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風のゆくえには~たずさえて28-3(菜美子視点)

2016年09月20日 02時37分59秒 | 風のゆくえには~たずさえて

 結局、病院から一言も言葉を発せずマンションまで帰ってきた。「何か食べますか?」という問いにも、首を横に振っただけ。そんな我儘を許してもらえることも有り難い。

 そんな中、部屋に入るなり、山崎さんはポンと手を打った。

「そうだ。お風呂、入りますか?」

 ニコニコの山崎さん。でも、5秒後、

「あ、いや……っ」

 ハッとしたように、真っ赤になってブンブン手を振りはじめた。

「いえ、あの、決してそういう意味では……っ」
「大丈夫です。わかってます」

 嫌なことや落ち込むことがあると、熱いお風呂に入る、と、以前話したことを覚えていてくれたのだろう。

 肩の力がふっと抜ける。自分を見ていてくれる人がいるということが、なんて心強いことか。
 子供の頃は、それが母であり父であり、ヒロ兄だった。

 父親も祖父母もいない樹理亜にとっては、唯一母がそんな存在であるはずだった。


「山崎さん」
 聞いたら失礼かな、と思い、今まで聞けなかったこと。今、どうしても聞きたい。

「聞いてもいいでしょうか?」
「なんでしょう?」

 きょとん、とした山崎さんをふりあおぐ。

「あの……」
 前々から思っていた。

「山崎さんは……もしかして、樹理ちゃんの気持ちが実感としてわかってたり、します?」

 山崎さんは目をみひらき、

「…………はい」

 数秒の間の後、静かにうなずいた。



***


 山崎さんが話してくれたことや、樹理亜の今後のことを考えていたら、いつもよりも更に長風呂になってしまった。もう茹でタコだ。

 お風呂から出てリビングに入っていくと、ソファに座って何かの書類を見ている山崎さんの姿が目に入った。どうやら仕事を持ち帰っていたようだ。何だかくすぐったいような不思議な光景。

 山崎さんは、肩にタオルをかけたままぽやっとしている私に気がつくと、

「髪、乾かしますか?」

 優しく微笑んでくれた。本当に、不思議。ふわふわした感じ。


 言われるまま、ドライヤーを渡す。すると、

「はい。座ってください」

と、私を座布団に座らせた山崎さん。自分はその後ろのソファに私を足で挟みこんで座り、そして、丁寧にタオルで髪を拭きはじめてくれた。

(なんか……手慣れてるな)
 歴代の彼女にこういうことしてたんだろうな……と思うと何だかモヤモヤしてくる。

「慣れてますね」
 思わず言うと、山崎さんは「そうですね」とうなずき、

「甥っ子が泊まりにくると、風呂入れたり髪乾かしたりさせられるので」
「……………」

 甥っ子。いや、それだけじゃないだろ。

「前の彼女にもしてたでしょ?」
「……………」

 我ながら意地悪な質問。
 山崎さん、たっぷり10秒くらい押し黙り………

「………。忘れました」

 ボソッと言って、ドライヤーの電源を入れた。ドライヤーのボーッという音が静かな部屋に響きはじめる。

(忘れました、だって)
 笑いそうになってしまう。してませんって嘘はつけないあたりが、真面目な山崎さんらしい。


 ドライヤーの温かい風の中、優しい手に撫でられていたら、先ほど山崎さんが話してくれた話が頭の中に甦ってきた。





-------


お読みくださりありがとうございました!

全然途中なのですが、とりあえずここまでで。
今回、どうしても構成の納得がいかず、切ったり張ったり移動させたりを繰り返し、結局間にあいませんでした。
でも更新しないのも悔しいので、とりあえずここまではいいか……というところまで載せさせていただきます。

毎回、内容と肝になるセリフは決まっているのですが、
それをどう書くか、どう構成したら間延びしないのか、不自然さがないのか……で、悩まされ……
スマホだと切ったり張ったり作業も難しいというかなんというか。
今日は数時間パソコンが使えるはずなので、作業の続きはこの後に持ちこむことにしました。

でも、とりあえず。今回は、山崎君の「忘れました」を書けて満足です。
元カノの話なんか、絶対しちゃダメ。「忘れました」で押し通すことをオススメします。


クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!!
もう本当に……こんな真面目な話にご理解くださる方がいらっしゃること、感謝の気持ちで一杯でございます。
今後ともよろしければ、どうぞよろしくお願いいたします!

