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記事を更新しなければと考えておりましたが、なかなか時間が取れなかったため、久しぶりの更新になります。

最近のニュースで聞いたところによれば、相続目的の養子縁組を無効と判断した東京高裁の判決に対し、養子側が上告をしたところ、最高裁で弁論が開かれる予定とのことです。

養子縁組は相続税の対策や遺留分対策のために利用されることもよくあるため、最高裁の判断内容によっては、相続目的の養子縁組に対する争い方や相続税対策のための養子縁組に対する留意点が変わる可能性があるため、要注目である判例と言えます。

東京高裁の判決については、判例検索ソフトを利用しても裁判例が出てこなかったため詳しい事例は不明ですが、新しい判例については、わかり次第随時フォローをしていきたいと思います。

さて、縁組無効について注目すべき判例が出そうなので、(今回紹介する裁判例は相続目的での養子縁組ではないですが・・・)本日は被相続人の生前の養子縁組を無効とした原判決を取り消し、これを有効とした裁判例(東京高裁平成25年9月18日判決)を紹介します。

被相続人が行った生前の養子縁組の無効に関する紛争は、本来であれば相続人となる者が、現在相続人となっている者が勝手にまたは養親の意思に反して養子縁組届を出したものとして争うものです。それではどのような事情があれば、養子縁組は無効・有効になるのでしょうか。

以下では、裁判例の紹介をしたうえで、養子縁組の無効のために考慮すべき事項がどのようなものであるのか解説していきます。

 

養子縁組を有効とした裁判例の事案

養子縁組を無効とした上記裁判例の事案としては以下のとおりです。

  • 養親であるAは、配偶者と前妻との間の子である養子Y1と同居していた。
  • 養子Y1はAを母として、成長し、昭和52年、養子Y1はY2と結婚し、Y2はAとの同居を開始した。
  • Y1とY2は、平成21年までAと同居を続け、Aは病院等でもYらを長男および嫁と申告するなど、Yらは対外的に長男夫婦としての扱いを受けていた。
  • AとY1・Y2と平成19年6月に養子縁組の届出を行った。
  • Y1はAを、平成19年1月に病院に連れていき、Aの具体的症状として「物忘れが激しい。・・・隠した場所がわからず、頭がぼーとしてしまう。」と問診票に記載した。同日のAの長谷川式テストの結果は18点であった。
  • Aは医師から、平成19年3月、老年期認知症と説明され、診療録に申し送りとして「認知症の方です。」等との記載があった。
  • 平成19年5月にAは医師の診断を受けたが、Aに大きな問題行動がないことから、いったん治療を終了することにした。
  • Aは平成20年5月頃から、Y2がAの年金を勝手に使っている等の被害妄想的な発言が多くなってきた。

 

養子縁組を有効とした裁判例の判旨

以上の事実に関し、裁判例は要旨以下のように判示しています。

(1)Aの精神機能の程度について

Aに対し平成19年1月に行われた改訂長谷川式簡易知能スケールの結果が18点であり、・・・認知症であるとしても重度のものであるとは直ちに言えない。加えて、Aの精神科における診療は平成19年5月にいったん終了していること・・・が認められる。以上の事実に照らすと、Y1らが物忘れが激しいと意識するようになっていたことやAにYらに対する物盗り等の被害念慮が発現していたとみられることぉお考慮しても、なお、Aの本件縁組の時点における精神機能は、判断力が大きく低下するまでには至っていなかったものと認めるのが相当である。

(2)本件縁組を行う動機について

Yらは、Aと義理の親子として同居生活を送ってきたものであり、同居期間は、本件縁組の時点まで、Y1については49年間、Y2については30年間という長期間にわたるものであった。YらとAとのこのような生活関係からすればYらから法律上の親子関係の形成を求められた場合、Aがこれに応じることは自然であるといえる。よって、Aには本件縁組に応じる動機があったと認めることができる。

(3)以上のとおり、Aには本件縁組の時点でAらからの養子縁組の申し入れに応じる動機があったこと、さらには、本件縁組の届出書の署名欄に記載されているAの筆跡がAのものとされる署名に類似することに照らせば、・・・本件縁組はAの意思に基づき有効に届出が行われたものと認めるのが相当である。

裁判例を踏まえて

本裁判例は、養子縁組の動機や被相続人の認知状態及び縁組届の筆跡等から、原判決と異なり養子縁組を有効としております。

本件では養親に認知症の症状があったようですが、その程度が必ずしも重くなかったことから結論として縁組自体を有効としており、また、縁組をする動機があったこともその根拠としています。

このように養子縁組の有効無効を判断にするにあたっては、争点にもよりますが、被相続人の認知状態や、養親である被相続人と養子である者とが生前にどのような付き合いであったか等の事情が重要になります。

養子縁組の無効を主張する場合はこれらの事情を調査の上で、縁組意思や届出意思が無かったことを主張立証しなければいけませんので、弁護士にご相談することをお勧めいたします。

養子縁組の無効についてご相談のある方は弁護士による無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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