか」と指摘。遺族の抗議を受けても投稿を繰り返し「国民の司法への信頼を損ねた」として罷免判決を求めた。
既に岡口判事は「遺族らに不快な思いをさせた責任を取る」として再任を希望せず、4月中旬の任期満了での退官が決まっている。ただ罷免判決が出た場合、不服申し立てができず退職金は出ない。最低5年間は法曹資格を失い、弁護士にもなれないことになる。

朝日新聞の報道です
岡口基一仙台高裁判事の弾劾裁判、主文後回し SNS投稿めぐり訴追
弾劾裁判で裁判官役を担うのは、衆参の国会議員14人で構成する「裁判員」で、3分の2以上が賛成すれば罷免される。今回は、結審した第15回公判を審理した12人のうち、8人以上が賛成していれば岡口氏は罷免されることになる。

岡口基一裁判官の弁護をした人のブログ
第344回 岡口弾劾裁判

不当な訴追から岡口基一裁判官を守る会

どうであれ、公開されない判決文にリンクを貼って閲覧できるようにしてみたり、被害者を揶揄しているとしか思えないようなことを書き込んだり、ブリーフ一枚の写真をTwitterに上げてみたり、とにかく異常でしたよ。これがせめて裁判官を名乗っていなければまだしも、という感じで表現の自由をはるかに超えた倫理上の問題です。それでも心底弁護する人がいるんですね。

デフレで年金減額は憲法違反ではない

2024-03-30 13:59:41 | 日記
令和4(行ツ)275  年金減額改定決定取消、年金減額改定決定取消等請求事件
令和5年12月15日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所
 国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成24年法律第99号)1条の規定のうち、国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置、平成25年度及び平成26年度における国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置の特例並びに平成25年度における厚生年金保険法による年金たる保険給付の額の計算に関する経過措置の特例について定める部分は、憲法25条、29条に違反しない。

NHKの報道です
年金引き下げ “憲法に違反せず”最高裁判断 各地裁判に影響か
法律の改正に伴い年金の支給額が段階的に引き下げられたことに対し、兵庫県の年金受給者95人が「最低限度の生活を保障する憲法に違反する」として取り消しを求めた裁判で、最高裁判所は「憲法に違反しない」と判断して上告を退ける判決を言い渡しました。全国各地で起こされている同様の訴訟に影響を与える可能性があります。・・・
この裁判について最高裁判所第2小法廷の尾島明裁判長は15日の判決で「年金を引き下げずに給付額を維持すると、現役世代に負担を強いることになり、財源の圧迫にもつながる」と指摘しました。
その上で「一律の引き下げは世代間の公平を図り、財政基盤の悪化を防ぐなどの観点から不合理だとはいえず、憲法に違反しない」として上告を退け、原告の敗訴が確定しました。


事実関係等の概要です
(1)老齢年金制度においては昭和48年から、前年度又は前年において年度平均又は年平均の全国消費者物価指数が前々年度又は前々年から変動した場合、その比率等を基準として年金額を改定する仕組みが導入されていた。・・・平成14年度においては、特例水準と本来水準との間でおおむね1.7%のかい離が生ずることとなった。また、平成15年度及び平成16年度の各年金額についても、物価指数の下落を踏まえて年金額の改定に係る特例法がそれぞれ制定され、給付額が減額されたこの(2)国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号。以下「平成16年改正法」という。)が制定され、物価スライド制が廃止されるとともに、老齢年金の保険料水準を将来的に固定することとした上で、物価や賃金の変動を基準として年金額を改定することとした。

お約束通り法律によって上げてきたところ、デフレが酷く基準に合わせて下げました。約束どおりですね。

(3)平成16年改正法の施行後も物価指数の下落が生ずるなどした結果、特例水準は解消されず、かえって平成23年度には、特例水準が本来水準をおおむね2.5%上回る状況となっていた。・・・国民年金及び厚生年金の各収支における赤字が増大する傾向にあることが示されていた。・・・特例水準を平成27年度の開始時点までに3年度にわたって段階的に解消することとした

上告理由のうち憲法25条及び29条違反について。
(1)平成25年度及び平成26年度における国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置の特例並びに平成25年度における厚生年金保険法による年金たる保険給付の額の計算に関する経過措置の特例について定める部分が憲法25条及び29条に違
反する旨をいうものと解される。


裁判所は職権で、減額措置が生存権と財産権が侵害されたとして訴えたとみなしたようです。この論点について

(2)特例水準による年金額の給付を維持することは、賦課方式(現在の年金受給権者に対して支給される年金給付の財源を、主に現役世代が負担する保険料によって賄う方式)を基本とする制度の下で現役世代に本来の負担を超える負担を強いることとなり、また、現役世代が年金の給付を受けるようになった際の財源を圧迫することにもつながるものと考えられる。
(3)本件部分は憲法25条、29条に違反するものとはいえない。


その通りだと思います。自分だけの年金じゃありませんから。

裁判官全員一致の意見ですが、裁判官三浦守の補足意見
1 憲法25条1項は、福祉国家の理念に基づき、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言し、同条2項は、上記理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したもの・・・老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的としている(国民年金法1条)。

