小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

日本人よ、国連信仰から脱却せよ(その2)

2016年04月29日 17時58分33秒 | 政治

      



(その2)を書く気はなかったのですが、短い間に情勢が変化したので、追加します。
 4月23日付の当ブログ「日本人よ、国連信仰から脱却せよ」の冒頭部分で、筆者は次のように書きました。
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/eb32263d8947a1441f600f23425f0fa5

 2016年4月19日、国連人権理事会の特別報告者、デービッド・ケイなる人物が記者会見し、「>日本の報道の独立性は(政府の圧力によって)重大な脅威にさらされている」と述べました(産経新聞4月23日付)。この人物は、国会議員や報道機関関係者、NGO関係者らの話を聞いてこう判断したそうですが、いったい誰に聞いたんでしょうね。だいたい想像はつきますが、それにしても、この発言の、実態とのあまりの乖離ぶりと、その質の低さには思わずのけぞってしまいます。日本ほど言論や報道の自由が許されている国が世界のどこにありましょうか。

 しかしその後、ケイ氏が記者会見で、単に政府の圧力による報道機関の危機を訴えただけではなく、日本のマスコミの政府からの非自立的な姿勢を批判し、記者クラブの廃止や報道監視のための独立機関の設立をを提案していることを知りました。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20160426-00057026/
 このケイ氏の提案に関しては、それが報道関係者の責任をより強く自覚させる効果を持つことを保証するものであるかぎりにおいて、ほぼ支持することができます。日本のマスコミは、たしかに右から左まで、だらしない御用マスコミと化している側面(たとえば消費増税肯定、大本営発表的な景気判断の垂れ流し、TPPや規制緩和路線に対する無批判、財務省発「国の借金一千兆円」説のデマのしつこい流布)を否定できず、インターネット上においてたびたびその姿勢を批判されているからです。しかもこの部分は、大部分のマスコミが意図的に報道しなかったようですが、それは事実報道を使命とする報道機関として許されてはならないことです。
 以上の点について、上記引用部分には、産経新聞の記事を鵜呑みにして論じた筆者の軽率ぶりがうかがえます。すでに公開した記事なので削除はしませんが、この場で新たに、引用部分のように安易には決めつけられないことを表明し、読者のみなさまにお詫び申し上げます。

 そのうえで、国連の人権理事会その他機関のこの種の日本への干渉が最近とみに目立ち、その背景に中共、韓国、および日本の反日勢力の存在があるに違いないという筆者の確信に関しては、ここで改めて強調しておきたいと思います。たとえば先の記者会見記事によると、ケイ氏は同時に放送法第四条の廃止を提案していますが、この提案は、明らかに度を越した内政干渉(余計なおせっかい)であり、国家主権を脅かすものです。なぜならば、放送法第四条は誰が読んでも、この国の秩序と平和を維持するために、放送機関が持つべき当然の責任と倫理を課したものであり、憲法第12条後段の「又、国民は、これ(国民の自由及び権利――引用者注)を濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」という規定を放送機関にそのまま適用したものだからです。

放送法第四条第一項:
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 こういう倫理規範が国家の名で謳われていることは非常に大切であるにもかかわらず、その廃止をなぜケイ氏は主張するのか。ここからは筆者の想像になりますが、国連人権理事会なる機関が、おおむね三つの力学のアマルガムをその中核の精神としているからだと思われます。
 一つは、個人や民間組織の自由・権利を至高のものとして掲げる欧米的な理念の力、二つ目は、マイノリティ尊重という建前に立った多文化主義の力、そして三つ目は、これらをひそかに利用して日本の統治を弱体化させようとする中、韓、国内反日勢力です。最後のものについては、前期記事で詳しく述べたとおりです。第一と第二の力だけを国連の理想として崇めると、そこに第三の力が強力にはたらいていることが見えなくなり、お人好しニッポンはじわじわと自分の国の主権を侵害されていくのを拱手傍観していることになるわけです。
 次のような情報に接しました。これもネット上で大きく話題にされているようです。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/04/27/united-nation-okinawa-native_n_9791804.html

