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農業をする昆虫養菌性キクイムシ

2018-05-19 10:04:18 | 自然
今日は昆虫の話ですが、私も昆虫の世界にはいろいろ興味を持っており、このブログでもありの社会性などについて書いています。

菌を栽培して食べるアンブロシアビートルという昆虫ですが、たぶんキクイムシの仲間のようですのでキクイムシと表記します。

この昆虫はストレスを受けて弱っている木の中に、トンネルや通路をネットワーク状に掘り、体の一部に貯蔵しておいた菌を生やし世話をするという菌の畑を作っています。この菌がキクイムシの唯一の食料という面白い生活を送っています。

キクイムシが酒の成分であるエタノールに引き寄せられことは以前から知られていました。これは干ばつや洪水などのストレスを受けると、木の中でエタノールの濃度が高まることから、ストレスを受けている木を見つけるためだと考えられていました。

このあたりも面白いところで、たぶん樹木は元気なときはこういった昆虫を寄せ付けないような成分を出しているのかもしれません。エタノールがキクイムシにとってどんな役割を果たしているのかをドイツの研究チームが発表しました。

研究チームはまず、研究施設で健康な木の近くにエタノールを置くと、キクイムシがやってきて木の中にトンネルを掘り始めましたが、ほどなく去っていったようです。菌の畑作りも繁殖もしていませんでした。しかし木にエタノールを吸収させると、キクイムシはその中に住み続け、菌の畑を作り子孫を増やしました。

次に研究チームは実験室内でキクイムシを育て、おがくずを詰めた筒の中に入れました。筒に低濃度のエタノールを注入すると、入れていない筒に比べ菌の畑は大きくなり、繁殖も盛んになりました。

さらに研究を重ねた結果意外な事実が分かりました。通常エタノールは殺菌剤として用いられるように、菌の増殖を抑える働きがあります。ところがキクイムシと共生する特殊な菌は、このエタノールによって成長を促され、さらにエタノールはキクイムシが食べない余計な雑菌を死滅させるという働きがあることが分かりました。

つまりエタノールは通常の畑での除草剤の役割を果たしていたわけです。今回の成果について昆虫学者は、キクイムシがエタノールを含む木に畑を作るのは、菌の競争相手を取り除く戦略であり、食料を選択的に育てる能力が判明したと述べています。

通常こういった方策は多数の化合物を利用する複雑な系となりますが、キクイムシはエタノールのみという非常にシンプルな系で達成しているのが面白いとしています。

研究チームは、キクイムシの共生菌がどう育つかの解明をすることで、農作物への被害を抑える方法が明らかになることを期待しているようです。

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