この規定は生活保護を念頭に入れているから、別物だと言ってます。

老齢年金制度において導入されていた物価スライド制の下で物価スライド特例法を契機として生じた年金額の特例水準について、これを3年度にわたって解消する旨を定める平成24年改正法1条のうち、本件部分の憲法適合性が問題となっている。・・・本件部分が憲法25条に違反するか否かの判断において、国会の裁量を前提としながら、生活保護制度を含め、国が創造拡充すべき社会保障制度全体の中で、個々の国民の具体的・現実的な生活権の設定充実という観点から考慮される事情である。

ここは違うでしょ。本来は老後のために自分で貯金するものなのに、すってんてんになって生活保護になるのを防止するのが目的ですから、ここは自己責任のはずです。

裁判官尾島明の補足意見
本件では、老齢等によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与すること(国民年金法1条)、労働者の老齢等について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与すること(厚生年金保険法1条)を目的として創設され、運用されてきた年金制度について、法律改正により年金給付額を減ずる改定を行ったことが、憲法25条に違反するか否か

先の三浦裁判官より制度を理解しています。が

制度設計をするにはそれにふさわしい専門的知見と能力を有する機関がその任に当たることが必要である。

それって裁判所でいう話ですかね。

憲法25条2項が、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定していることから、一旦具体化した国民の生活水準を低下・後退させる場合には、裁量の幅は狭まり、相応の正当化が要求されるという制度後退禁止原則を定めており、

これって誰にとっての制度後退、前進なのかですが、そこが議論されていません。国家財政なのか、国民の福祉といっても今の受給者に限定した話か、将来の受給者も含めてなのか、主語を入れましょう。

裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

補足意見は微妙なものを感じますが、判決の趣旨は至極真っ当だと思います。

トンデモ 選挙違反で当選無効、でも政務活動費は返納する義務なし

2024-03-29 22:52:39 | 日記
令和4(行ヒ)317  不当利得返還請求事件
令和5年12月12日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所
 1 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、当該当選人を唯一の所属議員とする会派の行った大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条所定の政務活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。
2 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、上記議会の議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。
(2につき補足意見及び反対意見がある。)


NHKの報道です
当選無効議員に判決確定までの報酬など全額返還命じる 最高裁
公職選挙法違反で有罪が確定し、当選が無効になった元大阪市議会議員が、判決が確定するまでに受け取っていた議員報酬などについて、最高裁判所は全額の返還を命じました。当選無効が確定するまでの議員報酬などについての初めての判断で、国会議員などの同様のケースにも影響が及ぶ可能性があります。
4年前の大阪市議会議員選挙で公職選挙法違反の罪で有罪判決を受け、失職した不破忠幸元議員に対し、大阪市は確定するまでに支給した議員報酬や政務活動費など合わせて1400万円余りの返還を求めていました。
1審と2審は、元議員の活動で市も利益を得ていたなどとして、およそ160万円に限って返還を命じたため、市が上告していました。



では裁判所の認定を見ていきます。

(1)被上告人は、令和元年9月6日、上記選挙に関し、公職選挙法221条3項1号、同条1項1号の罪(公職の候補者による買収)により懲役1年、5年間執行猶予の有罪判決を受け、本件有罪判決は、令和2年2月13日に確定した。
(2)上告人は、被上告人に対し、第1審判決別紙1のとおり、令和元年5月分から令和2年2月分までの議員報酬並びに令和元年6月分及び同年12月分の期末手当の合計額から源泉徴収税額を控除した1001万0611円を支給した。
(3)被上告人は、令和元年6月19日、被上告人のみを所属議員とする会派を結成した・・・政務活動費合計410万4000円を交付した。


選挙違反でしかも買収ですか。当選無効になるので、取り消しとは違って当選したとされることそのものがなかったことになりますので、全額返金が当然になるでしょう。問題は、個人の議員報酬ではなく政治活動費がどうなるかというところのようですね。

最高裁は
上記条例に基づき交付される政務活動費は、市会議員の調査研究その他の活動に資するために必要な経費の助成として交付されるものであって、同条例5条所定の政務活動(以下、単に「政務活動」という。)の対価として交付されるものとはいえず、公職選挙法251条の規定により遡って市会議員の職を失った当選人を唯一の所属議員とする会派が政務活動を行っていたからといって、その活動により上告人が利益を受けたと評価することはできない

個人の所得になるわけじゃないから返金はしなくていいよという理屈のようですね。

さらに最高裁は上記相殺の抗弁は全部認められないところ、これを一部認めた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、論旨は理由がある。
上記相殺の抗弁は全部認められないところ・・・上記当選人は、上告人に対し、市会議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはないというべきである。


先の個人の所欲になるわけじゃないから返さなくてよいの理屈があるので、期末手当も政務活動費の返還に遅れた遅延損害金も払う必要はないということになります。
議論としてはすっきりしてますが、どうも納得いきませんね、ということで案の定反対意見が出てきました。

裁判官今崎幸彦の反対意見
被上告人は、市会議員選挙に当選したものの、公職選挙法221条3項1号、同条1項1号の罪により有罪の確定判決を受けたものであり、同法251条は、当選人がその選挙に関し所定の罪を犯し刑に処せられたときはその当選人の当選は無効とすると規定し、同条による無効の効果が当選時に遡って生じると解されるため、被上告人は当初からその職に就いていなかったことになる。

おっしゃる通り!

