では、東洋医学における『証(しょう)』とはいったいどういうものなのでしょうか。

東洋医学における『証』とは、専門的には『現時点における病の本質』という説明がなされたりします。

『病の本質』とは病気の原因のことですが、その中にはその人が持っている元々の体質も含まれます。

例えば、元々、陰虚傾向(体液が不足気味)だとか、脾虚傾向(消化器系が弱い)だとか、内熱体質(熱邪をこもらせやすい)だとか、気逆傾向(気が過剰に昇りやすい)がある等々。

少し難しいですが、そのような元々の体質の上に築き上げた病気の原因を『証』というのですね。

そして『現時点』というのは、診察して治療する時点の状態のことです。
つまり、明日になったら病名は変わらなくても『証』が変わっている可能性があるということです。

もちろん、そんなにコロコロと『証』がめまぐるしく変化するということは少ないのですが、『証』というのは、治療をする時点での状態なので、三日後や一週間後には病名が変わらなくても『証』が変化している可能性もあるのですね。

そうなってくると、当然、治療法がそれに応じてやはり変化していきます。

ちなみに、東洋医学、特に漢方薬の分野には「朝に白虎、夕べに四逆」という言葉があるようです。

「白虎」というのは、白虎湯という体の熱を冷ますための薬です。そして、「四逆」というのは、四逆湯という体を温めるための薬です。

意味としては、朝には熱を冷まさなければならない状態が、夕べには体を温めなければならない状態に変化していることがあるということです。

これは、朝に白虎湯を処方したから、夜も同じ処方でいいだろうということでは、治療を間違ってしまうから、処方をする際にはその都度しっかり『証』を診断しなければならないよという戒めの言葉のようです。
                             つづく


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