■お手本神曲

Arrow Heart『刻々☆クロック』

 

 

作詞はヒヤネタカヒロさんです。

 

 

■散文的な盛り上がり

激しいAメロにしては可愛い歌詞。可愛いはキュートの方ではなく、クールとプリティの中間。プリティの持つ原色純粋なドギツさはあると思います。ただしその原色は黒。

「囚われている今 影が襲いに来る 過去を掘り起こされ壊れる」

抽象的に使われた「影」に含みを持たせて散文的な盛り上がりを意識的に作っています。塗り込められた感じの言葉は全体に広がる波紋の様に美しい響きです。

 

Bメロは一息つき、ダークガーリーなメロディーが特徴的です。聴く側に意識させることなく歌詞にメリハリがついています。

埋もれて日の当たらない部分からの歌詞「巻き戻したいのBaby」は、サビへと繋げるのに絶好のフレーズ。文字数という作詞の型式にうずくまっていないパワーはロックであり、叫びである証です。

 

 

 

■歌詞と音楽

ロックやメタルの歌詞は思った以上に散文的な黒色の歌詞が多くて、結局な所、幾分趣味的過ぎる「破壊賛歌」や「破滅信奉」に寄せて行くパターンがよく見受けられます。

ロック、メタルの草創期からそのような歌詞が主流と成長し、今でもその流れを汲む流派があるのだから、もはや歌詞うんぬんではなくロックやメタルはある種「生き方」なのでしょう。

この曲のサビは大人しいです。アンジェラ・ゴッソウ並にガチコンと声を張り上げて歌って欲しいのですが、それは私の嗜好であり、また歌詞とは関係の無い事です。

しかしながら、「鳴らせ!刻々☆クロック回る回る世界で」と一際目を引く感激のフレーズがあるので、もっともっとそれを全面的に押し出せないかな…と老婆心ながら。

 

 

 

■カッコ良さと可愛さの狭間で

2番の歌詞も可愛いです。信念ある言語操作なり意匠なりの上に成り立って「逃げてちゃ始まらない」の前向きさ、「3時のおやつまだ?」の可愛さ、押して引いてが至極絶妙です。

色の意識を例えるなら濃い黒色が薄くなったり淡くなったりと、黒を基調とした邪魔にならない静けさを全編を通して感じます。

いずれ「もっとカッコよさを追及したハードさ」か「より可愛いロックを求めて」か、単純にハードロックなのか、可愛い系なのか、のどちらかに寄せては行くと思うのですが、この『刻々☆クロック』の歌詞を綴れる程のブレインに囲まれているのならどちらに振れたとしても心配は要らないかなと思います。

技術的な事ですが、歌詞にスパイス(メリハリ)を与えて歌詞の流れを変化させる方法の一つとして

・ハードなノリで書き上げてから⇒キュートな単語を足す

または、その逆

・キュートなノリで書き上げてから⇒ハードな単語を足す

に挑戦してみてください。『刻々☆クロック』はまさにそのお手本、もっと拡散すればなあと思う一曲death(デス)