たとえ資格を欠いていたとしても、被上告人が外形上市会議員として活動したことは事実として残るのであり、上告人は、被上告人による法律上の原因を欠いた労務の提供により利益を受けたことになるのであるから、被上告人が上告人に対し不当利得返還請求権を取得することは否定できないように思われる。議員として活動したことに基づく議員報酬等の請求権と、議員としての資格を失ったことを前提とする議員報酬等相当額の不当利得返還請求権とは、両立しない発生原因事実を前提とする別個の権利である。

その通り!

選挙犯罪を行い議員資格を失った者に不当利得返還請求権として労務提供の反対給付に係る利益の保持を許すとしても、あくまでも当該労務の客観的評価に基づくべきであって、正規の議員報酬等の額と同額としなければならない必然性があるわけではない。

そうですよね。最大限譲って、政務活動費は個人の所得になっているわけではないので仕方ないとして、期末手当と遅延損害金は支払わせるべきでしょう。これは民事であって刑事事件じゃないからというのもあるのでしょうが、不法な方法で議員になった人間が市の財政と裁判の手間暇かけさせやがった上に銭も持って行くんかい!という判決は余りにも酷すぎます。

それにそもそも無効の意味を曲解しているようにしか思えません。それこそ議論が尽くされていないとしか言いようがありませんね。

裁判長裁判官 林 道晴 ダメ
裁判官 宇賀克也 ダメ
裁判官 長嶺安政 ダメ
裁判官 渡 惠理子 ダメ
裁判官 今崎幸彦 まとも

わけ分からん死刑判決

2024-03-26 17:50:56 | 日記
令和3(あ)1399  殺人被告事件
令和5年12月8日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  福岡高等裁判所

NHKの報道です。
妻子3人殺害の福岡県警元警察官 死刑確定へ 最高裁上告退ける
6年前、福岡県小郡市で妻と2人の子どもを殺害した罪に問われ、無罪を主張していた元警察官について、最高裁判所は「3人の生命を奪った結果は重大だ」として被告側の上告を退ける判決を言い渡し、死刑が確定することになりました。
福岡県警察本部の通信指令課の巡査部長だった中田充被告(45)は、6年前、小郡市の自宅で
▽38歳の妻
▽小学4年生の長男(9)
▽小学1年生の長女(6)の3人を
首を絞めて殺害したとして殺人の罪に問われました。


2枚の判決です。実質1枚に収まりますね。
憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお、所論に鑑み記録を調査しても、刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。

殺害の態様は、数分間、頚部を圧迫し又はひも状の物で絞め続けたというもので、確定的で強固な殺意に基づく上、被告人は、そのような行為を3回も繰り返し、生命を軽視する態度が甚だしい。被告人は、自身が本件の犯人であることを否認しており、そのこともあって、本件について、計画性は認められず、また、動機も不明であるが、もとより、年少の長男及び長女を殺害した動機として酌量できるような事情は見当たらない。妻については、日常的に厳しく叱責されるなどしていたという被告人が、夫婦関係のあつれきの中で抱いたであろう心情自体は理解できなくはないにせよ、殺害を決意した経緯として、しんしゃくするとしても限度がある。遺族らは、被告人に対し、厳しい処罰感情を示している。被告人は、自身の罪と向き合う姿勢を示さず、反省悔悟の情をうかがうことはできない。

本人は否認しているんですよね。ならば、否定している部分をひっくり返すような論証が必要でしょう。それが全くありません。明らかに真っ赤だとしてもですよ、そこはきちんと書かなきゃ駄目でしょう。

以上のような事情に照らすと、被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ず、前科前歴がないことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
よって、刑訴法414条396条181条1項ただし書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する


裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 渡 惠理子
裁判官 今崎幸彦

全員雑過ぎますね。人の命を奪うわけですから、もう少し物証からして犯人だよと論証する必要はありませんか?しかも、わざわざ判例として最高裁のHPで公開してますよね。どういう基準で選んだのでしょうか。新しい解釈があった訳でもなく、はじめての解釈を求められたわけでもないですよね。

抵当権は賃借人と賃貸人の間の相殺に優先する

2024-03-17 10:10:13 | 日記
令和3(受)1620  取立金請求事件
令和5年11月27日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所

抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に賃貸人との間でした、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意の効力を抵当権者に対抗することができるか

新聞報道がないので、事実確認から見ていきます。

(1)本件賃貸人は、平成29年1月、被上告人との間で、本件賃貸人が所有する第1審判決別紙物件目録記載の建物を次の約定で被上告人に賃貸する契約を締結し、同年10月1日、本件建物を被上告人に引き渡した。
ア 期 間 平成29年10月1日~平成39年(令和9年)9月30日
イ 賃 料 月額198万円(引渡日から2か月間は月額99万円)
毎月末日までに翌月分を支払う
(2)被上告人は、平成29年9月、本件賃貸人に対し、弁済期を平成30年4月30日、無利息、遅延損害金を年2割として990万円を貸し付けた(以下、「本件被上告人債権1」)。


