動画ミニチュア


【コラムvol.87】キーフレーズ:動画に適した話し方って?③

前々回:動画に適した話し方って?①、
前回:動画に適した話し方って?②
の続きです


「へん!なんなの、その化粧したような声は!」

と、
かつてTVキャスター・トレーニングの際、
コーチからこう指摘された私。


さて、「その化粧したような声」であった私の当時の声とは。


カンタンに表現すると、
「不自然な声」
だったのです。

地声の発声力(ボリューム)はすでに鍛えていたので、
地声で話せば十分だったはずなのですが、
テレビの仕事をし始めた当時の、
北海道(札幌)で求められるキャラクターや声質を、
自分なりにイメージして作り上げていた状態でした。


具体的なイメージでいうと、

・地声より高い声で若いオンナノコらしく。
・溌溂としていてとびきり元気な印象に。
・「大根が50円なんですよ~!」のひとことが、
幅広い年齢層のご家庭の主婦に受け入れられるような声に。


地方局は東京とは違い、
自社制作の番組が少なく、
その番組自体も、
大半が地元情報に密着型の情報番組です。

若い女性の出演者に求められるのは、
どちらかというと、
明るく健康的、親しみやすい、
お嫁さんにしたい雰囲気、
かつ庶民的であるといったイメージ。

私はそう感じていました。

なので、地声よりも高めの、
特訓すればヨーデルも歌えそうな一歩手前。
そんな発声でのトークを身につけていました。

そしてやや媚びるような女性特有の甘い声にスイッチする技も。

普段の声は高くもなく、
やや低めの「アルト」レベルです。

しかし、仕事となると、
瞬間に高めのやや媚びた声に切替えている癖がついていました。


おそらく、
この傾向は、
私だけではなく、
他の職業の方にもあると思います。


航空会社のCA
バス会社のバスガイド
百貨店のエレベーターガール・受付係・販売員
ホテルの接客スタッフ
アミューズメント企業の施設スタッフ
レストランの接客係
アパレルショップの販売スタッフ
イベントコンパニオン……等。

それぞれ独特の声と節回しがあります。

もちろん、それは悪いことではなく、
むしろ、会社の研修や諸先輩から指導され、
その環境下でプロとして仕事をする上での発声と発音だと思います。

一方で、
上記の仕事をされていた方が、
テレビキャスターになった際、
かつての私のように、
前職での癖を直すのに一苦労したという話はよく聞きます。

仕事のために一生懸命身につけたことが、
環境が変わると、
「ヘンって言われる~(;;)」になっていたわけです。



私は上京が決まって半年くらいは、
東京キー局放送での番組でも、
仕事用に切り替えた声で仕事していました。

その頃の担当番組のディレクターには、
「なんか不自然だよなー。ふつうにしゃべれない?」
「なんでカメラ回るとそんな声になるの?」
と指摘されていました。

「地方局の匂いひきずるな」
とまで言われたこともあります。

その言い方は、
今でもヨクナイ指摘例ダワネ
と思いますが、
トレーニングのコーチが言っていた
「化粧したような声の癖」の原因は、
確かに北海道時代に身につけた発声法でした。


原因がわかったこともあり、
東京で仕事をするためにも、
思い込んでいたイメージを取り払い、
発声と発音の癖を改善するために、
コーチの指導の下で繰り返しトレーニングを続けました。

まずは、
声の音階を元に戻すことから。

音階を元に戻すということは、
楽に発声できる地声のトーンを知るということです。

その声から、むやみに音階を変えようとしないこと。

一定の地声のトーンでの発声、
ニュース原稿音読、小説などの朗読を繰り返します。

そして、
原稿の音読や朗読の際に現れる、
違和感のある癖をコーチが指摘し、
併せて適切なフレーズの発音と音階を発声してもらいます。

日本人が外国語を、
外国人が日本語を、
語学教師に対面で学ぶレッスンと似ているかもしれません。

純日本人でありながら、
日本語のレッスンを受けているようなものです。

とても地道でシンプルなトレーニングですが、
会話中に「それちがう」と逐一指摘されるよりも
原稿を「読む」という行為に集中できるので、
効率的で効果も表れやすく、
かつ自宅での自主練もやりやすい手法です。

