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再録・(BL小説)風のゆくえには~一緒の空間

2017年07月18日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

すみません。再録です。
2017年3月14日投稿「現実的な話をします3」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます


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☆高校の同級生・溝部が、鈴木さんの息子陽太君と楽しそうにゲームをしていたことがちょっと羨ましい浩介。
その他の友人たちカップルの様子も見ていて、思うことがあったようです。



【浩介視点】


 溝部と陽太君がゲームをしているのを見て、やっぱりちょっと羨ましいな、と思う。

 と、いうのが、おれと慶には共通の趣味が一つもないからだ。

 高校時代は「バスケ」という共通点があった。でも、正直、おれはバスケがすごく好きだったわけではなくて……自分の中にあった「高校3年間バスケ部」という目標を達成したら、もうバスケへの情熱は冷めてしまった。以前勤めていた高校ではバスケ部の顧問をしていたけれど、それはプレーヤーとしてではなく、監督としてだったので、それはそれで面白くはあったけれど……

(おれといて楽しいのかなあ?)

 そんなことを時々考える。
 山崎と戸田菜美子先生は、映画の好みが合うそうで、よく一緒に映画を観に行ったり、ビデオを借りてみているらしい。
 鈴木さんの親友の小松さんとその旦那さんは旅行が趣味で、月に一度は小旅行、年に一度は海外旅行、と決めているそうだ。

 おれと慶は、映画の好みも違うし(慶はアクション物が好きだけれど、おれはヒューマンドラマが好き)、旅行も、慶は食べる系、おれは歴史系。唯一、温泉でのんびり、は二人とも好きかな……

 こうして家にいても、おれは本を読んでいることが多いけれど、慶はテレビを見ていたり、仕事をしていたり、筋トレをしていたり……

「何? どうかしたのか?」
「あ、ううん……」

 ソファーに座って本を開きながら、慶が柔軟をしているのをぼんやり眺めていたら、終わったらしい慶に声をかけられ我に返った。

「あいかわらず体柔らかいなあと思って……」
「そりゃ毎日の積み重ねだ。お前も毎日やればこんくらいになるぞ」
「あ、耳が痛い」

 大袈裟に眉を寄せると、慶はクスクス笑いながら、テレビをつけて、おれの横に座った。いつも見ているニュース番組のスポーツコーナーの時間だ。でも、

「もし寝たら起こしてくれ」
 そう宣言すると、体をずらして、おれの膝にとん、と頭を預けてきて……

(膝枕、だ)
 今さらながらキュンとなる。読んでいた本を閉じて、ゆっくり慶の頭を撫でる。

「寝たら起こしてって、寝る気満々じゃん」
「いや、寝ない。寝ないぞ」

 言いながらも目がつむりそう……。愛しい気持ちでいっぱいになりながら頭を撫で続けていると、

「あー……」
 CMを見ながら、慶がボソッとつぶやいた。

「お前がいるっていいなあ……」
「……え?」

 聞き返すと、慶はおれの膝を撫でながら、しみじみ、というように言った。

「こういうの、至福の時っていうんだろうなあ」
「慶……」
「あ、はじまった」

 パチッと目を開けた慶。興味のあるニュースらしく、真剣に見ている。

(………至福の時、だって)

 お前がいるっていいなあって……
 慶は、おれが「いる」だけでいいんだ……

 おれも慶がこうしていてくれるだけで、それだけで、幸せ。

 閉じていた本を左手で開いて、読書を再開する。右手で慶の頭を撫でながら。

 二人、違うことをしていても、同じ空間にいられるだけで、それだけで幸せだ。




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お読みくださりありがとうございました!
趣味の違う2人、でも一緒にいられるだけで幸せ^^

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してくださった方、ありがとうございました!

「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
「現実的な話をします」目次 → こちら

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