NHK杯 木村一基八段 ― 森内俊之NHK杯 相矢倉 | 将棋LIFE

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第65回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第15局、木村一基八段と森内俊之NHK杯の一局を振り返ります。



本局は相矢倉の脇システムになりました。後手番の森内NHK杯がウソ矢倉でスタートしたため、通常より後手が一手損する展開になっています。但しその損得は必ずしも勝敗には直結しないようです。感想戦で木村八段は「一手ぐらい(得しても)どうってことなかったか…」とぼやいておられました。第1図は中盤戦。森内NHK杯が△9五歩と仕掛けた局面です。先手は後手の端攻めを緩和するために▲7九玉と早逃げしましたが、飛車を渡しづらくなるのがネックです。ここでは後手を持ってみたいですね。



▲5二銀は矢倉崩しでよく見られる手筋で△5三金なら▲4一銀成で角を捕獲できます。森内NHK杯は第2図から△9八歩と垂らしました。確実な手ですが手を渡すので怖い手ではあります。森内NHK杯は「竜を作っても大したことないですから。」と感想戦でおっしゃっていました。



手番を握った先手はどんどん攻めていきます。第3図から△2五同銀▲同桂△2四銀は手順に桂馬が働いてくるので後手が不味いです。受け方がよく分からなかったのですが、森内NHK杯が指した手は△3二銀。森内NHK杯らしい手で自陣が一気に引き締まりました。



第4図は手が広い局面で先手にとって一番悩ましい局面だったように見えます。▲2四同飛は△2三香、▲2五歩には△2六香があり、飛車打ちに弱い先手は攻めが難しいです。木村八段は▲2三歩△同銀▲2五歩と攻めていきました。△同歩なら▲5一角と打つ予定だったそうです。▲2五桂~▲3三金もしくは▲3三銀が狙い筋です。まともに応じると後手は潰れそうなので、森内NHK杯は▲2五歩に△2六香と打って飛車を取りに行きました。第4図をAperyで検討させた所、▲5一角を推奨していました(参考1図)。



読み筋は△9九歩成▲2三歩△同銀▲9五角成。ここから飛車を取りにいく発想は、凡人にはまず思い浮かばないですね(笑)。さすが剛腕のApery先生です。