このトレーニングを受けてから、
地声での発声発音はもちろん、
耳での音階の聞き分け力も鍛えられたという実感があり、
原稿の音読テストが入るオーディションの合格率がぐーんと上がりました。

ニュースキャスターになったのも、
このトレーニング開始後ですが、
おそらくトレーニングを受けていなかったら、
カメラテストで落ちていたと思います。

厳しかったけれど、
的確に指導してくれたコーチのもとでトレーニングができたことはラッキーでした。


あのままグズグズと自己流で続けていたら…と思うと、
間違いなく職を失い、
上京数年で夢破れUターンとなり、
悔しさとむなしさと恥ずかしさに負けて、
相当イジけていたことでしょう。

かなり鼻息荒く、
札幌から飛び出してきましたから。


恥ずかしくもありますが、
ここからは鼻息荒かった若き日のハナシを。

メンドクサイ方はスルー&スルーをm(__)m



かつての私は、
札幌で受け入れられるようなイメージをムリに演じることには
とても抵抗がありました。

ある日、
札幌市内で高めの声を出しながらのリポート中、
自分の声に違和感を感じて耐えられなくなり、
ロケ終了後に当時のAプロデューサーに正直に意見を伝えました。

「私は地方局であっても、
ハンで押したようにみんな似たようなテンションの
キャラでやるっていうのはおかしいと思んです。
落ち着いた声、自然なトーンでのリポートがしたいんです」

返ってきたAプロデューサーの答えは、
「うーん…だからアナタはミスさっぽろなんだよ」。


意味わかんない。
と思い、イラッとしつつ、さらに聞いてみました。

「え?どういうことですか??
確かにミスさっぽろではありましたが、
それと今の私の疑問に何の関係がありますか?」


上昇志向が強いトシゴロの私は、
俗にいうナマイキさだけはイッチョマエでした。

この時も、
Aプロデューサーへジリジリグイグイと、
目を△△にして詰め寄っていたと思います。

そんな私に対して、
Aプロデューサーは、
穏やかな口調で微笑みを浮かべながら
ゆっくりと話し始めました。


「ヨイということでもあるんだよ。
貴重な経験だよね。
ほかのアナウンサーにはない知識や経験を、
アナタはすでに得ている。
だから肝も据わってるし、
動じない様子を見てると、
そのトシですっげーな、と感心するよ。

でもね、ココ(北海道という意味)でやる番組は、
そんなアナタの知識や経験は必要としていないんだよ。

必要なのは、
極端にいうと、
大根はどの店がいちばん安いか、
ススキノのラーメン屋ではどこがいちばんおいしいのか、
地元密着情報のほうが必要なんだよ」


「それはわかってます。
でも、果たしてそれだけでしょうか。

もっと日本で注目されている情報とか、
世界で起こっている感動的なこととか、
そういうことを伝えるコーナーがあってもいいんじゃないですか?」

またもや私は両目を三角にして意見しました。


「うーん。そうかもな。間違ってないと思うよ。
しかしね、それは視聴率を絶対上げる!
というほどの説得にはならない。
意見を通すには、今の企画の中で、
アナタが成果を出して認められることが必要だよ」


