じつはね、姉さんは母の連れ子で、僕とは血のつながらない姉弟なんだ。その姉さんの上靴だけど、あれ僕が洗っていたんだよ。姉さんは素直にそれを喜んでいたよ。姉さんは女子高に通っていて、そこではく上靴は白のバレーシューズだった。もちろん小学生の僕の足よりも大きかった。
僕は姉さんの上靴を洗う前、自分の部屋で、その汚れた靴底をひたいにあてたり、頬ずりしたり、舐めてみたりしたんだ。姉さんが通う女子高の教室や床やトイレを踏みつけた靴で踏まれることを妄想したんだ。
上靴は靴底も白だったけれど、どんなにきれいにしても、一週間も学校ではくとね、戻ってきたときには、また真っ黒になっていた。ギザギザの滑り止めの溝はいつもいろんなもの――たとえば学校のゴミとかハエみたいな踏み潰されたちいさな虫とか――をかんでいたね。
虫は本当によく靴底で踏み潰されていたね。僕はね、その靴底の虫がうらやましかったんだ。あんなにきれいな姉さんから踏み殺されたのだもの。それをながめるとき、僕はこう神様に願うんだ。コビトになり、姉さんの上靴の靴底に磔(はりつけ)になりたい、ってね。(下書き原稿)
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