ババモンが、負傷のため、いろいろなことが不自由になっている。

 

ババモン「歩かなあかんねん。歩けへんようになったら寝たきりになる。寝たきりになったら死ぬ。」

 

と、いつも恐れているババモンが、急に「廊下に手すりをつけたい」と言い出した。

 

しかし、ババモンの気持ちは、「歩けないから手すりをつける」のではなく、「歩く運動をするために、手すりをつける」という、誇り高く、前向きなものだった。

 

自分で上手く理由づけして、自分の中の「私は介護が必要な年寄りではない」というプライドと折り合いをつけようとしているのだろう。

 

しかし、購入してつける手すりは、介護保険の申請などで、時間がかかるらしい。「レンタルもある」と言ってしまった私は、ばかだった。

 

「思い立ったら待てない」ババモンは、それならレンタルでもいいという。

 

 

レンタル手すりは、一度、ババモンがインフルで歩けなくなったときに、私の独断でつけて、断固拒否され、2日で取り外してもらった経緯があるので、考えただけで恐ろしい。ババモンは、あんなに怒り狂ったのに、レンタル手すりの件を覚えていない。

 

私「天井までの棒もあるし、すごく大きくて、いやになるかもしれへんよ。やっぱりやめとこか。」

 

と私は何度も確認した。

 

しかし、ババモンは、自分自身で、福祉用具の業者さんに「ここに取り付けてください」と頼んだのだ。

 

私は「ババモンが本当に、レンタル手すりのことがわかっているのか?」と不安でいっぱいだ。レンタル手すりと、介護保険で購入して工事で取り付ける手すりの違いを、ババモンに何度も説明してもよくわからないようだ。

 

ババモン「手すりはいつ来るん?はよつけな、(手すりをつける前に)死んでしまうやん。」

 

「もしかしたら、今回は、レンタル手すりを受け入れる気なのかもしれない」と、私は楽観的に考えることにし、最終的に取り付けをお願いした。

 

 

しかし、取り付けに来てもらったときに、すでにババモンは機嫌が悪い。

 

ババモン「私は、まだまだしっかり歩けるから、手すりなんていらんねん。」

 

(前日、確認したときも、つけてもらう気やったやん!)

 

私「やっぱり、取り付けるの断ろうか?」

 

ババモン「そんなん、今さら断ったら悪いやん!」

 

(まだ、取り付ける前の方が、ましやで!)

 

手すりを取り付けてもらっている間、ずっと不機嫌なババモン。

 

 

業者の方が帰られた途端、ババモンの怒りが爆発した。

 

ババモン「こんな大きなもん持ってきて。こんなん寝たきりの年寄りのためのものやん!」

 

(寝たきりやったら、手すりなんていらんわ!)

 

私「今やったら間に合うから、やっぱり取り外してもらおうか?」

 

ババモン「そんなん、すぐに取り外してもらったら、気い悪いやん。あんたも、それぐらいのことわかるやろ。えー、わからんの?」

 

私「お母さんが、手すり頼みたい、って言ったんやで。」

 

ババモン「そんなん頼んだ覚えないわ!」

 

くそバ〇ア!! × 100乗

 

 

ババモン「あんたは、あほやから、だまされてるねん。業者なんて、金儲けのために,

いろいろ持ってきはるんやで!」

 

と、まるで、業者さんが勝手に持ってきたように言う。

 

 

手すりを見るたび、毎日、こんなことを言われるのが嫌なので、業者さんに頼みこんで、2日後にまた引き取りに来てもらった。申し訳ないし、情けない。

 

もう2度と、手すりなんかつけんとこね! もう勝手にしてね!

 

全てを投げ出して、どこかに逃げたい!と思った一日だった。