「そうですか。ハイ、わかりました


「くっくっく…
納得してないよね、
わかるよ…あっはっは


「なぜそんなに笑うんですか


「あはは!あははは!!」


「うぅ~…


「ボクにそうやってたてつく若いのはアナタくらいだ。
あっはっは!」


「たてついてません


「うはは!ボクはアナタのそういう目が大好きだよ」


「そうですか

「くっくっくっ…カンベンしてくれよ
気持ちもわかるし、意見も間違ってはいない。

まずは、現状の中でもっと力をつけて、
数字の上での結果を出してから意見を通しなさい。
組織とはそういうところだ」


「ハイ


「ハハハ…まぁ、特殊な仕事でもあるから、
あらゆる意味でチャンスは大切に。
ボクは若いアナタがうらやましいよ^^」


この時から約1年後、
他局系列でしたが、
急きょ東京のテレビ番組レギュラーが決定し、
迷うことなく私は札幌を後にし、
拠点を東京に移しました。


その半年後くらいに、
出張中のAさんと会う機会があり、
1時間ほど話ができました。

私は東京での仕事やプライベートが
楽しくなってきた頃でしたので、
開口一番、Aさんへこう伝えました。

「思い切ってこっちに来て
本当に良かったと思ってるんです!
今とっても充実してます!」

「おっ、そうか。それはよかったよかった^^」

「先月までトルコにロケで1ヶ月いました!
今、トルコでは、********ですよ!」

「へえ、それでそれで?」

「先週は○○会社の創立式典で司会をして、
会長の○○さんとか、
代議士の○○さんとの会話でとっても感動しまして!」

「そうかそうか。安心したよ、そうやって元気な姿を見られて^^」

「はい!毎日世界の新しい情報のシャワーを
浴びている感じがします!
やりがいもあります!」

「そうか。そうだな。
自分でチャンスを生かしてチャレンジした結果だな。
うらやましいよ、若さは貴重だよ。
ボクくらいになっちゃうと
アナタのような勇気がなくなる」

「え?そんなっ!
いつもスタッフを叱り飛ばしていたAさんが
そんなこと言うなんて、らしくないですよ!」


「うはは!!
やっぱりアナタくらいだよ、
僕にそんなこと正面切って言うのは。
ったく…参ったなぁ

じゃ、そろそろ会議へ行かなきゃ。
またな、がんばれよ」

こう言ってAさんは席を立ち、
姿が見えなくなるまで何度も振り返りながら
手をフリフリしていました。

なんとなく、
親戚の叔父さんを見送るような心境になり…

自分のことだけ話しすぎちゃったなぁ、
東京を大絶賛しすぎて
札幌を否定したように聞こえたかもしれない、
元気でいることを伝えたかっただけだったけれど、
失礼だったかな…と、
私は少しだけ反省しました。



今、私はちょうどその当時のAさんの年代になり、
あの頃のAさんの考えや、
気持ちがわかるようになってきました。


置かれた環境に疑問を持ち、
成長したくて頑張りたいのに、
頑張りどころが違っていてもがく若者。

器用な人海戦術のスキルがまるでない。
おとなの根回しとか、
商売センスとか、
そんなことを教えたとしても身につくとは到底思えない。

それでも、夢と希望、勇気と行動力は持っている。
持っているどころか、
パワーを持て余していて今にもはちきれそうだ。

教科書のようなことを言っても聴きはしない。
机上論はすぐに見透かす。

さて、そんな部下に相談を受けたら、
どうやって解決すればいいだろう。

いや、解決はしない。

ありのままの現実を伝える。

どの道を選ぶかは、本人の選択にゆだねる。

選択後の予想結果も伝える。
その上で、選択後のリアルな結果は本人が背負えばいい。

よい報告を受けたら、
心の底から拍手を贈ろう。

勇気と行動の証であると、
具体的な言葉に表して讃えよう。

決して
そっけない態度をとったり、
鼻でせせら笑ったり、
嫌味を言ったり、
引きとめるようなことを言うような
卑屈な姿を見せるような大人にはなるまい。


きっと、
Aさんはそんなふうに思っていたのではないかと。

私はそう思ってますよ、Aさん


言葉数少なく、
接し方と背中で教えていただいた、
Aさんのご指導にも今さらながら感謝しています





さて、次回は、

「イベント司会とテレビキャスターの使い分けがなってない!」

との指摘を受けた理由を投稿します


これも、式典などのイベントの司会と、
テレビキャスターの両方を行っていた時期に、
コーチにびしゃっ!と指摘されたのです。

人前で話すことは慣れているけれど、
動画ではなんだかヘンだぞ…

という方、それはきっと、きっと、、、


ヘン

なんですよ


続きは次回に


こめかみピクピク~させながらお待ちください





ではまた、ごきげんよう


本日も、
あなたさまからのお恵み1クリックを…

こちらをクリックいただけると嬉しくてたまりません


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