鬼神お父さんは、決断に先駆けてその思考をめぐらせるとき、

決まって公園のベンチに腰掛け、缶コーヒー片手にタバコの紫煙をくゆらすという。

ボクも、今後のことについていくばくかの考えをまとめてみたくなり、公園とベンチを探したが、ここは駅前の繁華街で公園は見当たらず、ひとまず入ったマック（関西ではマクドという）で、はからずも息子の残像と対面することとなる。

人は重要な局面に直面したとき、先にあの世に旅立った大切な人が夢枕に立つ、というが、

ボクの場合、生き別れとなっている息子が、数年前のいでたちで現われ、悩めるボクの背中を押してくれることとなった。

前回記事はコチラ 

足早に不動産屋まで戻る。

・この地に残る　or NOT
・残るならＡ物件？　それともＢ物件？
・この地に残って、今後の人生、何をどーする？
 

　さっきまで迷っていた項目に、答えは出ていた。

Ａさん、広い方のＡ物件にするよ。

これからもこの地でいろいろとやるべきことがあるんだ。

トンボさん、わぁっかりましたぁ～　、ではぁ～　管理会社に連絡しますねぇ～

語尾の長くなりがちなＡさんは、Ａ物件の管理会社に電話をかけると、素早くＦＡＸで申込書まで取り寄せ、

トンボさん～

ここと、ここに記入いただいてぇ～

ここと、ここに捺印を御願いしますぅ～

デキパキと事務手続きを進めていく。

Ａ物件は、もともと、ボクがＷＥＢで探してきたもので、

物件情報に　「エアコン完備」と記されてあったが、内覧した際、

エアコンがないのをボクもＡさんも確認していた。

エアコンはなかったですね？

そうですねぇ～　なかったですねぇ～

トンボさん、エアコンなかったら、申込みやめますかぁ～

はいぃ～、ボクは裁判所と弁護士とウソつきがキライですからぁ～

Ａさんは、奥に姿を消し、５分後に戻ってきて、こう切り出した。

トンボさん～、エアコンつけてもらえることになりましたぁ～

なので、このまま契約進めますねぇ～

語尾が長く、スローなトークのＡさんではあるが、判断と行動は早かった。

１５分後、ボクは、目の前に出された全ての書類に記入/押印し、申込みを完了させた。

トンボさん、それではぁ～、入居の審査に数日かかると思いますがぁ～

問題ないはずなんでぇ～、こちらからの連絡をぉ～、お待ちくださいねぇ～

今日はぁ～、ありがとうございまスたぁ～

＊＊

自宅に戻ったボクは、サウナを求めてジムに向かう支度にかかる。

クルマに飛び乗ると、ＬＩＮＥを起動し、中日本のころさんにメッセージを送信。

転居先ほぼ確定。
現住所から直線距離で６００ｍ。
ミソ汁が冷める距離だけど、もう恋なんてしないなんて言わないよ、絶対。

＊＊

ジムに向かってアクセルを踏み込む。

自宅を買いたいという家族が現われ、ここに賃借しないか？という大家が現る。

サウナで一息つこう。

引越しのプランを立てる必要がある。

思いっきりサウナで蒸されて、水風呂でキンキンに冷やされよう・・・

平成２７年暮れ。

ボクは賃貸アパートに入居の申込みを済ませ、いよいよ自宅売却の最終局面をむかえることとなった。

＜其の２０＞　に続く

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