MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯627 住んでみたい街ランキング

2016年10月22日 | うんちく・小ネタ


 住友不動産や三井不動産レジデンシャルなどマンション分譲大手7社は、9月29日、毎年恒例の、マンションの購入希望者に聞いた「住んでみたい街」(駅名)に関するアンケート調査の結果を発表しました。

 調査は今年7月、新築マンションの情報サイト「メジャー7」のインターネット会員である20歳以上の男女3553人に対して行われたものです。

 報道によれば、調査の結果、首都圏では「恵比寿」(渋谷区)が2年連続で1位となり、2014年まで連続で1位を獲得していた「吉祥寺」(武蔵野市)が2015年に続いて2位、続いて「自由が丘」(目黒区)が昨年の5位から2つランクアップしトップ3入りを果たしたということです。

 また、選択理由としては「交通の便の良さ」や「飲食店の充実」などの都会的な機能性を挙げる人が多く、近年の再開発などで街並みが大きく変わった目黒(品川区:12位→4位)、品川(港区:14位→8位)、武蔵小杉(川崎市:13位→9位)が新たにトップ10に入るなど、新しい街の躍進が目立った形になっているようです。

 さて、せっかくなので、いわゆる「街歩き」を趣味の一つとしている私としても、この機会にそれぞれの街が評価された理由を、(それこそ自分勝手に)考えてみたいと思います。

 まず、1位となった恵比寿です。

 正直言って、1990年代半ばに再開発が行われる以前、恵比寿駅周辺は山手線の南西部の中でもあまりパットしないエリアであったことは間違いありません。

 しかし、もともと駅の南側に広がっていた広大なビール工場跡地がガーデンプレイスとして生まれ変わって以降、地域の表情は大きく変わりました。現在では、高級感のあるショッピングモールや高級高層マンション群を持つ都内有数のエリアとしてすっかり定着した感があります。

 さらに、駅を中心に、JRの線路の西側には(北関東の人間には少しハードルの高い)代官山などのおしゃれな街並みが位置しており、少し歩けば北は渋谷の繁華街に、東は広尾の住宅街につづくという多彩さが恵比寿という街の魅力と言えるかもしれません。

 一方、2位の吉祥寺はと言えば、都心からはやや離れるものの新宿や渋谷へ20分程度とアクセスは決して悪くなく、井の頭公園など郊外であればこその緑の多さやゆったり感が「生活」にゆとりを与えてくれる(ファミリー層の)街と言えるかもしれません。

 駅を中心に商店街などの買い物環境も充実していて、リアルな居住環境として考えた場合この街が選ばれつづけているのも、ある意味納得がいくような気がします。

 今回3位にランクインしたのが、目黒区の自由が丘です。

 この街は、良い意味でも(また悪い意味でも)東急沿線のモデルとなるような、いわゆるプチ・ブルジョア的な「ほわっと」した家庭的でやさしい印象を与えてくれます。

 城南の環七と環八のほぼ中間に位置し、北は世田谷の駒沢公園、南は田園調布の高級住宅街と、地理的なステータスが高い割にマンションの分譲価格などにはお買い得感もあって、特に(ファッション誌に描かれるような)ハイソな生活を目指す女性に人気があるのも理解できます。

 次に、前回の12位から大きくランクアップし、堂々の4位に食い込んだのが目黒の街です。

 都内に長く暮らす者の目から見たこの街には、(これまで)目蒲線の起点となる目黒駅から目黒通りを目黒川に向かって下っていくと、とんかつ屋(とんき)や大鳥神社があるという(その程度の)ずいぶんと地味な印象しかありませんでした。

 しかし、数年前に地下鉄南北線や都営三田線の乗り入れ赤坂や麻布方面からのアクセスが格段に向上して以降、目黒駅周辺のイメージはずいぶん変わりつつあるようです。

 言われてみれば、もともと目黒駅の東側は上大崎の瀟洒な住宅街でした。目黒通りを港区方面に進めば10分も歩かないうちに白金の庭園博物館や自然観察公園が視野に入るなど、立地的には山の手の一角を占めているのも事実です。
 
