『エリザベート TAKARAZUKA20周年  スペシャル・ガラ・コンサート』感想3 | 大海の一滴、ミルキーのささやき

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舞台・映画・小説の感想を自分勝手に書き綴る、きまぐれブログ。

スタッフ

 

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
潤色・演出:小池 修一郎、中村 一徳

 

キャスト

 

トート:一路真輝、麻路さき、姿月あさと、彩輝なお、春野寿美礼、瀬奈じゅん、水夏希
エリザベート:白城あやか、花總まり、大鳥れい、白羽ゆり、龍真咲、凪七瑠海
フランツ・ヨーゼフ:高嶺ふぶき、稔幸、初風緑、樹里咲穂、彩吹真央、霧矢大夢
ルイジ・ルキーニ:轟悠、湖月わたる、樹里咲穂、瀬奈じゅん、霧矢大夢、龍真咲
ルドルフ:香寿たつき、えまおゆう、樹里咲穂、朝海ひかる、大空祐飛、彩吹真央、涼紫央、凰稀かなめ
ゾフィー:出雲綾、朱未知留、未来優希
マックス:立ともみ、古代みず希、大峯麻友、越乃リュウ
少年ルドルフ:月影瞳、安蘭けい、初嶺麿代、望月理世
グリュンネ:磯野千尋、飛鳥裕


※4月18日から2枚組のDVDが販売されるそうです。

 

あらすじはコチラ

 

※トート春野さん、エリザベート大鳥さん、フランツ樹里さん、ルキーニ瀬奈さん、ルドルフ彩吹さん、ゾフィー未来さんで観た感想です。

 

さて、エリザベート・ガラ・コンサートの感想も3回目になりました。
3回目の感想は『Chanson de 越路吹雪 ラストダンス』以来かもしれません。
今回はコスチュームを着けない、アニヴァーサリーバージョンです。
2002年花組メンバーがほぼ、集いました。
こちらは、歌に長けたOGが多いせいか、アダルティックでコンサート感の強い公演です。

 

キャスト感想

 

トートを演じたのは元花組トップスターの春野寿美礼さんです。
トートは両生具有という定義があるようですが、コンサート形式ということもあり、女性性が優っていました。
ベルベットボイスと称される重厚な歌声は、天の声に聴こえます。
リトルグリーンメンになって、「神様~」と、言いそうになります。
「最後のダンス」は、ミルク風呂に浸かりながら下界を見下ろす、たゆたうトート。
これにはさすがに首をかしげますが、他の影響を受けない春野さんワールドといえば、春野さんワールドです。

 

冒頭、“女性性が強いトートだった”と綴りましたが、一瞬、男の顔をみせた場面がありました。
それはルドルフの死後、エリザベートが命を奪ってくれと懇願するシーンです。
「まだ、私を愛してはいない」
そう言い放った春野トートは、男も男、男以上に男の顔でした。
春野さんの両生具有度は、中間にいるのではなく、女と男の間を行き来する、変身系なのかもしれません。
改めて、色々なバージョンが観られるのは贅沢で楽しいと思いました。

 

エリザベートを演じたのは花組娘役トップスターの大鳥れいさんです。
滑らかな歌声は健在です。
併せて額をオープンにした時の美しさ。
漆黒の瞳と白いドレスが見事なコントラストになっています。
しかし、前回も書きましたが、表現力が足りないです。
役作りも、なにかしら、無難に纏まっているような気がします。
私は荒削りでもいいから、パッションを感じたい!
何度も書きますが、エリザベートは本来、主役です。
極端な話ですが、場面によっては、全てのライトは私のため、全ての音楽は私のため、全ての脇役は私のため、という傲慢さがあっても、いいんじゃないでしょうか。
もちろん役者のエゴで芝居を壊してはいけませんが、エリザベートは勢いを持たなくては、意外にも、ひっそりした役に収まってしまいます。
OGになっても、「テッペン、取ったるでぇ~」という気概がこれからの財産になるはずです。

 

誤解なきよう補足しますが、本来、演劇に主役も脇役もありません。
たとえ通行人役だったとしても、通行人自身は自分が主役。
役者は台本に描かれていない人生背景をも想像し、生きることが大切です。
ただ、その宝塚歌劇団という特殊な世界は、“テッペン取り”の法則があるのも致し方無い現実です。
ガラ・コンサートとはいえ“取ったるで”感を期待してしまいました。

 

フランツを演じたのは元専科の樹里咲穂さんです。
ただでさえ歌の上手い樹里さんですが、先日にも増して美声を響き渡らせていました。
このメンバーで、刺激されたのでしょうか。
耳障りが良く、清々しい歌は、これぞ“プロ”といった安定感です。

いや、皆さんプロですけどね。
スラッとしたスタイルは中性的で初々しく、フランツはいつまで青年なのだろう?と疑問を感じるほどでした。

 

ルキーニを演じたのは元月組トップスターの瀬奈じゅんさんです。
おやおや?
私の記憶が確かならば、オープニングは2002年ルキーニの歌唱と瓜二つです。
つい先日、瀬奈さんの歌を称えたばかりなのに、困りました。
キッチュは流石に熟されていますが、うねりすぎたセリフまわしや宙に浮いた歌は懐かしいものです。
そして、この物語はルキーニの回顧録だというのに、達観しすぎじゃないでしょうか。
瀬奈トートを観た後だったので、“もしや、新しいルキーニが観られるか”と期待しましたが、コンサート全体が同窓会ムードでした。
いや、カッコいいんですよ。
コスチュームなしだというのに、野性的な目線だけで虜にする魅力は人たらしといいますか、男役としての天分が備わっているとしか言いようがありません。
容姿もセクシー男前で、そりゃモテるわ、といった感じです。
気のせいでなければ、美穂圭子さん演じるマダムヴォルフすら、ルキーニに惹かれているようにみえました。
女性客が多くを占める宝塚ではカッコ良ければアリになりますが、やはりそこは、卒業生たちの舞台ですから、一皮向けたルキーニをみせて欲しかったです。
トートの手下感が薄れていたのは、よかったですね。
まだ瀬奈さんの体内にトートの青い血が残っていたのでしょうか。
おふざけ混じりのアイコンタクトもありましたが、「不幸の始まり」辺り、トートがトートをつけ狙い刺し違えそうな、変わった空気があり、それは好ましかったです。

 

ルドルフを演じたのは元雪組スターの彩吹真央さんです。
彩吹さん!素晴らしかった。
それは、観客のひと際大きな拍手が証明していました。
なぜって、登場した途端、もう闇の世界が広がっていたからです。
衣裳を着ていないので体の線は女性らしいのですが、そこにはルドルフとして生きる彩吹さんがいました。
逆らえない運命を背負いながらも、強い意志を持つ寂しい目に魅了されます。
しっかりとした役作り、憂いのある歌声は心にドンと響きました。

 

最後に。

 

なぜ、アニヴァーサリーバージョンは、セリフカットが多いのでしょう。
諸々事情があることとは思いますが、「死ねばいい」のカットだけは、そりゃないよ、です。
宝塚お得意の、“著作権の都合により・・・”を、ライブでみせられた気分でした。

 

Fin