ロンドンで見たミュシャの油絵が「下手!」と大ショックだった私(^_^;
「なぜ私はこの絵を下手だと感じるのか?」という疑問から「スラヴ叙事詩に答えがあるかも」と考え、「見るのは無理だわ」と諦め約20年。
ついに東京で見る機会ができ、長い疑問に答えが出ました(*´∀`*)
あくまでも私個人の感想と印象ですから、そのつもりでご覧くださいませ。
年代順に来るかなと思っていたら、いきなりスラヴ叙事詩の一枚目「原故郷のスラヴ民族」の絵がありました。
「ようやく見られる」とジーンとする嬉しい思いと「ひょっとしたらこれも下手なんじゃ」という微かな恐怖感混じりで見上げました。
写真では知っていますが、それでは何とも判断できませんでしたからね。
見た瞬間、20年来の疑問に答えが出ました。
ええ、私がロンドンで見た油絵は、「移行する過渡期の模索状態の絵」だったと。
同じ作者の絵かと疑うほど、「原故郷のスラヴ民族」は静かな「花」と輝きに満ちた作品。
絵全体から、ミュシャのスラヴ人としての誇りと喜びが伝わってくるような感じがしました。
決して強い色彩やタッチの絵ではありませんが、柔らかな色合いの中に静かな力強さと信念が通っているような絵。
何かにぶつけるような激しい自己主張はなくても、穏やかなそれでいて毅然とした誇りを見る者に伝え、見る側も静かに心を沸き立たせられるような「静寂の中の対話」をする絵だなと感じました。
これはアール・ヌーヴォー期の作品とは全く違う印象です。
アール・ヌーヴォーのミュシャの作品が、ラ・ベル・エポックという時代を切り取ってみせた一瞬の「花」ならば、スラヴ叙事詩は長い時を経てさらに受け継がれてゆくスラヴ人の誇りと魂を表した「花」。
ゆっくりと他の絵も見て、しみじみとそんなふうに感じました。
スラヴ叙事詩の後は、アール・ヌーヴォーの作品、そして他の作品と続きます。
そちらの油絵に、私が見たものはないかな~とちょっと期待しましたが、残念ながらありませんでした。
それでもその時期の絵を見て、どこかロンドンで見た絵に似ていたので、やはり私が「下手!」「花も輝きも無い」と感じたのは、過渡期で成熟前だったからなのねと納得しました。
アール・ヌーヴォーの人気者ミュシャから、スラヴの魂を描き上げた画家ムハへと変遷を遂げた、一人の画家の作品展。
一生見ることはないと諦めていたのに東京で出会うことができて、しみじみと幸せを噛みしめたのでした。
ちなみに図録は買ってきませんでした。
あの絵から伝わるものは、どうがんばっても写真ではとらえられないと思いましたし、実際開いてみてもやはり伝わってきませんでしたから。
でも「後で開いて思い出したいわ」という方なら、購入した方がいいかも。
さすがはプロの手によるもので、よくできていましたもの。
あくまでも私個人の勝手な印象と感想ですから、人によっては「どこがいいの?」「やっぱりアール・ヌーヴォーの絵の方がいいわ」と感じるでしょうし、私とは違う視点からスラヴ叙事詩を見る方もおいででしょう。
絵の見方など十人十色。
それぞれで楽しめればいいのですから。
それでもスラヴ叙事詩を東京で見られる機会は、おそらくもう無いんじゃないかと。
あまり人に勧めることはないんですが、この絵に関しては興味がおありでしたら、ぜひご覧くださいませ<(_ _)>
これから行こうかしら~と考え中の方で国立新美術館は初めてなのよという方に、ちょっと現実的なアドバイスを。
まずチケットは、あらかじめ用意した方がいいです。
一番混み合っていたのが、当日券売り場。
10時少し前に着いたのですが、入り口前を見たときに「入るまでに何時間かかるのよ」と思いましたわ。
でもチケットを持っていれば「こちらです」とスイスイ入れました。
たまたま私が行った日が混んでいたのかもしれませんが、どのみち二階の展示会場前でも並びますから、あらかじめご用意をお勧めします。
そしてスラヴ叙事詩の最後のコーナーは撮影可能エリアになっています。
ここでは写真を撮って良いので、一斉にスマホを向けています。
これは日本人の美徳ですが「写真を撮っておられるなら、前に出て邪魔しちゃいけないな」と、ここだけは皆さん近づきたいのを我慢して離れて鑑賞していました。
私も「そのうち終わるわね」と待っていたのですが、いっこうに終わらない。
終われば次の人がスマホを構えて、カシャカシャ。
ええ、スマホを取り出す人たちには、「前に出たいけれど撮影に気を遣って待っている人がいるかも」などという奥ゆかしさは欠片もありませんでしたから、さっさと絵に近づいてじっくり見ましょう!
