世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

登山電車は省エネ技術の元祖だった

2018年02月22日 | 文化


1973年に石油輸出国機構(OPEC)が石油価格を大幅に引き上げたときは世界経済は大混乱に陥りました。中東石油に依存していた日本は油断大敵でして、政府は大慌てて産油国詣でに奔走し、庶民は生活物資の買い占めに走りました。

石油ショックでエネルギー資源が大切なことを思い知らされて、改めて地球上のエネルギー資源を並べてみますと、木材、石炭、石油、天然ガスなど、すべて太陽からの熱と光りが造り出したものと分かります。人間は太陽からの贈り物を使うだけで、自ら新しいエネルギーそのものを創造することは出来ないのだと知るのです。

人間の手で産み出したエネルギーと言えるのは、核分裂で発生させる熱エネルギーだけです。その核分裂エネルギーも、原子力発電所の将来性に疑義を持たれている現在、人類は未だ自前のエネルギーを安全に確保いていないのです。将来、核融合で発生するエネルギー開発に成功すれば、人類は太陽を我が物にしたと自慢できるのですが、今のところ、その見通しは立っていません。

そこで、エネルギー資源に関して人間に出来る事と言えば、太陽から与えられたエネルギー資源を無駄なく使うこと、無駄を出したらそれを回収して再利用すること位です。そのような分野で、省エネルギーの技術を開発することは大事なことで、既に色々な工夫と発明が為されています。

例えば、平地を走る電車は、減速するとき電気ブレーキを使って運動エネルギーを電力に変換して回収しています。これを回収ブレーキと言うのですが、今急速に普及している電気自動車でも同じく回収ブレーキが使われています。回収ブレーキの利点は、エネルギーの面だけでなく、摩擦による部品のロスを少なくする働きもあります。

エネルギーの無駄を省くという意味では、揚水発電所があります。これは電力エネルギーの場合は、需要(消費)と供給(発電)とは同時に同量であることが求められますが、原子力発電所は、その需給の変化に合わせて発電量を調節することが難しい発電所です。

夜間には電力需要は低下するので、過剰となった原子力発電所の電力を使って、水力発電所の水をダム下の貯水池からダム上の貯水池へ汲み上げておくのです。無駄になる電力を位置のエネルギーに変換して貯蔵しておくのです。

そう言えば、もっと単純なもので登山ケーブルカー(鋼索鉄道)があります。上り下りの車両を一本のワイヤーロープで繋いで、交互に山の斜面を上下しています。登る車両は下る車両の重力を利用して登ります。下る車両の重力を無駄にせず、登る車両が再利用しているわけです。登山ケーブルカーは、車両に動力を積まないので推進効率がよく、それも省エネになります。
(写真)

揚水発電所では水が上下する、登山ケーブルカーでは車両が上下するので似ているのですが、前者が位置のエネルギーであり、後者は慣性のエネルギーですから、原理は違うのです。しかし共に優れた省エネ技術です。
(以上)
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