はじめましてのその時は | おばあちゃんになった、わんこさんのおはなし。                    ~高齢柴犬の闘病・介護記録~

おばあちゃんになった、わんこさんのおはなし。                    ~高齢柴犬の闘病・介護記録~

ハイシニア柴犬介護記録です。
1年3カ月の闘病期間を含め、いつでも家族みんなで笑いながら過ごした、柴犬「わんこさん」との16年と8カ月の生活。
悲喜こもごもあったけど、トータルしてとっても幸せだった日々のおはなしです。

犬と一緒に過ごす生活って、いいね。

わんこさんのお誕生日は4月の末。そしてわんこさんを私たちの家族に迎え入れた日は6月の初め。

細かい計算の苦手な私はこのブログで、わんこさんが我が家にやってきたのは生後2カ月と記してきた。6月からみて4月といえば確かに2カ月前と言えるのだけれど、生後間もない子犬では満2カ月とそうでない場合とは、大きな差が生まれる。わんこさんが我が家にやってきたのは、正確に言えば生後40日。本当に幼い時に親から離れて、長い距離を移動して、そして我が家の一員になってくれた。小さい体でも口を開ければかわいい歯が生えてはいたけれど、まだとても一人前とはいえない、コロコロ丸くてふにゃっとした子犬だった。

 

そんな小さすぎるわんこさんを車から降ろし家に入れるまでの間。頼もしいけれどややおせっかいが過ぎる後の犬仲間が、通りかかりに目ざとく見つけたわんこさんを囲み、口々にしてくれたアドバイス。

 

「まだしばらくは抱っこでお散歩だろうけれど、この期間に全く外の世界を見せなかったら郵便屋さんにも吠える子になっちゃうから。抱っこしてたくさん外の世界を見せて、不必要に吠えない賢い子になるよう育てなさいよ。」

「小さいから、かわいいからってたくさん写真を撮りすぎちゃダメ。まだ赤ちゃんのこの子にはフラッシュの刺激は目によくないのよ。適度にとどめておいてあげなさいね。」

「あらあ、なんて小さいの。予防注射をきちんと済ませてから、うちの子と一緒に遊びましょうね。それまでにはきちんと基本のしつけをしておいてね。」

「こんなに小さいうちって、後から考えれば一瞬にして過ぎちゃうのよ。せめて写真にたくさん撮って、かわいい姿を残しておきなさいね。」

 

親切心からの優しいアドバイスなのです。だけど相反する内容も含まれていて、「うわあ、私、どうしたらいいの?」ってわからなくなるような錯綜した情報量。とりあえずその日は写真を一枚だけ撮って。フラッシュの悪影響で目が悪くなったら困るもんね、と、その後は数々のベストショットを見送って。人見知りすることもなくピョンピョンはしゃいだ小さなわんこさんはそれでも環境の変化で疲れたのか、急に電池が切れたみたいに眠りに落ちました。

 

翌日、折れていた耳は片方立ち上がりました。そしてその翌日にはもう片方も。

「耳が折れてた方が子犬らしくてかわいいのに、こんなに早く耳が立っちゃうなんて。」母は少々不満気でしたが、我が家にきて三日目には、わんこさんの耳は一人前の立耳になりました。しっぽははじめからくるんと巻いています。もう小さいながらも、立派な柴犬の特徴が揃いました。

それでもまだ、水も鉢から上手に飲めず、顔を水浸しにしてむせながら、被毛に染み込んだ口周りの水分を舌でペロペロ集めるような不器用な飲みかたをしていた時期。犬用の粉ミルクは、おそらく哺乳瓶かなにかで与えたんじゃないかな。母が言うには、パピーフードを30粒とか40粒とか数えて、お湯で柔らかくふやかしてから与えていたのだそう。私はしっかり覚えてないけど、家族みんなで必死で幼いわんこさんを食べさせ、躾けていたんだろう。あまりにもかわいらしすぎたから、長い時間をお世話に費やさなければならないことなんて、何も苦にならなかったけれど。一緒にいれば、いつも笑顔になれた。

 

「体温調節がまだうまくできないから、暑すぎても寒過ぎても命にかかわる。」って言われて、暑くなりかけた時期、朝起きた時や外出先から帰った時、すうすうと立てている寝息に「ああ、生きてる、よかった。」って安堵してた日々。ぎこちなく危なっかしい新米おかあさんの私と、それでもすこやかに成長してくれたたくましい娘、わんこさん。

いうことをきかなかったから感情にまかせてしつこく叱ってしまったこともあった。あんまりやんちゃでイタズラばかりで手に負えなくてうんざりして、「遊ぼう」と寄ってくるわんこさんを邪険に突き放してしまったこともあった。もっと余裕を持って育ててあげたかったなあ、って後悔も残るけど、わんこさんはまっすぐ素直な性格に育ってくれた。

わんこさんがペットショップに連れてこられた直後に、ガラスケースの中で展示生活を経ずして我が家に引き取られたということは、性格形成に影響したのかな?狭くて、他のワンコの気配は感じるのに姿が見えなくて一人ぼっちで、ガラスの向こうの人間たちが相手にしてほしい時に素通りして行ってしまいゆっくり眠りたいときにガラスを叩いて声をかけてくる安定しない環境。ときおりのぞくパピーコーナーに並ぶ子達のどこかおどおどした不安げな瞳を見ると、答えに迷うけど。わんこさんの生まれついての性格はそれほど変わらずに、起きてる時は全力で愛嬌を振りまき、周囲の喧騒にかまわずよく眠ったんじゃないかと思えるんだよね。違うかな?

 

子犬時代って、姿も動きもみんな愛らしくてかわいくて、まさにぬいぐるみみたいなのに、起きてる間は無限の好奇心と想定外の体力でなんでもかんでもボロボロにしてしまう。ふざけているうちにムキになって力加減ができなくなるから、私の腕にも足にもひっかき傷が無数にできた。付き合うこちらも体力がないとやっていけない。柴みたいな中型犬は、小型犬より体が大きいぶん力も強く身体能力も高く。こんなところ届かないだろうって思っていても、こんなに固いんだから大丈夫でしょってタカをくくっていても、数時間後にはその考えの浅はかさを思い知るくらいに破壊魔王。でも寝顔はやっぱり天使。あたふたするばかりの新米おかあさんの予想をいろいろはるかに超えながら、私だけでなく家族中を振り回しながら、わんこさんは人間よりもはるかに短期間で大きくなってしまったのでした。あっという間に私の歳を追い抜き、それから父母の歳までも追い抜いて…。けれど、おばあちゃんになってもその後も、ずっとずっと永遠に、私の大切な天使であったことは変わりません。

 

 

 

          
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