「身体」という「宇宙」で漂流しないために…

先日、私の好きな番組『スイッチインタビュー達人達』を観ていて、人類進化学者の海部陽介さんが言っていたことがとても心に残りました。

「現代人の頭をじゃまするのは地図なんですよ…僕らは地図を持っています。台湾の向こうに何があるかみんな知っています。海流の知識もあります。…でも、三万年前の人は、当然そんなことは知らないわけですよ。危険な何が起こるかわからない所に、自分の家族を連れていくのか？」

…と、こんな内容のことを海部さんは話していたのですが、この話を聞いて、私は「身体」というものの「地図」を作った先人達の歴史に思いをめぐらせました。

きっと、最初に「医療」らしいものを行った人は、自分の家族や、大切な人を救えなかったのではないか？私は、そう思うのです。

自分の大切な人を救えなかったからこそ、同じ病や症状で苦しむ人をこれ以上増やしたくない…

そんな一心で、レントゲンも、検査道具もない中で、自分の身体を研究し、人の身体を研究し、どのようにすれば、同じ苦しみを味わう人を減らせるのかを探求したのでしょう。

一代ではその技術は完成されず、お弟子さんさんや、次の世代に知識が継承され、今に伝わってできたのが「医学」というものなのだと思います。

…それでも、決定的な「病の治し方」や「身体の仕組み」を理解する理論が、未だ見つかっていない…。

地図はできて、身体のどこに何があるのか？をみんなが知っているはずなのに、身体を治す方法を多くの人が知らない…。身体を扱う専門家ですら、もしかすると人の身体を理解しきっていないのかもしれない…。

現状はちょうどこんな感じではないでしょうか。

どこに何があるか知っていても、そこにどんな民族が住んでいて、どんな文化があるのか、もしかするとわかったような気になっていて、実際はほとんどが謎のままなのでしょう…。

ニュースで、今までなぞだった病気の原因が発見されたと言えども、新しい大陸が見つかったようなもので、調査は始まったばかりという感じなのでしょうね。

身体をわかったような気になっているだけで、まだまだわからないことだらけなのかもしれません。

もしかすると、身体を理解することって、きっと「宇宙」を理解するくらい難しいことなのかもしれません…

先人達が作ったことは、「身体という宇宙で漂流しない方法」

望遠鏡の見方、自分の位置をいかに知るかという航海術を作ってくれたのが先人達。

身体という宇宙を理解するには、きっと今を生きる我々が努力し、宇宙の心理を解明する必要があるのでしょう。

今を生きる私たちが、後世に伝えるための遺産を残し、身体を理解する旅を一歩先に進めることも大切な仕事。

まだまだ長い年月がかかると思いますが、少しでも人類に役立つような仕事を、おおくにたま鍼灸院もしていきたいと思います。

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