(旧ブログより改題)

この随筆を、トルコのアタトュルク空港テロの犠牲者に捧ぐ。

 


羽田空港付近での仕事と偶然重なり、久しぶりの友人がアメリカから羽田に降り立つと言うので迎えに行った。

彼は或る大企業のビジネスモデルの成功者であり、人としても男性としても申し分のない人物であるが、10時間のフライトで少し疲れたのか、珍しく冴えない顔で到着ロビーに現れた。聞くと、気に入りのサングラスを背中が踏み潰す音で目覚めたと言う。思わず、『無事に日本に帰って来れた代わりと思えばいいんじゃない?』と慰める。

だが、見たことのない浮かない表情のわけは、何も洒落た眼鏡のせいばかりではなかった。

お互いのビジネスやプライベートについて報告し合ううち、彼が新たな局面を迎えている事を知る。その足掛かりとしてのアメリカ出張だったようだ。

私の知る組織のリーダーとしての彼は光り輝いていて、いつもカリスマ的なオーラに包まれていた。切れのあるトークで人々をリードし、気の利いたジョークで和ませる。憧れの、雲の上の人物だった。

でもプライベートでは、大きな身体を少し丸めて静かに話す、まるで思春期の少年の様に見えることがある。今日は尚のこと、心許ない表情で将来を秘かに案じているのだ。

しかし私も、これから色んな困難に打ち勝ち、必ず前に進むという姿勢を見せると、彼は『不思議なもので、今日、最も必要なメッセージを君から貰えた。必要な時に、必要なものは必ず何かの形を借りて届けられる』と言った。具体的なインスピレーションも浮かんだと言う。

人生において、これ程の喜びは数少ない。
私だって彼と久々に語り合う事で、溢れるパワーが涌き出る感動を抑える事が出来ずにいたのだ。

人のインスピレーションというのは、まるで空港における飛行機のようなものである。様々なドラマに彩られた夢や現実の渦が踊りながらロビーを行き交い、すり抜け、波動となって飛び立ち、届けられ、憧憬の地で混ざり合いながら又、新たなインスピレーションとなってやってくる。

 

ならば、「空港」とは我々である。


仕事も出逢いも運命も宿命も命も、夢も恋物語もこの人生において、幸あれ。

誰かの人生においても、幸あれ。

 

そして、静寂という平和のために、すべてが、あれ。

きっと天使達が、その、柔らかな羽をパタパタと閉じたり開いたりしながら、インスピレーションと言う名の飛行機を世界中に翔ばしているのだ。

 

Aisha

 

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