ビフォア・サンセット 映画のあらすじ(ネタバレ)、英語のセリフと評価感想
BEFORE SUNSET(2004)
ビフォア・サンセット
「ビフォア・サンライズ」(邦題「恋人までの距離(ディスタンス)」)の続編です。
前作では旅先で出会った若い男女の、一夜限りの恋が描かれていました。
この映画はそれから9年後に二人が再会するお話です。
この映画はやはり単品で観るより、前作を観てから観ることをおすすめしたいです。
それもできればしばらく間を置いてから観た方が(9年とは言わずとも)、二人が過ごした年月の重みが実感として感じられて、グッと胸に響くと思います。
映画のあらすじ(ネタバレ注意)
前作「ビフォア・サンライズ」で、アメリカ人の青年ジェシー(イーサン・ホーク)は、ヨーロッパを列車で旅している途中に、フランス人の女性セリーヌ(ジュリー・デュルピー)に出会いました。
彼らは一緒にウィーンの街を散策して、恋に落ち、夜明けまでともに過ごします。
そして半年後にウィーンで再会しようと約束をして、別れたのでした。
この映画はそれから9年後が描かれています。
今では30代になった二人。
結局、ウィーンでの再会の約束は果たされなかったことが明らかになります。
作家になったジェシーは、セリーヌと過ごしたウィーンでの一夜を題材にした小説を書き、それがベストセラーに。
パリの本屋に招かれてインタビューを受けていた時に、セリーヌが現れ、二人は9年ぶりに再会を果たします。
二人は再会を喜び合い、一緒にパリの街を歩き出します。
9年前にウィーンの街を歩いた時のように。
あの頃と同じように、二人は9年も離れていたことが嘘のように、自然に打ち解けて、今までの歳月を埋め合わせるように会話をします。
美しいパリの街を背景に、二人の心の機微が会話を通して表されます。
前作と同じ演出なのですが、前作の時は他にも登場人物が出てきたのに対し、今回はより一層、二人の「会話の流れ」に純化されていました。
主役を演じる二人、イーサン・ホークとジュリー・デュルピーは、前作とは顔つきが変化していて、二人がそれぞれに経てきた歳月を思い起こさせます。
英語のセリフ
ジェシーとセリーヌは、とても久しぶりに再会したのに、9年前と同じように自然に打ち解けあい、親しく話をします。
ジェシーはセリーヌに「あれから9年経ったなんて信じられないね」と言います。
その英語のセリフです。
Vienna ウィーン
impossible 不可能な
二人が語り合う中で、9年前に過ごした一夜のことが、それぞれの人生にとって特別な思い出となっていたことが明らかになります。
ジェシーとセリーヌのセリフです。
entire 全部の
eintire years で 全ての年月
「全ての年月よりもあの夜のことをよく覚えている」
このジェシーのセリフはすごいですよね。
人生の中で最も重要な出来事だった、と言っているようなもの。
それに対して「私もよ」と答えるセリーヌ。
半年後に再会できなかった悲しみが、二人の心にずっと重くのしかかっていたことがわかります。
でもそれはやむにやまれぬ事情があってのことでした。
ジェシーはこう言います。
in a way to~ ~するための方法として
そしてジェシーは望みどおり、セリーヌを見つけることができたのでした。
でも二人は話せば話すほど、お互いが特別な絆に結ばれていることを感じて、9年間別々の人生を歩んできたことをやるせなく思います。
もし9年前に約束どおり半年後にウィーンで再会できていれば、きっと人生は違ったものになったのに、とジェシーは悔しそうに言います。
あのとき連絡先を交換しなかったことを後悔します。
9年前の若かった二人は、出会いをロマンティックなもので終わらせるために、わざと連絡先を交換しなかったのでした。
screw up 台無しにする
「若いときには、人生においてつながりのある人はたくさんいると思っている。でも後になって、それはほんの少ししか起こらないことだと気がつく」
セリーヌのこのセリフが印象的でした。
彼女が connect というのは、深い心の絆を感じることのできる相手のことを意味して言っているのだと思います。
「僕たちはそれを台無しにしてしまう」
ジェシーのこのセリフに、切なくなりました。
深い心の絆を感じた相手と、つながりを失ってしまった痛み。
二人は9年ぶりに再会して、改めてその喪失感に打ちのめされていきます。
セリーヌには豊富な恋愛経験があるようですが、ジェシーに対するのと同じ気持ちを他の男性には抱くことができないようです。
セリーヌのセリフです。
一方、ジェシーは今では家庭を持っていますが、その結婚生活は幸せではないと打ち明けます。
彼もまた、セリーヌと再会できなかった日にロマンティックな恋愛感情を全て諦めてしまったと言います。
9年前にともに過ごした一夜が、お互いの心とそして人生に、どれだけの重みを持っていたか・・・
二人は同じ思いを確かめ合うのですが、時はすでに遅すぎて、どうすることもできない。
ジェシーは幼い息子のいる家庭を捨てることなどできません。
そして彼が飛行機に乗る時間が刻一刻と迫り、二人にはごく僅かな時間しか残されていなかった。
お互いに「愛している」とは言えない二人。
彼らの気持ちは、ジェシーのセリーヌが出てくる夢の話と、セリーヌがギターを弾きながら歌う歌によって、痛いほどに伝わってきます。
特にセリーヌの歌うシーンがすごく良かったです!
彼女の歌の一節からの引用です。
「私の心は死ぬ時まであなたの心とともにある」
この最後の歌詞によって、クールでチャーミングで知的なセリーヌの、秘められた激しい情熱的な思いがあらわになったようで、ドキッとしました。
「好き」とか「愛している」とか言葉で告白するよりも、胸の内を切実に伝えていると思います…。
ニーナ・シモンの音楽とともに、ゆっくりとフェイドアウトしていくエンディングが、切なくて味わい深い余韻を残します。