いつか優しい未来27 | 「山あり谷あり笑いあり」らんのblog

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インドアなのに司会やイベントに参加する方向音痴不思議さんの日々を綴ったり、小説や詞を書いたりする迷走系ブログ❗️時折、失踪してblog更新怠ります
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「わたくしは、ルナソル様がこの地を去ったあとに産まれましたので、直接ルナソル様にお会いしたことはございません。

これは、全て母から聞いた話になります。

まだ日本に移住する前、ルナソル様は兄嫁である奥様を愛していらっしゃいました。でもそれは叶わぬ恋。

そんな傷付いたルナソル様を救ったのが、ユリアナ様だったのです。」


実加は、ドキッとして呟いた。


「ユリアナ」


「はい、ユリアナ様は旦那様…ルナソル様のお兄様と奥様のお嬢様。ルナソル様の姪です。」


ばあやは続けて、


「戦況も激しくなり、新天地を求め日本にたどり着いた時には、すでにユリアナ様のお腹にはケイル様がいらしたのです。

でも、平岩家の援助を受ける為には、平岩光也様とユリアナ様の結婚をやめる訳にはいかなかった。

一族はルナソル様を牢屋に幽閉し、産まれてすぐのケイル様もユリアナ様から引きはなし、光也さまに見付からぬように育てたのです。」


「ずっと影のように生きて来たんですね、たった一人で。」


ばあやは実加の髪を直しながら、


「ルナソル様と共に子供も死んだと思ったユリアナ様は、深く悲しみ心を閉ざしました。…そんなユリアナ様の心を開いたのは光也様と
しい命でした。」


「新しい命、結さんのことですね。」


「はい…はじめは穏やかな日々が続きました。 でも、ルナソル様が生きていると知ったユリアナ様は、ルナソル様に会うため牢獄に現れるようになりました。
もちろん、ルナソル様は会おうとしませんでしたが、
このままではいけないと考え、城を去ることを決めたのです。
そんな矢先、光也さまがケイル様の事を知ってしまったのです。
光也さまは結さまも自分の娘ではなく、ルナソル様との子供ではないかと疑うようになりました。
そして、ルナソル様がユリアナ様に別れを伝えようとしたあの日…
とうとう、悪夢の時間がやって来たのです。」


ばあやは、遠い目をして話を続けた。


「嫉妬に狂った光也さまは、ルナソル様を殺そうと刀を持ち出し城の中を捜しまわりました。

そして、ユリアナ様と一緒にいるルナソル様を見て逆上し、斬りかかったのです。」


実加は、思わず身を強ばらせた。


「そしてその刀で斬られたのが、ルナソル様をかばったユリアナ様だったのです。

その光景に、光也さまは自分は愛されてはいな かったと絶望し、結さまにも斬りかかりました。

全てを失った光也さまは最後に自害したのです。」


実加の頬に、涙が流れた。


「あまりのひどい惨状に諦めかけた時、ルナソル様が亡くなったユリアナ様のかわりに、結さまだけでも助かってほしいと、瀕死の結様に自分の血を飲ませたのです。 

そして、結さまが助かったのを見届けたルナソル様は、ひっそりと城を去りました。

それからの結さまは、父が母を殺して自害した事、少しずつ醜く腐っていく体。全ての災いはルナソル様のせいだと。」


黙って聞いていた実加が、ペンダントを取り出し、


「憎んでいるんですね、幸せを奪った父を…そして私を。」


と呟いた。


「ここで起こった事は、ユリアナ様とルナソル様を引き離した事が始まりです。

掟を破ってでも、2人を一緒にしていればこんな事にはならなかったでしょう。でも、全ては終わった事。

結さまはルナソル様を憎む事でしか、生きられなかったのかも知れません。そして、その屈折した想いがケイル様に向かっていったのです。」


そう言い、ばあやは実加の持っているペンダントに気付いた。


「それは…たしか奥さまの肖像画に描かれて あった。」


ばあやが言うと、実加が


「これは、父の形見です。私がここに来た本当の理由は、これをケイルさんに渡す為なんです。 

ばあやさん、ケイルさんに会えませんか?このペンダントを渡したいんです。」


と言った。ばあやは微笑み、


「分かりました、
参りましょう。」

と言った。そのばあやに実加が、


「ずっと、あなたは1人で抱えてきたんですね、 沢山の想いを。いつかこんな日が来る、その時に真実を伝える為に。」


ばあやは驚いて実加を見た。


「そうですね、そうかもしれません。
別の生き方も出来たのかも知れません。
それでもここに残ったのは、真実を伝えてほしいと言う母の遺言もありました。
でも本当は、私の勝手な思いからです。
私は、ケイルさまと結さまが好きだった。私にはお2人が全てで、ずっとそばにいたかった、 ただそれだけだった。」


そう言い、あふれだす涙をおさえられないばあやだった。 実加はばあやを抱き締め、


「終わらせましょう。もうこれ以上、悲しみを増やさないために。今なら、私達なら出来るはずです。」


そう言い、微笑んだ。ばあやも


「そうですね、全てが終わるその時が来たのですね。私達の手で。」


と言い、微笑んだ。

✳️画像はお借りしました