自分で確かめる!! ~比良の大蛇編~ | ★織田信長の夢★ 鳴かぬなら 鳴ける世つくろう ほととぎす

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□■自分で確かめる ~比良の大蛇編~■□


1556年(弘治2年)1月           信長23歳


信長は、どこか疑わしい物事や胡散臭い風聞を容易に信じず、自ら直接確かめないと納得しない性分を持っていたようだ。
客観的な立場で物事を直接確認し、適切な処置を行うことは、人々をまとめる上で大切なことである。
信長は、身を持ってそれを度々行っている。
それらのエピソードを今後、何パターンか紹介していこうと思う。

この「比良の大蛇」では、あまが池という池に恐ろしい大蛇がいるという噂を聞いた信長が、近隣の農民を集めて、池の水を桶で掻き出させて、ある程度水量が減った所で、信長本人が脇差を口に池に潜って大蛇を探したが、いなかった。という話である。

池の水を掻き出させる発想や、一国の主が自分で潜って確かめに行くところも、冷静に考えると凄まじい。(笑)

以下、『信長公記 首巻』を抜粋する。


①現代語訳

蛇がえのこと

ここに不思議なことがあった。
尾張国の中心である、清洲より東へ五十町にある、佐々内蔵助成政の居城、比良城の東、南北に長い大きな堤がある。
その西にあまが池という、恐ろしい蛇がいると言い伝えられている池がある。
また、堤の外の東側は三十町も平坦な芦原が広がっている。

一月中旬、安食村福徳の郷の又左衛門という者が雨が降る夕暮れ時に堤を通りかかったところ、太さが一抱えもありそうな黒いものを見た。
その胴体は堤上にあって、首は堤を越し、もう少しであまが池に達するところであった。
人の音を聞いて、首を上げた。
顔は鹿のようであった。
目は星のように光り輝き、舌を出したのを見ると真っ赤で人間の手の平を開いたようだった。
目と舌とが光っているのを見て、身の毛がよだち、恐ろしさのあまり、もと来た方へ逃げ去った。
比良から大野木へ来て、宿に帰り、このことを人に語ったので、話は広く知れ渡った。

その話は信長の耳に入り、一月下旬に例の又左衛門を召し出して、直接話を聞き、「明日、蛇がえ(池の水を掻き出して蛇を捕獲すること)をしよう」と言い出した。
比良の郷の大野木村、高田五郷、安食村、味鏡村の百姓たちに、水替え桶、鋤、鍬を持って集まるよう命じた。

数百の桶を立て並べ、あまが池の四方から取り掛かった。
四時間ほど水替えをさせたけれども、水は七割方に減ったがそれ以上やっても同じだった。

すると信長は、

「ならば信長が水中に入って、蛇を見てやろう」

と言って、脇差を口にくわえ、池に入り、しばらくしてから上がり、「蛇らしいものはおらぬ」と言った。
鵜左衛門という、水錬に長けた者に、「もう一度入って見て来い」と命じ、自分のあとに入れて探させたが見付からなかった。

そういう訳で、信長はその地より清州へ帰ったのであった。


②書き下し文

蛇かえの事

一、爰(ここ)に希異の事あり。
尾州国中、清州より五十町東、佐次蔵人佐居城、比良の城の東北、南へ長き大堤これある内、西にあまが池とて、おそろしき蛇池と申し伝へたるいけあり。
叉、堤より外、東は三十町計り、へいへいとしたる葭原なり。

正月中旬、安食村福徳の郷、又左衛門と申す者、雨の降りたる暮れがたに、堤を罷り通り候ところ、ふとさは一かひ程もあるべき黒き物、同躰は堤に候て、首は堤をこし候て、漸あまり、池へ望み候。
人音を聞いて、首を上げ候。
つらは、鹿のつらの如くなり。
眼は星の如く光りかがやく。
舌を出したるは紅の如くにて、手のひらきたる如くなり。
眼と舌との光りたる、是れを見て、身の毛よだち、おそろしさのまま、あとへ逃げ去り候ひき、比良より大野木へまいり候て、宿へ罷り帰り、此の由、人に語る程に、隠れなし。

上総介殿(信長)聞し召し及ばれ、正月下旬、彼の又左衛門をめしよせられ、直に御尋ねなされ、翌日、蛇がへと仰せ出され、比良の郷大野木村、高田五郷、安食村、味鏡村百姓ども、水かへ、つるべ、鋤、鍬持ちより候へと仰せ出たされ、数百挺の釣瓶を立てならべ、あまが池四方より立ち渡り、二時(ふたとき)計りかへさせられ候へども、池の内、水七分計りになつて、何どかへ候へども同篇なり。
然るところ、信長水中へ入り、蛇を御覧あるべきの由にて、御脇差を御口にくわへられ、池へ御入り候て、暫が程候て、あがり給ふ。
中なか、蛇と覚しき物は候はず。鵜左衛門と申し候て、よく水に鍛錬したる者、是れ又、入り候て見よとて、御跡へ入り見申し候、中なか御座なく候。
然る間、是れより信長、清州へ帰り給ふなり。


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この話の舞台の池は蛇池神社と共に現存していて、名古屋市西区山田町字比良にある。

下記URLより蛇池の画像が見れます。
http://network2010.org/article/1330
http://chuplus.jp/blog/article/detail.php?comment_id=1012&comment_sub_id=0&category_id=233
 
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参考文献

・『信長公記 首巻』 太田牛一 著
・『現代語訳 信長公記』 太田牛一 著、中川太古 翻訳、中経出版、2013年 

 

 

 

 

 


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