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2 コメント

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「忘れました」 (にしっぺ。)
2016-09-20 08:56:04
って…

・Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)ェェエエ工工エエ!?

彼女の髪 乾かしてたんかーーーーーーーいッ!! (゜ロ゜;ノ)ノ

てっきり、
あの ほら、 時々 お姫さま抱っこで運んであげる 要介護のおじいちゃん…
あ、 おじいちゃんは 短髪
ドライヤー使う必要ないわ (笑)

あの ほわん とした柔らかい雰囲気で 甘やかしてくれて
居心地いいんだろうな~
弱ってる時だから なおさら ♡

だけど ここぞ!! って時には ハッキリ! キッパリ!& ビシーーッ!! と決めないと、女は物足りなく感じるよー

あ、 でも 大丈夫ね ♪
ストーカー佐伯から守ってくれたから~ (人*´ω`) (´ω`*人) ♪

やるときゃやる男、山崎(笑)
にしっぺ。様! (尚)
2016-09-20 09:59:15
コメントありがとうございますーーー!!!


>彼女の髪 乾かしてたんかーーーーーーーいッ!! (゜ロ゜;ノ)ノ


(笑)はい。乾かしてました~~っ

元々、10歳年下の弟の髪の毛を乾かしてあげていた時期もありましたが……
20代前半につきあっていた麻実ちゃん(役・臼田あさ美)に、
「卓也くーん、あさみの髪、乾かして~~」と甘えられて(←麻実、言いそ~~^^;)、毎回のように乾かしてました……

でも、次の彼女(役・水川あさみ)の時には、1、2回しかしてないとみた。
山崎さん、基本的に尽くしたいし、甘やかしたいから、彼女に関しては、見た目はめっちゃタイプだけど、そこらへん物足りなかったかも……

その点、菜美子ちゃんはクールビューティーなくせに、甘えたがりだから、
山崎さんも満足できることと思います。


>あ、 おじいちゃんは 短髪
>ドライヤー使う必要ないわ (笑)

(爆)(爆)!!
画面に向かって吹き出しましたーー!!!
おじいちゃん必要ない~~(笑)

って、そんな話まで覚えていてくださってありがとうございます!!
感激です!!


>あの ほわん とした柔らかい雰囲気で 甘やかしてくれて
>居心地いいんだろうな~
>弱ってる時だから なおさら ♡

そうそう~^^
絶対居心地いい。甘えて大丈夫な安心感がいい。
弱ってるところ、つけこまないと^^


>だけど ここぞ!! って時には ハッキリ! キッパリ!& ビシーーッ!! と決めないと、女は物足りなく感じるよー

そうそう!それが山崎一番苦手とするところですねー
色々考え過ぎて、遠慮したり、躊躇したり、で、結局何も言えず、何もできず…みたいな…

>あ、 でも 大丈夫ね ♪
>ストーカー佐伯から守ってくれたから~ (人*´ω`) (´ω`*人) ♪
>やるときゃやる男、山崎(笑)

危機がくると行動できる男!?ですかね^^;
いや、危機がこなくても、決めるときは決めてくれないと!!


嬉しいコメント本当にありがとうございますーー!!
朝から、お気に入りのお皿(ヤマザキ春のパン祭りでもらったお皿だけど)を一枚割ってしまい……破片床に散乱したままパソコンの前に現実逃避しにきましたが、
にしっぺ。さんからの楽しいコメント読んでいたら、お皿片づける気力がわいてきました。ありがとうございます!片付けてきます~~

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