『貴婦人の訪問』クリエ公演 感想 | 大海の一滴、ミルキーのささやき

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11月から始まった「貴婦人の訪問」ですが、大阪公演を残すのみとなりました。
前回はプレビュー公演の感想だったので、本公演というべき、クリエで観劇した感想を綴ります。
総合的には、プレビュー公演の感想と変わりません。
1幕は面白く、2幕はやりやがったな、と感じました。

 

そして、「市長、警察署長、牧師らが悪人になり過ぎ」という想いは強くなりましたね。
もう、戦隊モノの悪役レベルにグレードアップしていて、わけがわかりません。
観客が嫌悪するのは、ギュレン市民の心の流れのはず。
“普通の人”であったほうが、自分に置き換えて考えさせられるんですよ。
イカニモ悪役をみても、感情は動きません。
帰り際、「クレアに小切手を破って欲しかったわ」という感想を耳にし、まあ、このつくりではそうなるかな、と思いました。
ギュレン市民の描き方次第で作品力が変わります。

 

またまた文句から始まってしまいましたが、1幕は、「マイ今年No.1舞台」なんです。
私はとても好きです。
故に、注文が多くなってしまうのかもしれません。
前回書き忘れましたが、圧倒的に曲がイイんですよね。
1度聴いたら耳に残るメロディです。

 

サラッとキャストの感想を書いておきます。

 

まずはアルフレッドの山口祐一郎さん。
相変わらず“大人キュート”は抜群です。
山口さんの可愛らしさがあるからこそ、アルフレッドを憎めないのかもしれませんね。
だからこそ、怯え・恐れは、両手を挙げず真剣に演じて欲しいと、願わずにはいられません。

 

クレアの涼風真世さんは、存在感と歌が、飛び抜けてイイです。
宝塚を退団してから年数の経つ涼風さんですが、未だ、舞台で大活躍しているのも納得です。
クレアにおいては、ラストのセリフを、過去の自分とアルフレッドを照らし合わせたのがみえてくると深くなりますね。

 

マチルデの瀬奈じゅんさん、本公演になってから、意識の変化を感じました。
その変化とは、“アルフレッドをトコトン愛する”という、一貫性です。
ギュレン裁判になってからも、アルフレッドに強く想いが残っているのは、感じました。
ですが、そこは前回も書いたように、違和感を感じているんですよ。
なぜなら愛情タップリの妻が夫に捨てられ、苦渋の選択で挙手するのでは、ミステリーとして成立しないからです。
真に恐ろしいのは、一般庶民の良き妻が、自分を裏切り続けた夫に“死”を与えるという奇行です。
宇宙警察反対派としては、後ろ向きのエプロン姿で顔をみせずに挙手したらいいのになあ、という演出面への未練は残りました。
金の虜になった人から、キンキラ宇宙警察衣装って・・・。
うーん。

あれこれ書きましたが、役者が役を咀嚼し、一貫性を持って演じるのは大切なことなので、なんといいますか、観ていて腑に落ちたのも本当です。

 

「貴婦人の訪問」では、人の話を聞く場面が多い瀬奈さんです。
受け手って、役者の真価が問われるんですよね。
泣いたり怒ったりする演技は、一見、上手く観られがちですが、セリフに助けられるので、それほど難ではありません。
瀬奈さんの会話キャッチボールはナチュラルではありますが、“話を聞いている私”を演じているようにもみえました。
日常生活において、人の顔をマジマジと見つめる機会は少ないです。
台本を1度忘れて、自然な反応を手に入れると、更にグレードアップするはずです。
どこがサラッとやねん、というコッテリ感想になりました。
私がここまでクドクド書くのは、後にも先にも瀬奈さんだけです。

 

校長の石川禅さんは、ミュージカル界において貴重な人だなあと思います。
それは歌も芝居も特化しているからです。
いやあ、スゴい。

 

最後に。

 

アルフレッドとクレアのテーマ曲が、偶に、「なんでもないようなことが~♪」に聞こえてしまい楽しかったのですが、私だけですね。
失礼しました。

 

Fin