癌と共に生きる　手術→放射線治療→化学治療

生前、母は蛇が大嫌いだった。
見るだけでゾクッとするらしい。

私が生まれ育った家はとてもとても古い借家だった。
トタン張りの建物で、大正時代にカーテンの製造作業場として建てられたものを
居住用に改造したものだった。

なので、いろんな生物が登場した。
いろんなと言っても、ありきたりの生物だ。
ゴキブリやムカデ、ゲジゲジは当たり前。

ネズミは廊下を駆け回り、お風呂場の石鹸を丸ごと持って行ったり
かじったりするだけでなく、家の柱をもかじり続けた。
ネズミが柱をかじる音は今でも思い出せる。

そして、そのネズミを狙う蛇が度々登場した。
その多くはお風呂場だった。
母は蛇を恐れるあまり、お風呂に入れないこともあった。

お風呂場では時折腐敗臭がした。
当時、一度だけ父と二人で浴槽を外して持ち上げたことがあった。
すると浴槽の下の断熱材をかじりに来ていたネズミを食べたであろう蛇が
そこで息絶えて、そのまま腐敗していた。
まあまあの量のウジ虫も湧いていた。

その時は気づかなかったが、父は耐えきれずに嘔吐したらしい。
とにかく物凄く強烈な匂いだった。

残っていた肌模様から、恐らく「青大将」。
大きさは2メートル前後はあったと思う。
なぜそこで息絶えたのかはわからないが
過去数回の腐敗臭も蛇かネズミだったのかな・・・とその時思った。
本当に臭かった。

お風呂場に登場するのは蛇だけではない。
稲刈りの時期になると大量の蟻が床下から天井に向かって発生した。
物凄い光景だった。

印象に残って忘れられない事象として、
一度、その大量の蟻を目撃してしまった母が
発狂しながら狂ったように雑巾で拭っていたことがある。
あの時の母はすごかった。
少しパニックになっていたのではなかろうか・・・。

その他にも、バッタ、コウロギ、ナメクジ、家グモ、クワガタ、
なんでも登場した。

家の軒下には毎年あしなが蜂の巣が作られた。
不思議と刺されたことは一度も無いが・・・。
今ではその殆どが考えられない。

ちなみに私自身は蛇が好きで、夢にも度々登場する。
蛇が夢に出ることは縁起が良いと聞いたことがある。

マムシやヤマカガシなどの毒蛇は触ることはできないが、
シマヘビと青大将なら手に取ってじっくりと顔をみたりする。
結構可愛い。
特に青大将はおとなしい・・・ただ、二メートル近くになると
力が凄く強い。
シマヘビは力はないが、気性が荒いから扱いにくい。

こんな話・・・母には出来なかった・・・絶対に・・・（笑）

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