家賃を入れてくれなかったので、金銭を貸し付けた形をとったようです。

本件賃貸人は、平成29年10月26日、上告人のために、本件建物について極度額を4億7400万円とする根抵当権を設定し、その旨の登記をした。

何でそんな事をしたんですかね。

(3)本件賃貸人は、平成29年10月26日、上告人のために、本件建物について極度額を4億7400万円とする根抵当権を設定し、その旨の登記をした。
(4)株式会社バディグループは、平成29年11月、被上告人から弁済期を平成30年4月30日として3000万円を無利息で借り受け、また、被上告人との間で、被上告人に対する建築請負工事に係る債務1000万円について、弁済期を同日とすることを約した。
イ 本件賃貸人は、平成29年11月、被上告人に対し、バディグループの上記アの各債務につき書面により連帯保証をした。
(5)平成30年4月30日、本件各被上告人債権について、本件賃
貸人から10万円の弁済を受け、本件賃貸人との間で残債権合計4980万円の弁済期を平成31年1月15日に変更する旨合意した。
(6)被上告人は、平成31年1月15日、本件賃貸人との間で、本件賃貸借契約における同年4月分から平成32年(令和2年)1月分までの賃料の全額1980万円及び同年2月分から平成34年(令和4年)2月分までの賃料のうち3000万円(各月120万円)の合計4980万円の債務について、期限の利益を放棄した上で、この債務に係る債権を本件各被上告人債権と対当額で相殺する旨の合意をした。
(7)上告人は、令和元年8月7日、大阪地方裁判所に対し、本件根抵当権に基づく物上代位権の行使として、本件賃貸借契約に係る賃料債権のうち、差押命令の送達時に支払期にある分以降4000万円に満つるまでの部分を差押債権とする差押命令の申立てをした。上記申立てに基づき、同月9日、差押命令が発せられ、同月14日、被上告人に送達され、同年12月9日、本件賃貸人に送達された。
(8)被上告人は、令和3年5月19日までに、上告人に対し、本件被差押債権の弁済として、令和2年2月分から令和3年4月分までの各月分につきそれぞれ78万円及び同年5月分につき40万円の合計1210万円を支払った。
(9)上告人は、本件差押命令により、本件賃料債権のうち、本件差押命令が被上告人に送達された後の期間に対応する令和元年9月分から令和3年4月分までの3960万円及び同年5月分のうち40万円の合計4000万円を差し押さえたと主張して、これから上記 の支払分を控除した部分についての支払を求めているところ、被上告人は、本件相殺合意の効力を上告人に対抗することができると主張して争っている。


何かわけ分かりませんね。書いた裁判官がいかにアホか分かります。
家主が物件を貸した。借りた人は、家賃の他に家主に金を貸した。家主はその金で工事を行った。借主に返せないので家賃相殺ということで手打ちちをした。家主は借金の全額を返せなかったので、借りていた建物が差し押さえに遭った。借主は既に払っているんだから、借りる権利があると主張したようです。

最高裁は
(1)抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをする前においては、原則として、賃貸人に対する債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することができる。・・・抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間で、登記後取得債権と将来賃料債権とを直ちに対当額で相殺する旨の合意をしたとしても、当該合意の効力を抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。

要するに抵当権をつけた人と賃借人とを比べると、過去の判決からすると抵当権をつけた人の方が優先されるということのようです。

(2)本件相殺合意の効力が被上告人に対する本件差押命令の送達前に生じたか否かにかかわらず、本件相殺合意により本件将来賃料債権と対当額で消滅することとなる対象債権が本件根抵当権の設定登記の後に取得された本件被上告人債権2であるときは、被上告人は、本件相殺合意の効力を上告人に対抗することはできないこととなる。

へー賃借人が保護されないんですね。それはそれで結構な話ではあります。抵当権を妨害するため、連携して家賃先払いでよそに持って行かれるのを妨害することが可能になりますからね。

第二小法廷判決裁判官全員一致の意見でした。判例主義上これは当然の判断になりますね。下級審が知らなかったということでしょう。

裁判官三浦守の補足意見

本件相殺合意は、本件賃料債権を本件被上告人債権1及び本件被上告人債権2と対当額で相殺する旨を合意したものであるが、相殺に関する充当の合意がされたものとはうかがわれず、平成29年法律第44号による改正前の民法512条489条の規定に照らし、本件各被上告人債権の弁済の利益に鑑みれば、平成30年4月30日に弁済された10万円及び本件賃料債権のうち本件差押命令の送達前の期間に対応する賃料債権990万円は、まず本件被上告人債権1に充当されるものと解される。


