あくまのおよめさん/シュワリ・カルマチャリャ・絵 稲村 哲也 結城 史隆・再話/福音館書店/1997年
ラージャンは両親との二人暮らしですが、日照りが続き米や野菜が不作。
ところがラージャンは道で一枚の銀貨を見つけます。
父親は羊を、母親は豆を買うようにいいますが、ラージャンは国中にたった一つしかないものを買おうとします。
結局買ったのは小さなサル。
両親はがっかりしますが、ラージャンは大切に育てます。
じつはこの村には人殺しも平気でするいう悪魔がいました。
サルは悪魔が居眠りしているあいだに、少しづつ金貨や宝石を盗んで、隠します。
悪魔は宝物がへっているのにきがつき、サルを地面におさえつけます。
ところがサルは「死んだあとおいのりをしてくれる人がだれもいないじゃありませんか」「ぼくはほんとうは、おじさんに およめさんをみつけてやろうとおもって、きたんですよ」ともちかけます。
ラージャンが両親に頼んで、用意したのは木彫りの人形でした。
そしてその木彫りの人形をもって、悪魔のところへ。およめさんが身につける金や宝石の飾りがないと、およめにこられないと釘をさすことも忘れていません。
そして、恐がるかもしれないから誰にもみられないように隠れているよう話します。
まちきれない悪魔が、部屋に入っておよめさんにふれると、人形のよめさんは、ベッドからころげおちて、動かなくなります。
悪魔は「ああ、ぼくの およめさんがー、ぼくのよめさんがー」と泣き叫び、大事なおよめさんをなくして、うまれてはじめて悲しい思いをしたので、村人たちを悲しませてきたことに気がつき、峠の向こうにいったきり、村にはもどってきませんでした。
絵はネワール伝統絵画という手法でかかれているようですが宗教画を思わせます。
ここに出てくる悪魔はちっともこわくありません。宝物をもっていても、死んだあと誰もお祈りする人がいないといわれて、およめさんをまっているあたりは、とても人間的です。
そして村人を苦しめていたことに気がついて、村を去っていくという結末も余韻があります。