こんにちは。
金沢の料理屋四代目、料亭の愉しみ方コンシェルジュの山縣 秀行(@kotobukiya_yama)です!
日本各地に、数々の名物あれど、恐らくよく知られているもののひとつが、「桑名の焼はまぐり」じゃないかと。
誰が言い出したのかわかりませんが、江戸時代から「その手は桑名の焼はまぐり!」ってシャレが一般的だったほど、桑名のはまぐりは有名だったようです。
恐らく、伊勢参りの道中にありますから、その評判が広まっていったのでしょう。
桑名は、揖斐川・長良川・木曽川の下流にあるので、川から運ばれてくる豊富な栄養を吸収して良質なはまぐりが育つ環境にありました。
特に焼はまぐりと時雨蛤は、江戸時代から全国的に有名だっと言われています。
はまぐり自体、昔は、日本各地で豊富に採れたので、中でも桑名のはまぐりは、恐らく特に美味だったものと思われます。
現在我々の口に入るのは、そのほとんどが、外来種のチョウセンハマグリ。
江戸時代に愛された桑名のはまぐりとは、似て非なるもの。
今回、希少な桑名産・日本原種の通称ヤマトハマグリを素材を活かした調理法でいただくことができる『日の出』さんへお伺いしてきました。
はまぐりのシーズンは貝が卵を持つ、ゴールデンウィーク頃から、7月くらいまでなのですが、全国各地からこの時期の極上はまぐり料理を求めて、お店は連日満席。
ご縁あって、まさにベストシーズンに桑名のはまぐりをいただくことができました。
『日の出』さんは、もともと料亭発祥で、昔は会席料理を中心に提供していたのですが、特にハマグリ料理が人気となり、今ではハマグリ料理中心の料理店さんになっていったのだとか。
とはいえ、季節の会席はもちろん、うなぎ料理や、白魚料理なども提供されており、桑名の老舗料亭としての矜持が垣間見えますね。
では、お料理をご紹介。
まずは、口取りから。
左より、トマトのもずく、枝豆、白魚すし、はまぐりのはんぺい、玉ねぎのマグロ巻き、酒盗チーズ、おくら。
口取りをいただいているうちに、座敷内に設えられた特設オープンキッチン(笑)では、鍋の出汁が温められています。
大粒のはまぐりもたっぷり用意されています。
鍋にするのは、おおよそ3年〜4年もの。
蛤なべの一品目。
さっそくの蛤しゃぶしゃぶです。
特製のダシに火を通しただけ。
なるほど、プリプリで柔らか。
貝自体の旨味が濃厚で、ミニ牡蠣といってもいいほど。
桑名のはまぐりは、この時期に卵を抱えて身も肥え太りぷくぷくになります。
食べ終わった頃に、もう一杯、蛤しゃぶしゃぶが提供されます。
鍋にはまぐりから出た旨味で、一杯目より味が濃くなります。
まったく同じものなのに、この変化が興味深い。
天然はまぐりの食材としての高いポテンシャルを実感することができますね。
はまぐりのバター焼き。
ちょいバターが強すぎるような気がしますが、焼くと旨味がまた膨らみます。
はまぐりのグラタン。
貝はバターやホワイトソースみたいなミルク系と合わさると旨さが増しますね。
最後にもう一回、蛤のしゃぶしゃぶ。
通算三杯目になるわけですが、相当に濃厚な味わいに。
ダシ汁を一滴たりとも残すことができません。
一端鍋から離れまして、
はまぐりの天ぷら。
油との相性も上々。
今日のもうひとつのメイン。
8年ものの焼はまぐり。
比較用に3年ものも一緒に。
8年ものの大はまぐりは、もう、驚愕の味わい。
卵をたっぷりと抱えているので、もう激濃厚。
もう、これ、ほとんど牡蠣。
こんな二枚貝は見たこと、味わったこと、ありません。
私的には、ここからがすごかった。
たっぷりとはまぐりの旨味が溶け込んだダシを使っての料理。
まずは、豆腐とネギと三つ葉。
はまぐりのダシ、最高!
今回は、贅沢に〆は二品。
平打ち麺と雑炊です。
ふぐ鍋なんかもそうなんだけど、旨味を吸い込んだダシを使った雑炊が一番美味いと思うんですよね。
もちろん、このはまぐり鍋も。
デザートは、マンゴープリン。
興奮を収めるにふさわしい、優しい甘み。
さすがは、天下の名物「桑名のはまぐり」です。
恐れ入りました、としか言いようがありません。
私の中で、はまぐりの凄さ、奥深さ、この食材を守り続ける桑名の方々の努力、などなど大変勉強になる一夜となりました。
ご馳走様でした!
◯日の出
三重県桑名市川口町19
0594-22-0657
11:30〜14:00(季節により営業)
17:00〜22:00(L.O.20:30)
※要予約