おいおい、契約の大前提である同意がないという疑問があるならば、反対意見を出さなきゃ駄目でしょう。

裁判官草野耕一の意見
1 抵当権制度(民法369条以下)には、対象不動産の所有者がその使用収益を継続することを許容しつつ、当該不動産の担保としての価値を活用した金融取引を可能にするという社会的意義があり、抵当権の物上代位(民法372条304条)が不動産の収益の果実といえる賃料請求権にも及ぶことを認めるに至った判例法は、この社会的意義をより強固なものにしたといえるであろう。

2(1) 本件は、抵当権者が物上代位権を行使して将来賃料債権を差し押さえたが、対象不動産の賃借人が同人の保有している登記後取得債権との合意による相殺を主張して当該将来賃料債権の支払を拒否したという事案である(なお、検討の便宜上、以下においては合意による相殺ではなく、法定の相殺を前提として検討を進め、法定の相殺と合意による相殺の違いについての評価は4項で述べる。)。


抵当権は普通に行われる件で重要なのはわかりますが、仮の話をここでする必要はあります?以下は今後の判決に影響せず勝手に何か言ってるに過ぎないので省略します。


裁判長裁判官 三浦 守  はぁ?
裁判官 草野耕一  ボケ
裁判官 岡村和美 妥当
裁判官 尾島 明 妥当

選挙の事前活動禁止は合憲、公示期間にやれよ

2024-03-04 11:15:26 | 日記
令和5(あ)976  公職選挙法違反被告事件
令和5年11月20日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所

相変わらず何が争点になっているのかも分からない1枚判決です

どうもこの事件についての裁判だったようです。NHKの報道です。
前川清成前衆院議員 公職選挙法違反で有罪確定へ
比例代表で復活当選したおととしの衆議院選挙で、公示前に投票を呼びかける文書を送ったとして、公職選挙法違反の罪に問われました。
裁判で前議員側は無罪を主張しましたが、2審の大阪高等裁判所は、ことし7月、「実質的な投票依頼で事前の選挙運動にあたる」などとして1審に続いて罰金30万円の有罪判決を言い渡しました。


前から思っているのですが、選挙公示から2週間で何をするの?有権者はどうやって判断するの?と思っています。

公職選挙法129条、142条1項の各規定について憲法21条、31条違反をいう点は、公職選挙法の上記各規定が憲法21条、31条に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和43年(あ)第2265号同44年4月23日大法廷判決・刑集23巻4号235頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和55年(あ)第1472号同56年7月21日第三小法廷判決・刑集35巻5号568頁、最高裁昭和55年(あ)第1577号同57年3月23日第三小法廷判決・刑集36巻3号339頁参照)から、理由がなく、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって、同法408条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


選挙期間は公職選挙法で決まっており、判例で集会の自由を阻害する規定でもないよとのことです。悪法だとは思いますが、悪法と雖も法律なので、仕方ないでしょう。問題は、何をもって事前活動とするのか、そこが争点になっていないというのは大いに疑問です。普通に、支援者にご挨拶やパーティを開くことがありますし、駅前で演説も普通にありますし。

裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美
裁判官 尾島 明

出演者が麻薬で逮捕、でも芸術支援金は出せよ

2024-02-28 14:30:56 | 日記
令和4(行ヒ)234  助成金不交付決定処分取消請求事件
令和5年11月17日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所

独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長が、劇映画の製作活動につき文化芸術振興費補助金による助成金の交付の申請をした者に対し、上記劇映画には麻薬及び向精神薬取締法違反の罪による有罪判決が確定した者が出演しているので「国の事業による助成金を交付することは、公益性の観点から、適当ではない」としてした、上記助成金を交付しない旨の決定は、当該出演者が上記助成金の交付により直接利益を受ける立場にあるとはいえないなど判示の事情の下においては、上記理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。

NHKの報道です
『宮本から君へ』助成金不交付は不当 最高裁が公益性のあり方を初判断
麻薬取締法違反で有罪が確定した俳優が出演する映画『宮本から君へ』(2019年公開)に対する助成金を不交付とした国の外郭団体の決定の是非が争われた裁判で,11月17日,最高裁判所は「表現の自由に照らして見過ごすことはできない」などとして不交付の決定を取り消す判決を言い渡した。
国の外郭団体・日本芸術文化振興会は,交付すれば「国は薬物犯罪に寛容である」といった誤ったメッセージを発したと受け取られ,税金を原資とする助成金のあり方に対する国民の理解を低下させるおそれなどをあげ,「公益性の観点から適当でない」と主張した。これについて最高裁は,助成金交付の判断にあたって公益を重視できるのは「当該公益が重要なものであり,かつ,当該公益が害される具体的な危険がある場合に限られる」との判断を示した。そして,交付しても「公益が害される具体的な危険があるとはいい難」く,決定は,「重視すべきでない事情を重視した結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたもの」だと断じた。


