同一サブネットの通信装置を基にIPアドレスを生成する複合機の発明 ブラザー工業

 DHCPのアドレスとAuto IPのアドレスとで通信できない問題を解決する発明です。

 この発明の印刷等複合機は、同一サブネット内の通信装置(レジストラ)のIPアドレスを基に、自装置のIPアドレスを生成して通信に使用します。これにより、同一サブネット内の他のデバイスと通信できるIPアドレスの設定ができます。

 特許第5040949号 ブラザー工業株式会社
 出願日:2009年3月30日 登録日:2012年7月20日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

DHCPのアドレスとAuto IPのアドレスとで通信できない問題

 IP通信に用いるIPアドレスを通信装置に自動的に設定する技術があります。代表的なものに、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)や、Auto IPによる方法があります。

 DHCPでは、IPアドレスが設定されていない端末がDHCPサーバからIPアドレスを取得します。Auto IPでは、予め定められたアドレス範囲に含まれるIPアドレスを端末が生成し、生成したIPアドレスが他の端末により使用されていない場合に、生成したIPアドレスを通信に用います。

 DHCPで設定されるIPアドレスとAuto IPで設定されるIPアドレスとは、同一サブネット内になるとは限らないので、これらのIPアドレスが設定された端末同士が通信することができない問題が生じえます。

同一サブネット内のレジストラのIPアドレスを基にIPアドレスを生成

 この発明の通信装置(多機能機いわゆる複合機)は、IPアドレス設定の際に、同一サブネット内にあるレジストラ(レジストラ機能を有するパソコン等のデバイス)のIPアドレスとサブネットマスクの情報を取得します。

 そして、レジストラのIPアドレスと同一サブネット内のIPアドレスを生成し、生成したIPアドレスが同一サブネット内で実際に使われていないか判定します。使われていない場合に、このIPアドレスを通信に使用するようにします。

 このようにすることで、レジストラと通信可能なIPアドレスを端末に設定することができます。

 なお、このIPアドレスの取得方法とDHCPと併用するアイデアもあります(図4)。まずDHCPによってアドレス取得を試み、アドレスを取得できないときに上記のようにIPアドレスの生成と、使用可否の確認を行います。

【課題】
ネットワークに存在する他のデバイスと通信するために利用可能なIPアドレスを通信装置に設定し得る技術を開示する。
【請求項1】
 自動無線設定モードを有する通信装置であって、
 前記通信装置が前記自動無線設定モードに従って無線通信方式を設定する際に、外部からの無線信号に含まれる第1のIPアドレスであって、レジストラ機能を有する特定デバイスに設定されている前記第1のIPアドレスを、自己のIPアドレスが新たに設定される前に、取得する第1取得部と、
 前記第1のIPアドレスを用いて仮のIPアドレスを生成し、前記仮のIPアドレスを前記自己のIPアドレスとして利用可能である場合に、前記仮のIPアドレスを前記自己のIPアドレスとして新たに設定する設定部と、
 を備える通信装置。

今日のみどころ

 IPアドレスを動的に設定する技術は、従来から研究されています。そのため、単純なアイデアではなかなか特徴が認められないと思います。そのような場合に、その発明に特有の特殊性を考えて、アイデアと特殊性とを結び付けて発明の効果を説明するのが良いと思います。

 この発明は、レジストラという役割を有するデバイスがネットワークに接続されているということを特殊性と考えることができると思います。そして、レジストラのIPアドレスを基にして適切に端末のIPアドレスを設定する、という効果につなげます。

 特に従来技術が多くある分野では、技術が同じでも効果の説明次第で特許がとれたりとれなかったりします。丁寧に説明して特許取りましょう!