 さらに現在では、目黒駅の東側の区域で再開発が始まっており、高層マンションなどの供給も拡大していることから、ここに来て目黒エリアのステータスは急激に上がりつつあると言えるでしょう。

 第5位は(何と)二子玉川です。

 かつて多摩川をはさんで「二子村」と「玉川村」の2村があったこのエリアは、(地名からも分かるように)多摩川の両岸の開発により生まれた全く新しい街と言えます。

 渋谷まで急行で10分という利便性を考えれば、少し歩けば多摩川の河川敷の視界が広がる自然にあふれたロケーションは、若い世代の目に子育てなどに最適な街と映るのは当然かもしれません。

 「都内」と呼ぶには少し苦しい感じもしますが、高島屋を中心とした駅前のショッピングエリアの都会的な雰囲気は、いわゆるニューファミリーのイメージにぴったりはまるのはよく理解できます。

 6位の中目黒は、もしかしたら都内(特に渋谷、新宿などの山手線の西側)に生活の拠点を置く人以外にはあまり縁のない街かもしれません。実際、住宅地として注目されるようになったのは、ごく最近のことと言えるでしょう。

 地下鉄日比谷線の終着点として山の手通りを跨ぐ中目黒駅周辺は、(そういう意味では)これまで目黒川沿いの目立たない存在として見過ごされてきたのかもしれません。

 しかし、よく見れば駅周辺の商店などは皆なかなか個性的で、都心に近いとはいえ物件もまだまだリーズナブル。少し余裕のある独身の若者や若いカップルが楽しく暮らせる街と言えるのではないでしょうか。

 さて、7位はようやく表参道です。

 (押しも押されもしない)日本を代表する若者の街「表参道」の人気も、ついに7位にまで落ち込んでしまったというべきでしょうか。

 かつて、アイビーファッションに身を固めたティーンエイジャーが跋扈し、「竹の子族」が踊り狂い、中高生の修学旅行生でにぎわっていた表参道も、今ではすっかり落ち着いた大人の街に変貌しています。実際、表参道がファッショナブルな街であることには変わりはなく、青山通りとの交差点を中心にお洒落な人々が街歩きを楽しんでいるのも事実です。

 結局、2LDKの中古マンションでも1億円以上という価格帯が、「住んでみたい」というにはあまりに現実味を欠いているということかもしれません。昭和30年代から日本のファッションの発信地であった青山周辺は、若者たちにとっては既に「暮らす場所」ではなく、出かけるところになっているということでしょう。

 さて、ランキングはその後、8位品川、9位武蔵小杉、10位横浜(って言ってもずいぶん広いですが)と続きます。街は世につれ、世は街につれ…という感じもしますが、少し前の昭和の頃の人ならば、「なんで品川?」「武蔵小杉ってどこよ?」と驚くかもしれません。

 また、こうして見ていくと、住みたい街が山手線の南西部に偏っていることにも改めて驚かされます。

 浅草近辺や門前仲町、日本橋から深川にかけての一帯や今流行りの谷根千など、都心に近い北東部にも江戸情緒を感じさせるいい街がたくさんあるのですが、今どきの若者たちにはなかなか「住みたい」と思わせるアピール力に欠けるのでしょうか。

 いずれにしても、人気がある街にはそれなりの理由があるはず。それぞれ地域の人々やデベロッパーが街づくりに知恵と工夫を凝らし、魅力づくりに成功した事例と言えるでしょう。

 例え、聞いたこと、行ったことのない街でも、そこで暮らすつもりになって小一時間の街歩きをするのは楽しいものです。

 沿線を通った際にはぜひ途中下車でもしてみて、そこで暮らす人たちの姿を眺めながら、散歩がてらしばしぶらっとしてみてはいかがでしょうか。




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