この公益性が問題になった裁判のようです。

読売新聞の報道です
映画「宮本から君へ」、助成金不交付の決定を最高裁取り消し…製作会社の逆転勝訴が確定
同小法廷は「公益が害されることを理由に広く交付の拒否が行われると、表現行為に 萎縮いしゅく 的な影響が及ぶ可能性がある。表現の自由を保障した憲法21条1項の趣旨に照らして看過しがたい」と指摘。助成するかどうかの判断で公益を重視できるのは、「重要な公益が害される具体的な危険がある場合に限られる」との初判断を示した。
 その上で、助成により出演者が直接利益を受けるわけではなく、交付が「薬物に寛容」とのメッセージになることは想定できないと言及。「助成により公益が害される具体的な危険があるとは言えず、不交付の判断は裁量権の逸脱だ」と結論付けた。


事実確認を見ていきます。
被上告人は、独立行政法人日本芸術文化振興会法及び独立行政法人通則法の定めるところにより設立された独立行政法人である(振興会法2条)。・・・芸術の創造又は普及を図るための公演、展示等の活動に対し資金の支給その他必要な援助を行うこと等の業務を行う旨を規定する。

独立行政法人というのはなんちゃって公務員です。行政が直接支援するには問題がある、かといって放置するのも問題があるということから、この団体を通じて支援する団体です。要するにマネロン的位置づけのなんちゃって法人です。
以前から疑問に思っていたのですが、こういう新作の映画を事実上行政が支援するっていうのはどうなんですかね。こういうのは純粋に民間でやるべきだと思いますが。

(2)理事長は、「文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱」を定め、振興会法14条1項1号の業務として、文化庁長官から交付される文化芸術振興費補助金を財源に、劇映画の製作活動等を対象とする本件助成金を交付している。
ア 本件助成金の交付を受けようとする者は、・・・基金運営委員会は、その下に設けられた分野別の部会及び専門委員会による審査の結果を踏まえて理事長の諮問に対する答申を行うところ、劇映画の場合、企画意図に則した優れた内容の作品であること、スタッフ・キャスト等に高い専門性、新たな創造性が認められること等が上記審査の基準とされる。
イ 交付内定の通知を受けた者は、その内容等を受諾した場合には、助成金交付申請書を理事長に提出する。理事長は、上記申請書を受理したときは、その内容を審査し、本件助成金を交付すべきと認めたときは、その交付決定をし、上記の者に通知する。


思いっきりなんちゃって行政組織でしょう。それにそもそも、芸術性を判断する人ってどういう基準で選ばれているのでしょうか。ひろしまトリエンナーレのように醜悪なものを芸術だと感じる人もいますし、明らかに政治的意図をもって選んでくる人もいます。こういうのは喩えなんちゃって組織であっても行政は絡んではいけない案件だと思いますよ。ましてや時代が代われば、文脈上政治的な意図を持つ者もあり得ますから。それはそれとして

(3)上告人は、平成30年4月頃、本件映画の製作に着手し、同年11月22日付けで、本件映画の製作活動につき、助成金交付要望書を理事長に提出した。理事長は、平成31年3月22日、上記製作活動に係る要望を採択すべき旨の基金運営委員会の答申を受け、同月29日付けで上記製作活動を助成対象活動とする交付内定(以下「本件内定」という。)をし、上告人に通知した。
本件映画の出演者の一人は、コカインを使用したとして、同月12日に逮捕され、本件内定後の令和元年6月18日、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪により懲役1年6月、3年間執行猶予の有罪判決を宣告された。本件有罪判決は、その頃、確定した。


このせいでTVドラマもたまに再放送ができなくなったりしますよね。

理事長は、同月10日付けで、本件映画には本件有罪判決が確定した本件出演者が出演しているので「国の事業による助成金を交付することは、公益性の観点から、適当ではない」として、本件助成金を交付しない旨の本件処分をした。

最高裁は次のように判断しました
(1)本件助成金については、振興会法や補助金等適正化法に具体的な交付の要件等を定める規定がないこと、芸術の創造又は普及を図るための活動に対する援助等により芸術その他の文化の向上に寄与するという本件助成金の趣旨ないし被上告人の目的(振興会法3条)を達成するために限られた財源によって賄われる給付であること、上記の趣旨ないし目的を達成するためにどのような活動を助成の対象とすべきかを適切に判断するには芸術等の実情に通じている必要があること等からすると、その交付に係る判断は、理事長の裁量に委ねられており、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に違法となるものというべきである。

確かに不支給の要件を書いてませんからね。かといって、途中で作品そのものあるいは上映において不法行為や公序良俗に反するような行為があった場合が想定されていないというのは大いに問題があります。

(2)本件助成金を交付すると一般的な公益が害されると認められるときは、そのことを、交付に係る判断において、消極的な事情として考慮することができるものと解される。

そうなりますね。

(3)被上告人が「国は薬物犯罪に寛容である」といった誤ったメッセージを発したと受け取られて薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれが高く、このような事態は、国が行う薬物乱用の防止に向けた取組に逆行するほか、国民の税金を原資とする本件助成金の在り方に対する国民の理解を低下させるおそれがあると主張する。
・・・しかしながら、本件出演者が本件助成金の交付により直接利益を受ける立場にあるとはいえない


でもすでに出演料は発生しているんですよね。今問題になっていますが、再生回数に応じて出演料の支払いとかの問題はどうなるのでしょうか?今回はそういう契約はしていないようですが。

