どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

3びきのくま・・イギリス、”3びきのくま”絵本版

2023年07月23日 | 昔話(ヨーロッパ)

 この話は、1834年から1837年にかけて書かれたロバート・サウジという詩人の創作で、昔話の条件にかなっているので、ほんものの昔話?として使われてきたといいます。(岩波書店の訳者のことばから)

 あるお話し会で、小さい子も熱心に聞いていたのが印象に残りました。絵本もたくさん出ています。

三びきのクマの話(イギリスとアイルランドの昔話/石井桃子 編・訳/福音館書店/1981年)

 この本は何回か読んでいたはずなのですが、語るのを聞いて、覚えてみたいとあらためて目をとおしてみました。
 例によって、一冊だけではなく、文元社からだされている山室静編著も参考にしてみました(新編世界むかし話集1 イギリス編/山室 静 編著/文元社/2004年)

 石井訳では
 ちいさいおばあさんがおかゆをたべてしまって、三匹のクマが叫ぶところ。
 おっきなクマは「だれかが、おれのおかゆをたべたな!」
 中くらいのクマは「だれかが、おれのおかゆをたべたな!」
 ちっぽけなクマは「だれかが、ぼくのおかゆをたべたな。そして、すっかりたいらげちゃった!」

 これが文元社では
 デカグマは「だれだ、おらのオートミールにさわったのは!」
 中グマは「だれかがわたしのオートミールにさわったのは!」
 チビグマは「だれかがあたいのオートミールを、みんなたべっちゃったわ!」

 三匹のクマの表現、おかゆとオートミールのちがい。クマの性別をうかがわせるセリフ。

 これ以外にも微妙な表現のちがいがあります。
 
 さらにほるぷ出版では麦がゆと訳されています。クマのところに入ってくるのはゴールデロックという女の子。
 石井訳では、ちいさなおばあさん、文元社版では小さな女の子。

岩波書店の木下順二訳(ジェイコブス・作/イギリス民話選/ジャックと豆のつる/木下順二・訳 絵・瀬川康男/岩波書店/1967年)では、小さなおばあさんとオートミールと訳されています。

・さらに篠崎書林版(ブリッグの世界名作童話集1/フローラ・アニー・スチール・再話 小林忠夫・訳/篠崎書林/1988年)では、おかゆ、かんしゃくもちのゴールデイロックス。


    3びきのくま/ポール・ガルドン ただ ひろみ・訳/ほるぷ出版/2020年新装版

 3びきのくまのところにやってくるのは、無邪気な感じのキャンディという女の子。前歯が欠けています。”おかゆ”は、キャンディの目の高さのやや高いところ。

 ちいさなこぐま、ちゅうぐらいのこぐま、でっかいおおぐまと、くまと、説明の文まで大きさがちがいます。

 3びきが椅子に座って本をよんでいますが、もっている本は、おおぐまの本がいちばん小さく描かれています。

 ベッドがどの階にあったのかは不明です。


    3びきのくま/スズキコージ文・絵/鈴木出版/2015年初版

 スズキコージさんのものは2015年と最近の出版。

 スズキさんのは、やや短くなっています。
 きんいろのかみのおんなのこがでてくるのは、ほかにもありますが、やんちゃなおんなのこが天衣無縫といった感じです。

 くまのいえにやってくるところ。
    あたい かえりみちが わかんなくなったちゃった。
    あれえ、あそこに ちっこい おうちがあるわ。
    それに ドアもあいているし。(手書き文字です)
 くまの朝食をたべるところ。
    でっかいまめのスープ      うわあ、アッチッチイ
    ちゅうくらいのさらのスープ   うーん まだまだ、アッチッチイ
    ちっこいおさらのスープ     うん、ちょうど いいわ。
 いすにすわるところ
    みあげるぐらいのいす      うわあ、この いす いわみたいに かたいわね
    つぎのいす           うわあ、わたみたいに フワフワだわ
    ちっこいいす          あっ、このいす あたいに ピッタリ

 このあとも擬音語がうまく生かされています。

 訳されているのは繰り返しが多すぎる感じもしますが、スズキさんのものは別のリズムのようです。

 くまの朝食を「おかゆ」「オートミール」と訳されているのが多いのですが、スズキさんは「豆のスープ」とされています。



    3びきのくま/バーナデッド・絵 ささきたづこ・訳/1987年初版

 バーナデッド版の最後。くまから追いかけられる場面ですが、窓から飛び出すというのが多いのですが、女の子は階段をかけおります。
 そして、くまが追いかけるというのはあまりありませんが、バーデッド版では、くまが女の子をおいかけ、髪が キラキラきんいろにひかるので、まぶしくてつかまえられませんでしたとあります。

 くまのベッドは、2階にあり、窓から飛び出すとたしかに足をくじたり、骨折したりしそうなので、バーデッド版は、そのあたりも配慮したのかもしれません。

    3びきのくま/L・N・トルストイ バスネッツオ・絵 小笠原豊樹・訳/福音館書店/1962年初版

  出版年からいうと、最初にふれるのはトルストイ版が多いでしょうか。女の子には名前がなく、クマのお父さんは、ミハイル・イワノビッチ、お母さんはナスターシャ・ペトローブナ、クマの子はミシュートカとロシア風。

 朝食はたんにスープとあります。そして椅子に座りながら女の子がスープをおわんで飲むというのが、ほかのものとの違い。

 絵も、お父さんクマが薪を背負い、お母さんクマが野イチゴ?、子クマがキノコをもっていますから、単に散歩しただけでなく、食材も調達してきたようです。


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