スラヴ叙事詩はどれも大きいですから、離れないと全体はわかりません。
しかし絵の中に描かれた多くの人々の表情や、衣装にあしらわれたスラヴらしい文様、細かい描写などは近づかないとわかりません。
あくまでも主役は絵を鑑賞する人々で、撮影はサービス・おまけにすぎないんですから。
後で模写したい、デザインの参考にしたいという方は撮った方がいいでしょうが、ただ見るだけならせっかく一生に一度見られるかどうかという大作なのですから、ゆっくりと心に刻みつけておいた方がいいと思うのは、もう古い考えなのでしょうか。
もし撮影しようかなと思う方は、「絵に近づいて見たいけれど、撮影のお邪魔かしら」と遠慮している人間が周囲にたくさんいることも配慮してくださいね。
ええ、私が前に出たら、そろそろと他の人も出てきてじっくり見ていましたから。
美術館内のカフェは、11時になるとお食事もできますが、その前は飲み物くらいです。
アイスティーは無難でしたし、香りだけでの印象ですがコーヒーもまあ普通じゃないかと。
むしろ飲み物のお味よりも、お天気が良くて花粉症でなければ、外の席へ行くことをお勧めします。
ガラス扉が重いですから、気をつけて。
4人掛けのテーブル席よりも、一人か二人ならイス席の方が緑がよく見えます。
もうとられていればいいのですが、木の幹に巻かれた「赤地に白の水玉」の布が、「元禄花見踊りじゃないんだし~」と興ざめですけど、できるだけ遠くを見て緑とその向こうのビルなどのコントラストもいいものですよ。
健康な方なら、建物を出てきれいな花壇を散策するのもいいのでは?
目の前を通ってそちらへ行く人たちと花壇を見て、「きれいだわ~、でも無理」とおばさんは諦めましたが、普通の方なら問題ないでしょうし(*´∀`*)
ちなみに乃木坂駅の隣は表参道。
ここからは根津美術館が近いです。
スラヴ叙事詩がプラハの美術館で季節展示をするように、根津美術館では今の時期、燕子花図屏風の季節展示をしています。
一年で見られるのは今だけ。
たしか5月14日までだったかと。
確かめてからおいでください。
若い頃に見に行ったときは、せいぜい一週間程度しか展示していなかったのですが、今はわりと長く見せてくれるようです。
ここはちんまりとした美術館なのですが、庭園が広くて素晴らしいんですよ。
チケットを購入して美術館に入らないと、お庭にも出られません。
規模が小さいので展示物は少ないですが、贅沢な庭園散策ができますよ。
こちらのカフェは、窓側に座ると広い庭園が見渡せます。
今はメニューも変わったんじゃないかしらと思いますが、基本的なものはあるかと。
今の時期には、お勧めです。
さらに元気であれば、表参道へ戻り原宿方面へ出ると、太田記念美術館もあります。
こちらは浮世絵専門の美術館。
興味と体力がおありでしたら、いかがでしょう(*´∀`*)
別に美術館の回し者ではありませんが、忙しい日々の中でゆっくりと名画に向き合うのも「心のお洗濯」になるのでは?
そろそろゴールデンウィークですね。
お休みの方は、どうぞお楽しみください。
私同様、お仕事に励む方は、お互い頑張りましょう!