被上告人が上記のようなメッセージを発したと受け取られるなどということ自体、本件出演者の知名度や演ずる役の重要性にかかわらず、にわかに想定し難い上、これにより直ちに薬物に対する許容的な態度が一般に広まり薬物を使用する者等が増加するという根拠も見当たらないから、薬物乱用の防止という公益が害される具体的な危険があるとはいい難い。

裁判所としては刑が確定しているし服役中なのだから、これ以上の制裁は必要ないだろう。しかも、役者だけでなくその他の政策に関わった人が巻き込まれるのは宜しくないと判断しているのでしょう。

結論
以上によれば、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法というべきである。

第二小法廷全員一致でした。
裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

この判決に従うと、今後芸能人が麻薬で捕まってもTVドラマや番組はそのまま流してもよいことになりますね。なんか微妙だな。
というか、出演契約のときにこの問題を一部書き込むか保険に入れなければ駄目でしょうね。

で、この裁判に直接の論点になっていませんが、芸術の支援って国家・自治体が支援するってのは憲法89条違反だと思うんですよ。ただちにこの支援に関する法律は廃止すべきです。

犯人引き渡し法は憲法違反ではないが、判決内容が頭に入ってこない雑な判決文

2024-02-26 21:50:31 | 日記
令和5(し)735  仮拘禁許可状の発付に対する特別抗告事件
令和5年11月6日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所
 逃亡犯罪人引渡法に基づく仮拘禁許可状の発付に対する不服申立ての許否


また1枚判決文ではないですが、限りなく1枚に収まる判決文です。
事実認定も何もなく、ただこれだけ

本件抗告の趣意は、東京高等裁判所裁判官がした仮拘禁許可状の発付(以下「本件発付」という。)に対して、刑訴法433条の準用により刑訴法の特別抗告が許されると解すべきであり、そう解さないときは憲法34条に違反する旨主張する。しかしながら、本件発付は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所裁判官が行った特別の行為であって、刑訴法上の決定又は命令でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立てを認める規定が置かれていないのであるから、本件発付に対しては不服申立てをすることは許されないと解すべきであり、したがって、本件申立ては不適法である。また、本件発付の性質に鑑みると、このように解しても憲法34条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和22年(れ)第43号同23年3月10日判決・刑集2巻3号175頁、昭和26年(ク)第109号同35年7月6日決定・民集14巻9号1657頁、昭和36年(ク)第419号同40年6月30日決定・民集19巻4号1089頁、昭和37年(ク)第243号同40年6月30日決定・民集19巻4号1114頁、昭和39年(ク)第114号同41年3月2日決定・民集20巻3号360頁、昭和37年(ク)第64号同41年12月27日決定・民集20巻10号2279頁、昭和42年(し)第78号同44年12月3日決定・刑集23巻12号1525頁、昭和41年(ク)第402号同45年6月24日決定・民集24巻6号610頁、昭和40年(ク)第464号同45年12月16日決定・民集24巻13号2099頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁平成2年(し)第52号同年4月24日第一小法廷決定・刑集44巻3号301頁、最高裁平成6年(し)第111号同年- 2 -7月18日第一小法廷決定・裁判集刑事263号891頁、最高裁平成26年(行ト)第55号同年8月19日第二小法廷決定・裁判集民事247号147頁、最高裁令和元年(し)第699号同年11月12日第二小法廷決定・裁判集刑事327号1頁参照)。

何のことか分かります?メモ書きですらもう少しちゃんと書きますよ。


裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

全員やる気なさすぎ

ケイマンの議決権100%の会社経由で取引は課税対象

2024-02-20 09:32:08 | 日記
令和4(行ヒ)228  法人税更正処分等取消請求事件
令和5年11月6日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所
 1 内国法人に係る特定外国子会社等の事業年度の途中で当該特定外国子会社等の発行する優先出資証券が償還され、当該事業年度終了の時には、当該特定外国子会社等の発行済株式等が、当該内国法人が有し剰余金の配当等が予定されていない普通株式のみとなった場合において、当該特定外国子会社等の事業年度を当該優先出資証券の償還日の前日までとするなどの方法を採る余地もあったなど判示の事情の下では、租税特別措置法施行令(平成29年政令第114号による改正前のもの)39条の16第1項を適用することができないとした原審の判断には、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの)66条の6第1項の解釈適用を誤った違法がある。
2 増額更正処分後に国税通則法23条1項の規定による更正の請求をし、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた者は、当該通知処分の取消しを求める訴えの利益を有する。


日経新聞の報道です
みずほ銀行が逆転敗訴 租税回避地巡る課税処分、最高裁
みずほ銀行が租税回避地(タックスヘイブン)を巡る課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は6日、課税処分を取り消した二審・東京高裁判決を破棄し、処分は適法とする判断を示した。みずほ銀側の逆転敗訴が確定した。裁判官4人全員一致の結論。
一、二審判決などによると、みずほ銀は自己資本の増強のため、2008年のリーマン・ショック後にタックスヘイブンのケイマン諸島に複数の特別目的会社(SPC)を設立した。SPCが有価証券(優先出資証券)を発行することで、投資家から約3600億円を集めるスキームだった。
集めた資金を返還する過程でSPCに利益が残ったが、みずほ銀は利益は同行に帰属しないとして課税所得0円で税務申告した。
東京国税局は「利益は銀行本体に合算すべきだ」と問題視した。租税回避を防ぐための「タックスヘイブン対策税制」を適用し、16年3月期に利益約84億円の申告漏れを指摘し、過少申告加算税を含め約20億円の追徴課税処分をした。


