吉田毒とれん (吉田ドクトリンの呪縛) | 加納有輝彦

吉田毒とれん (吉田ドクトリンの呪縛)

 

 
渡部昇一氏が帰天されてちょうど一年が過ぎた。(平成29年4月17日逝去)

 

日本の言論人のほとんど全てが、本人たちの思惑とは別に、間違った言論を張っていた時、たった数人の言論人のみが正しかったというような時に、その数人の内の一人が必ず渡部昇一氏であった・・・というような評価を与えられたのが、氏であった。

 

 つまり、氏の言論は、歴史の批判に耐えうる稀有なものといえよう。

 

簡単に言えば、氏の著作は、その内容が全然古くならないともいえよう。

 

例えば、渡部昇一著「腐敗の時代」


 これは、抜群に面白い。そして前置き通り全然古くならない。 

特に、第一章「腐敗の効用」(1975.2『諸君』発出)これは 当時、大変な評判となり日本エッセイストクラブ賞を受賞した。 

 これは、今、もう一度読むべき内容だと思う。特にマスコミ人は。 

 現在、安倍昭恵夫人、財務省事務次官、新潟県知事等の個人の「腐敗」問題でもちきりだ。 


個人の腐敗と、組織の腐敗についてちょっとおもしろい観点が 書いてある。 

 こんなことが、書いてある。 

~もっぱら、マスコミは個人の腐敗を声高に糾弾する。 しかし、個人の腐敗などたかが知れているという。 

 最も警戒すべきは、組織の腐敗であるという。 

 イギリス、ウォルポール内閣の時代は、 ウォルポール個人の金権体質はあったにせよ、 非常に平和な幸福な時代であったという。しかし、あろうことか ウォルポールを腐敗しているといって倒したのは、 平和に飽きて戦争をしたくなった連中だったのである。 

 組織的腐敗は人の嫉妬心を刺激しないという不思議な 性質を持っている。 


 しかし、個人的腐敗は甚だしく嫉妬を起こさせやすいものらしい。 

 個人的腐敗よりも、組織的腐敗の方が格段に恐ろしいものであることを指摘しているのはパーキンソンくらいのものである。 ~(引用おわり)
 

 
 私たちは、嫉妬心を刺激する個人の腐敗に目を奪われている間に、壮大な組織的腐敗が進行していくのを見逃してはならない。



誰それがおなごを買ったといって国民的規模で嫉妬心を燃やしている間に、中共の極左の国家的工作には嫉妬心が燃えないゆえ、見過ごしてしまう。


 

 『嫉妬心を刺激する』とは、これこそ週刊誌の商売のエンジンである。利益を生む源泉である。

 

だから、週刊誌は、格段に恐ろしい組織的腐敗には、嫉妬心を刺激しないので、つまり商売に利あらずで興味がないのかもしれない。利を生むは個人攻撃なのである。

 

この文脈からいえば、現在の政局の混迷は、フジテレビ解説委員の平井文夫氏が指摘している通り、国民の壮大な憂さ晴らしともいえるのかもしれない。

 

 国会前でデモをしている御仁は、平井流にいえば、人間の劣情をエンジンとした壮大な憂さ晴らしなのである。

 

 

私からすれば、組織的腐敗の極みは、憲法9条を改正せず、軍隊も持たない日本、これである。


  安倍昭恵夫人等、個人の腐敗を声高に騒いでいるうちに 最も恐るべき組織の腐敗(憲法9条下の国体:戦後レジーム)が温存され、隠蔽されつつあるとしたら、その現状維持を喜ぶのは中国と北朝鮮であろう。

 

この流れで安倍政権が倒れるとしたら、安倍政権は、戦後レジームの脱却どころか、戦後レジームをさらに確固たる盤石なものとした政権ということになろう。まさに「吉田毒とれん」である。(吉田ドクトリンの温存)
 
 組織の腐敗こそ、おそるべき悪なのである。 

 
 最後に、本書から、昭和の戦争前夜の青年将校に関する記述を引用する。 

~しかしどう考えても、あの当時の青年将校に正義感が欠けてさえいてくれたら、政党も財閥も大いに腐敗し続けたろうが、日本は敗戦を知らず、一般の人々も快適に腐敗の 生活をおくれることが出来、ビルマやフォリピンの ジャングルの中で、文字通り腐敗してウジ虫に喰われて しまうとこもなかったであろう~ (引用終了)
 

転じて、以下のような事が将来言われないように祈る。

 

 ~しかしどう考えても、あの当時の左翼マスコミの「憲法9条教」という信仰心が欠けてさえいてくれたら、安倍政権は続いたであろうが、日本は、第二の敗戦を知らず、中共の植民地になることもなく、一般の人々も快適に(原子力発電を主電源とした)腐敗の生活をおくることが出来、強制収容所の中で、文字通り腐敗してウジ虫に喰われてしまうこともなかったであろう~

 


将来、こんな狂歌が歌われないことを祈ります。

野田聖の辻清の清きに魚も棲みかねて  元の濁りの安倍恋しき

 

 

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