特発性低髄圧症候群

【特発性低髄圧症候群】
特発性低髄圧症候群:spontaneous intracranial hypotension(SIH)

原因不明の起立性頭痛として1983年にSchaltenbrandにより報告された。

髄液圧低下の原因としては
  髄液産生の低下
  髄液吸収の促進
  髄液漏出
が考えられるが、近年は髄液漏出が有力とされている。
(小島豊之. Medical Practice 2003;20(6):997-1001)

[疫学]
30-50代女性に好発
特に細身の女性に多い。
(Moayeri N. J Neurosurg 1998;88:912-918)

[病態]
何らかの原因で脊髄硬膜が損傷し、硬膜の裂傷部位から髄液漏出が生じる。
好発部位は頸胸椎移行部が多いとされているが、高位頸椎や腰椎の報告もある。

[鑑別]
脳出血・髄膜脳炎・肥厚性髄膜炎など

[症状]
起立時の頭痛
他にめまいや耳鳴り、嘔吐、福祉、尿失禁、歩行障害、聴覚過敏などを呈する。
髄液漏が高度になるとヘルニアにより意識障害をきたす。
他覚所見として徐脈、眼振、外転神経麻痺、両鼻側半盲、項部硬直など
SIH10%に慢性硬膜下血腫を合併する。
(Christoforidis G A. Neuroradiology 1988;40:636-643)

[診断基準]
国際頭痛学会の診断基準
A.脊椎穿刺により注入された造影剤の漏出を認める
B.頭痛は立位の15分以内に生じ、30分以内に改善または消失する。
C.瘻孔の適切な処置により14日以内に頭痛は消失する。

[検査所見]
・髄液検査
初圧は60mmH2Oであることが多いが必ずしも低値とならない。
色調は無色透明からキサントクロミーまで様々
細胞数・タンパクは軽度上昇することが多いが特異的な所見はなし

CT/MRI
単純:脳室・脳槽の狭小化、大脳や小脳扁桃の下垂
造影:びまん性・対称性に肥厚した硬膜の造影増強効果
T2WIで脊髄硬膜周囲にHIAを認めることがある。
硬膜外への髄液漏出を反映していると考えられている。

・脊髄腔造影CT
髄内に造影剤を投与して髄液の漏出を確認する。
造影剤の量や、注入後撮像までの時間などに一定の見解はない。

RI脳槽シンチグラフィー
通常はIV2時間後で脳底槽、4時間後にシルビウス槽、24時間後に両側大脳半球表面から傍矢状部のクモ膜顆粒で吸収され上矢状や多領域の静脈内へ還流。
SIHではRIの瘻孔部位への集積
→硬膜外腔より吸収され体循環へ移行し早期排出される。
24時間後ではくも膜下腔は描出されず、傍脊柱部に以上集積を認める。
そのためIV1時間後に撮像し、膀胱への集積の有無を確認する。

[治療]
安静:2週間
輸液
副腎皮質ステロイド
保存的加療に抵抗性の場合には硬膜外自己血パッチ(EBP)を施行する。

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