様々な地域における気候の違いが病気に影響を及ぼすということを解説しましたが、同じ地域内においても四季の移ろい、気候の変化といったものが病気や体の状態に大きな影響を及ぼします。

暑い時期であれば、体内に余分な熱をこもらせている人の体調や病気は悪化しやすく、寒い時期であれば、身体を温めるエネルギーが不足する陽虚体質の人の体調や病気が悪化しやすくなります。

湿度が高い時期であれば、余分な水気・湿気をこもらせている人の体調や病気が悪化してきます。

また、春は気が上にどんどん昇っていく時期にあたるので、元々気が上に昇りやすい人は春先に体調に異常をきたしたり病気を悪化させたりしやすくなります。

このように、元々の体質によって、どの季節が体調に影響するかが変わってくるのですね。

例えば、暑い時期に内熱体質の人の体熱が助長されて、手や足に湿疹ができたり、アトピー等の皮膚病が悪化したりすることがあります。

リウマチが湿度の高い時期に悪化したりする場合は、余分な水気・湿気がこもっているからです。

春先にアレルギー症状がでるのは、気が体の上部に昇りすぎることが原因です。

そのような場合東洋医学では、内熱体質の人には夏になる前に内熱を抜いておいたり、水気・湿気をこもらせている人には梅雨が来る前に水分代謝をよくしておいたり、気が昇りやすい人には春になる前に気を引き下ろすような処置をしておくというように、気候や季節の変化に応じた対応をしていくのです。

そのため、東洋医学を専門にする医者は、患者さんの現在の状態はもちろん、これまでその人が作ってきた体質に加えて、月齢や二十四節季等の自然の移ろいにも注意を払っていくのですね。

これまで解説してきたように、東洋医学における病気の発病要因には、自分が作ってきた体の内部環境や住んでいる地域の特性、四季の移ろいや気候の変化が大きく関与しているということがなんとなくでもおわかりいただけたのではないかと思います。

例え細菌やウイルス等の病原菌が関与する病気であっても、それは病気の種であって、その種を発芽させるための条件は、体の内部環境・地域の特性・気候や四季の移ろいによって左右されるということでした。

東洋思想には、人と自然をまとめてひとつのものとみなす考え方があります。

人間は大自然の中の小自然であり、常に大自然の影響を受けている存在なのだということですね。

そのため東洋医学には、病気を治療する際には病気や患部を診るだけではなく、体質・地域・気候を考慮に入れて体を整えていくという考え方があるのです。

これを「因人因地因時制宣(人により地により時により宜しく制す)」といいます。

少し難しい言葉ですが、これは人や土地や時候に合わせて適切に対応するという意味になります。

体質や地域や気候に対応して治療をしていくことですが、より多方面の要素を考慮することによって、病気や患部のことだけではなく、その病気を患う患者さんついての理解を深めていける考え方でもあるかと思います。

そしてそのような東洋医学のマクロ的な捉え方が、病気の解消に有効な場合が実際に多々あるということも事実なのです。

今回は体質と地域や気候の関係性について解説させていただきました。ひとつの体系づけられた医学として東洋医学というものを認識していただければ幸いです。


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