雷が怖いので プレイ31

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 昼間の話が尾を引いてか、夜は少し飲みすぎた。正しくは、飲まされた、かもしれないけれど。
 夕飯時にお酒を勧められればもちろん断ることなんてせずに飲むけれど、足元が覚束なくなるほど酔うのは誕生日以降初めてだった。とは言っても、誕生日の時は最初から酔い潰されるつもりでと言われていたし、あの時に比べれば意識はまだまだはっきりしている。
 ただ、心も体もふわふわしていて、たまらなく幸せで楽しい気持ちが胸の中を満たしていた。これはアルコールによって感情が増幅した結果らしい。
 昼間、やっぱり嬉しいと思うんだな、などという言葉を聞いたせいで、素直に喜びきれずに胸の底で燻っていた想いが、お酒の力で膨らんで溢れ出したようだ。
 覚束ない足取りでも、とりあえず部屋までは支えられながら歩いた。でも一歩部屋に入ってしまえば、当たり前みたいに抱き上げられてベッドの上へと連れて行かれる。
 もちろん、食事へ向かう前に体の準備は済ませてあった。ローションをたっぷり注いでプラグで栓をして、なんてことまではしていないけれど、だからこそこの後、ベッドの中でゆっくりじっくり彼の手で慣らしてもらうその過程こそが、今日みたいにホテルへ泊まる日の醍醐味というか最大の楽しみでもある。
 頭の両脇に肘から先をついて、間近に見下ろしてくる彼の顔も楽しげだ。それだけでまた嬉しさが募って、ふへへと気の抜けたような笑いがこぼれ落ちる。それを掬い取るみたいに、ちゅうと唇に吸い付かれた。
 ちゅっちゅとキスを重ねられる合間に、ふはふはと笑いを零しながら、なんて幸せなんだろうと思う。
 彼側の事情だの言いつつも、このお泊りがお金を貰う代わりの贅沢だということもわかってはいる。でも、彼に抱かれるようになった先で、こんな風に触れて貰えるようになるなんて、以前は欠片も想像できなかった。あの日の言葉通り、したいこと、して欲しい事を、彼はたくさん叶えてくれている。
 誕生日の時に貰った服を、ゆっくりと脱がされていく。自分からも手を伸ばして、彼のシャツのボタンを外していった。
 素肌を晒して抱きしめあって、相手の肌の暖かさに包まれていると、本当に嬉しい。うっとりと目を閉じれば、穏やかな声がまだ寝るなよと告げる。
「寝ません、よ」
「でも眠いだろ? 少し飲ませすぎたか」
「ん、でも、美味しかった、です」
 そりゃ良かったと言いながら髪を梳くように頭を撫でられて、その心地よさにますますうっとりと蕩けていくようだ。
「今日のお前は、凄く機嫌が良かったな」
「だって、なんか、嬉しくて」
「俺がプレイの誘いを断ることが?」
 そうなんだろうと断定するような気配と、それでいてこちらからの肯定を待たれているような気配が混ざる、そんな声音だった。もちろん、ハイと短く肯定を返す。
「わかってるか? 今後、他で発散しない分がお前に向かう可能性だってあるんだぞ?」
 今度は安堵と、からかいの混じる声だった。だからこれは、言葉ほどには深刻な話じゃない。
「はい」
「明日、酔ってて覚えてないとか言いそうだけどな」
 苦笑される気配に、閉じていた瞼を持ち上げた。うっとり蕩けかけてはいても、意識はそれなりにしっかりしてる。このまま眠りに落ちるなんて、そんなもったいない真似をする気は全然なかった。
「大丈夫です。わかってるし、頑張ります、から」
「頑張るって何を?」
「何をって、その、俺だけでも、あなたに満足してもらえるように?」
 相手はふーんと楽しげに笑う。
「なるほどね。じゃあ、ちょっと何か頑張ってもらおうか」
「え、今から?」
「そう、今から。そうだな。今までのお前なら断ってくるようなことで、今この場で簡単に何か、って考えると、剃らせて、とかか?」
 当然、剃らせてってのは陰毛をってことだろう。
「いいです、よ」
 まさか許可すると思っていなかったのか、随分と驚かせてしまったようだった。

続きました→

 
 
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