王位戦第４局、早い終局になってしまいましたね。△４三銀と引くのでは変調かなと思っていましたが、事前研究でどこかに穴があったのかも…。さてNHK杯澤田橋本戦その２ の続きです。

５図から

▲６四歩 △同　歩 ▲９一龍 △９九龍 ▲３四角 △３六歩

▲同　歩 △５五角 ▲４六香 △３三香 ▲５六角 △８八角成（６図）

５図からちょっと進んで上図。後手が△８八角成とした局面。ここが本局の一番のポイントだったかもしれません。橋本八段はここで▲５八金左としましたが、解説の糸谷竜王は▲６二歩を候補手に挙げていました。以下△８九馬▲７四角（B1図）でどうか。

上図で△６二金と歩を払うのは▲４一角成とされて後手負けです。▲６一歩成を受けることはできないので後手は攻め合うことになります。感想戦で並べられた変化はB１図以下△６七馬▲７九歩△３六香▲６一歩成△３七歩（B２図）。

上図から

①▲３七同桂△同香成▲同玉△２五桂

②▲５一と△３八歩成▲同金△同香成▲同玉△５一金

どちらの変化も先手が全然自信ありません。もし私が実戦でこの局面になったら②の変化を選んで△５一金に▲３五桂で勝負すると思います。

６図以下

▲５八金左 △５五馬 ▲６七角 △６五歩 ▲７一龍 △６六歩

▲７八角 △８八龍（７図）

▲５八金左に△５五馬が後手からすると感触の良い手です。▲７四角と逃げると△８九竜と味良く桂馬を取られてしまうので、角を引くしかありませんが、それではつらそうに見えました。上図から角取りを受けるために▲７六竜と引きましたが、そこで澤田六段はじっと△４四歩。先手に有効な手はないでしょう、と。この後も澤田六段は着実にリードを広げていき１０４手で橋本八段の投了（下図）となりました。澤田六段の強さが光った一局となりました。

棋譜まとめ

棋戦：第６５回NHK杯テレビ将棋トーナメント
先手：橋本八段
後手：澤田六段

▲５六歩 △８四歩 ▲７六歩 △８五歩 ▲７七角 △５四歩
▲８八飛 △３四歩 ▲６八銀 △４二玉 ▲４八玉 △３二玉
▲３八玉 △６二銀 ▲２八玉 △５三銀 ▲３八銀 △７四歩
▲１六歩 △１四歩 ▲８六歩 △７七角成 ▲同　銀 △８六歩
▲同　飛 △同　飛 ▲同　銀 △８七飛 ▲８二飛 △４二銀引
▲７八角 △８八飛成 ▲８一飛成 △５一金右 ▲６六歩 △６四角
▲７五歩 △同　歩 ▲６五歩 △５三角 ▲５五歩 △７六歩
▲８七歩 △４四角 ▲６四歩 △同　歩 ▲９一龍 △９九龍
▲３四角 △３六歩 ▲同　歩 △５五角 ▲４六香 △３三香
▲５六角 △８八角成 ▲５八金左 △５五馬 ▲６七角 △６五歩
▲７一龍 △６六歩 ▲７八角 △８八龍 ▲７六龍 △４四歩
▲５六歩 △７八龍 ▲同　龍 △５六馬 ▲５二歩 △同金左
▲６八龍 △４五歩 ▲４四桂 △２二玉 ▲５二桂成 △同　金
▲５七金 △８九馬 ▲６六龍 △２四桂 ▲２六金 △４六歩
▲同　歩 △３四香打 ▲４七金 △１五歩 ▲同　歩 △１七歩
▲同　香 △１六歩 ▲同　香 △３六桂 ▲同金上 △同　香
▲３四歩 △同　馬 ▲３五歩 △同　馬 ▲６一龍 △３八香成
▲同　金 △５一金

まで104手で後手の勝ち