では、概要を見ていきます。
1 租税特別措置法(66条の6第1項の規定により、ケイマン諸島において設立された被上告人の子会社の後記2の課税対象金額に相当する金額が、被上告人の本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けた。

所謂タックスヘイブンを経由して取引したようです。租税回避についてはどこの国も苦労しているようで、条約で締め上げつつあるようです。

2 関係法令
措置法66条の6第1項は、同項各号に掲げる内国法人に係る特定外国子会社等が、各事業年度において適用対象金額を有する場合には、その適用対象金額のうち、その内国法人の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等の数に対応するものとしてその株式等の請求権の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額に相当する金額を、その内国法人の所得の金額の計算上、益金の額に算入する旨を規定する。

ア 本件各子会社は、にケイマン諸島の法令に基づいて設立された外国法人である。
イ 平成20年12月29日、額面1億円の優先出資証券3550口を発行し、投資家に販売した。原則として、普通株主に優先して配当受領権を有する一方、議決権を有しな
いものとされていた。


法人格否認の法理じゃないですか。

(2)平成27年6月30日、被上告人から本件劣後ローンの全額の返済を受けた上で、これを原資として、本件優先出資証券に係る出資金及び配当金をMCIに送金し、本件優先出資証券を償還した。
(3)ア 被上告人は、本件各子会社の本件各子会社事業年度終了の時における発行済株式等のうちに被上告人の有する本件各子会社の請求権勘案保有株式等の占める割合は0%であり、したがって本件各子会社事業年度における課税対象金額は0円であるとして、本件事業年度に係る法人税等の申告をした。
イ 処分行政庁は、平成29年11月7日付けで、被上告人に対し、本件保有株式等割合は100%であり、本件各子会社の適用対象金額の全額が課税対象金額となるなどとし、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。


やはり法人格否認の法理として課税すると出したようですね。

これについて最高裁は
(1)本件では、前記事実関係等の下において本件規定を適用することが本件委任規定の委任の範囲を逸脱するか否かが問題となるところ、この点を判断するに当たり、まず、本件規定の内容が、一般に、本件委任規定の趣旨に適合するか否かにつき検討する。

実質100%子会社ですからね、委託というより自分でやったんじゃないの?という指摘です。

(2)では同じようなことが書いてありますので省略

結論
(3)したがって、前記事実関係等の下において本件規定を適用することができないとした原審の判断には、本件委任規定の解釈適用を誤った違法がある。

要するに課税対象ですよとなりました。

裁判官草野耕一の補足意見
(1)当該外国法人がその事業年度終了時とは異なる日を基準日として剰余金の配当等を支払ったところ、これを受け取った当該外国法人の株主がその直後に到来する事業年度終了時にはもはや当該外国法人の株主ではない場合において、①当該外国法人が上記基準日においては特定外国子会社等であり、受取株主が当該特定外国子会社等に係る内国法人であるとすれば、当該配当の原資として用いられた当期純利益の額につき、経済実態からすれば、当該特定親会社に対し合算課税をすることが相当であるにもかかわらず、合算課税をなし得ない事態が発生し得る一方、②当該外国法人が直近年度末においては特定外国子会社等であるが、受取株主は特定親会社と資本関係のない者であるとすれば、配当原資金額につき、経済実態からすれば、当該特定親会社に対し合算課税をすることは相当でないにもかかわらず、合算課税がされる事態が発生し得るところ、

何ですかこの文章は。これ1文ですよ。相手に理解させようとする努力が全く見えません。しかも、外国法人が訴えてきた場合、こんなごみ文章を出すのですか?どうやって翻訳しろと?中学校からやり直せと言いたくなりますね。

会計期間の途中で配当金が出たとする。これを受け取った会社は会計年度末には株を売り飛ばしていたとする。このときに海外子会社としていいのか?と言いたいようです。

(2)本件委任規定を受けて政令の定めを設けるに当たり、「事業年度」の意義につき、特定外国子会社等が、その財産及び損益の計算の単位となる期間の末日以外の日を基準日として配当を行った場合には、当該会計期間の始期から当該配当の基準日までの期間をもって一つの事業年度とみなした上で、その翌日から当該会計期間の末日までの期間をもって次の事業年度とみなすことにすれば、過少課税も過剰課税も回避することができる。

認めたら脱税出来ちゃうから駄目よねと言う事のようです。

私は法廷意見の結論及び理由付けに全面的に賛成するものである。

全員一致でした
裁判長裁判官 草野耕一 論旨はともかく日本語をきちんとわかりやすくかけ
裁判官 三浦 守
裁判官 岡村和美
裁判官 尾島 明