これまでに国連の人種差別撤廃委員会などは、沖縄の人々を先住民族として認め、土地や天然資源に対する権利を保障するよう日本政府に法改正を求めている。2014年8月には「沖縄の人々は先住民族」として、その権利を保護するよう勧告する「最終見解」を採択した。
これについて宮崎氏(自民党議員――引用者注)は「国益に関わる大きなリスクだ。尖閣諸島を含む沖縄の土地や天然資源が、どこに帰属するのかを問題にされかねない話だ」と批判。「多くの沖縄県民は先住民族だと思っていません。誠に失礼な話だと思う。民族分断工作と言ってもいいようなことを放置しないでほしい」と政府への対応を求めた。
外務省の飯島俊郎参事官は「政府として先住民族として認識しているのは、アイヌの人々以外には存在いたしません。これら(国連の)委員会による最終見解や勧告などによって、日本の立場が変更されたということはございません」と答弁した。
また木原・外務副大臣は、沖縄県・豊見城市議会が国連勧告撤回を求める意見書を採択したことに触れ「政府の立場と異なる勧告や、実情を反映していない意見については、事実上の撤回や修正をするよう働きかけていきたい」と述べた。


 いかがですか。ここで宮崎議員が「民族分断工作」と述べているその主体がだれ(どこの国)を指しているかは言うまでもないでしょう。国連は、明らかにこの勢力に加担しているのです。その国が尖閣のみならず、次なる目標として沖縄の領有を狙っていることは、しきりに問題にされています。真偽のほどは定かではありませんが、その国の外務省から流出したとされる地図を以下に掲げておきましょう。これもネットで評判になっていますね。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-4980.html
【中国2050年の戦略地図】



 それにしても、外務省の答弁も一応優等生的に答えてはいるものの、本当にやる気があるのかどうか、この官庁のこれまでの姿勢から推して、はなはだ心もとないと言わざるを得ません。なぜ「働きかけていきたい」などと弱腰の表現で済ませて、「断固撤回するよう、強く要求していく」と言えないのでしょうか。
 以上によって、国連が「ちょろい」日本をいかに舐めてかかっているか、そうしてその姿勢を利用する反日勢力がいかに狡猾に「戦勝国包囲網」を作り上げようとしているかが明らかになったと思います。繰り返しますが、私たちは、偉そうな「上から目線」で日本にあれこれ提案したり要求したりしてくる国連の言うことを、けっしてまともに受け入れてはなりません。臨機応変につきあっておく必要はあるでしょうが、わが国の国益は国連の勧告などより常に先立つのだということをよくよく肝に銘じましょう。








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2 コメント

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補足情報 (山岡鉄秀)
2016-07-02 09:19:07
David Kayeは、このようなことも言っています。

政府は弾圧を受けている植村元朝日新聞記者を支援すべきだ。

教科書から慰安婦強制連行が削除されたのは遺憾だ。子供たちがこの重大な犯罪について学べなくなってしまう。

さらに、David Kayeは帰国後、反日学者のアレックスダデンとイベントを打っています。

これで、彼が何者かよくわかりますね。日本政府は直ちに毅然とした声明を出さなくてはなりません。さもなくば、来年にはクマラスワミ並みのバカげた最終報告書が発表されるでしょう。

デタラメが国連を動かしているのです。
山岡鉄秀さんへ (小浜逸郎)
2016-07-03 08:35:25
貴重なコメント、ありがとうございます。

私も、山岡さんの訳されたケイの中間報告文書を読んで、まったく同じ感想を持ちました。ひどい代物ですね。いまさらながら、国連の頽廃ぶりを再確認いたしました。

これはできるだけ速やかに、広く日本人に知ってもらう必要があります。非力ながら私もできることをやっていこうと思います。

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