「戦後」ということば | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

 

昭和天皇の終戦の詔がなされた昭和二十年(1945年)八月十五日が戦中と戦後の境目になっています。

71年前の今日から「戦後」が始まった、と言われています。


『80になった時には戦後80年、90になったら戦後90年、100になったら…分かんないんですけれど、戦後100年と戦後(という言葉)が続いてほしい。そのためには、私たちが、やっぱり『戦争は、嫌だ!!』ということを、しっかり言わないといけない。』

http://www.asahi.com/and_M/interest/entertainment/Cfettp01608070037.html

 

吉永小百合さんのことばです。

 

戦争は嫌だ、ということ。戦争が行われない「平和」な状況が長く続いてほしい思いについては、賛同します。

しかし

吉永さんが思われる日本の「戦後」、維持したい「平和」とはなんでしょう。

 

現実を最も正確に表現しているのは

「奴隷の平和」

です。

 

71年前を振り返りましょう。

 

戦争という最悪の状態があり、講和条約によって終了した。

その後は戦時国際法違反の有無を審理して、賠償の手続きを行う。

敗けた側が被害の倍賞を行うのはやむを得ないと思うが、戦争中の違法行為については、勝ち負けに関係のないことだと思います。

 

第二次世界大戦後の裁判では日本の戦争犯罪のみが裁かれました。

全都道府県の主要都市に行われた無差別爆撃や二度の核攻撃は裁いていないどころか、戦争を終わらせる正しい行為だったと(アメリカはもちろん日本人の一部すら)考えているのです。

しかも、相手方のわずかな証言のみで日本の有罪を作り出す手法が行われました。

いわゆる「南京大虐殺」の被害者数は、広島・長崎への核攻撃の被害者数が明らかになっていくのと比例して増えていきました。

 

つまり、弁護役だったブレイクニー氏が示唆した通り、「東京裁判」は連合国(アメリカ)の罪を打ち消す目的で行われたのです。

 

日本側に違法行為がなかったとは思いませんが、このような裁判では本当に悪かったことがわからなくなってしまいます。

 

 

アメリカ(GHQ)は日本を占領し、軍隊を駐留させました。

7年弱の間、日本国民は主権のない状況におかれました。

その間にアメリカ人によって作られたのが「日本国憲法」です。

 

教育や歴史観、行政制度なども、アメリカ(GHQ)の指導で変えられました。

日本が二度とアメリカに対抗できない国にするため、これを行ったのです。

 

日本人はこれを粛々と受け入れた、いや、受け入れざるを得なかったのです。

 

日本人は(自分が敗けた時は特に)敗けた側が悪いという意識を持ちます。

主権を奪われていた時の日本人の多くがそう思い、理不尽な要求に従い続けたのです。

 

今の日本は「戦後」なのか

日本の「戦後」というものは、戦勝者に従って生き長らえること。

そのために、戦前戦中に行ったすべての判断の基礎となる理念や価値観を…つまり日本を…否定することで成り立っていると言えます。

 

これはアメリカの戦争目的や戦後処理の目的と一致します。

71年経った現在も戦争中、あるいは、占領された状態が続いていると言って間違いないでしょう。

 

ブッシュ大統領はフセインを殺した後のイラクを「GHQ方式で民主化する」と言いましたが、大失敗しました。

イラクの人々は自分たちの価値観や主権を他国に変えられ奪われることを良しとしなかった。

「奴隷の平和」を選ばなかったのです。

 

おかげで現在もひどい状況が続き欧米も多大な被害を受けていますが、欧米の権益争いで中東に混乱の種を巻いたのですから自業自得です。

テロリストたちの武器の多くはアメリカ製、旧ソ連製で、ヨーロッパや中国のものも含まれます。

戦闘に使用する車はトヨタ車です。

 

「奴隷の平和」を受け入れた日本がアメリカに勘違いさせ、中東の混乱を激化させたと言うこともできるのです。

 

 

「戦後」の日本が「平和」か?

と問われれば、真っ先に思い出すのが拉致被害者です。

テロリストの教育者として日本人が拉致されました。

彼ら、彼女らは、自由を奪われたままテロリストを育てなければいけない、二重三重の屈辱に今も苦しんでいる。

数十人、数百人と言われる拉致被害者を救出する決断を日本人はできないままです。

 

占領時代から引き続きアメリカ軍が現在も日本中に駐留しています。

 

国防にかぎらず経済や教育、エンターテイメントでも、アメリカの要求に逆らえない状況が続いています。

 

「日本を取り戻す」と言った安倍首相と自民党、政府は、アメリカに従って「戦後」状態を強化するのに懸命です。

 

「保守」を自称する人々がそんな安倍首相をいまだに熱烈に支持している。

 

吉永小百合さんに拍手喝采する人々と本質は同じなのです。

 

 

憲法を改正すれば良い…

核兵器を持てば良い…

アメリカの属国を保守すれば良い…

日本が悪かったと思っていれば良い…

そんな解決方法を選んで良いとは思えない。

 

ボクは、今の政治状況や国民の意識を垣間見るにつけ

憲法改正はやってはいけないし、核兵器など持たせてはいけないと思う。

アメリカの属国状態も続けてはいけないと思う。

 

八方塞がりの71年が、来年は72年、そして90年、100年と続いていくのです。

 

「戦後」=「奴隷の平和」を続けることが、日本国民の総意であり現実なのだ、ということ、それを転換する覚悟を自分も持てていないと自覚することからはじめないといけない。

 

日本は「戦後」をまだ手にしていないのですから。

 

 


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